愛しいエース  

 

2・1・2 情

第4話

 

カチャ・・・・・・

 懐中電灯の光をエースのカラータイマーに当て、エネルギーを少しでも多く貯めてから

「seal」を解除し、サトシはエースと相談しようと考えていた。

 ヤプールの作り出した異次元の影響なのか、懐中電灯もすぐさま使い物にならなくなり、

会話をするギリギリだけエネルギーをチャージすることが出来た。

サトシ:エース・・・・エース、大丈夫?

エース:はぁ・・・はぁはぁ・・・あ、あぁ・・・大丈夫だ・・・・

サトシ:エースのエネルギーを回復するアイテム・・・

     これくらいしか出来そうなのがなかったん
だ・・・・・

エース:プ・・プロテクター・・・ど、どうした?つけてくれないのか?

サトシ:だ、だって・・・・また拘束具だったら・・・・

エース:大丈夫、私にはサトシが・・・つ、ついているから・・・

     はぁ・・・はぁ・・・・・んっ・・・んぁ・・・

     安心して・・・つけてくれ・・・


サトシ:・・・で、でも・・・もしも、このアイテムのせいで・・

     助かるチャンスがなくなったら・・・

エース:お、落ち着いて・・き、聞いてくれ・・・

サトシ:・・・ど、どうしたの?

エース:ヤプールに・・・ふぅぅ・・・エネルギーがなくならない体にされてしまったんだ・・・・

サトシ:・・?・・・・ど、どういう・・・こと?

エース:つまり・・・はぁはぁ・・・「DEATH」にしても死ねないから・・・

     これは外せない・・・・・・


サトシ:・・・・そ、そんな・・・・で、でも・・エネルギーが減らないなら自力でどうにか

エース:それは無理だ!

サトシ:どうして?

エース:自分では使えないエネルギーなんだ・・・

     私が死んだ時に仮死状態に維持するためだけのエネルギーなんだ・・・・


サトシ:そ、それって・・・

エース:あぁ・・・私を永久にこのままにするための罠だ・・・・

サトシ:・・・・・・僕は・・・・僕はどうすれば・・・

エース:だから・・それをつけてくれ・・・これ以上、困ることにはならないさ・・・

     もしかしたら好転するかもしれない・・・


サトシ:・・・・わ、わかったよ・・・・・

 エースから衝撃の事実を聞き、ショックを隠しきれないサトシ。

 そして震える手でプロテクターを拘束されて動けないエースの両肩に装着した・・・・。

シュルシュルシュル・・・カチャ・・・

スルスルスルスル・・・カチャ・・・

ヌラァァァァァァ・・・ピキピキ・・・カチン・・・

 サトシの目の前で起きたのはエースを助ける奇跡のワンシーンではなく、

予想した悪夢の展開であった。

 プロテクターはエースの肩に装着されるなり生態融合を果たし、エースの体の一部になった。

 そして、エネルギー制御装置と首輪に向けてあの悪魔の触手を伸ばし融合、

このプロテクターも例外なく拘束具の一員として迎え入れられたのである。

 拘束具の中枢となっている制御装置に融合を果たすと装置から貞操帯に太く黒い管が

1本降りていった・・・。

貞操帯に到達すると管は融合し制御装置と貞操帯がエネルギーのやりとりを

行える状態に変化した。

ドクン・・・ドクン・・ドクン・ドクン・・・・・

 貞操帯からエースのカラータイマーへと管を通り、何かが送られているのがわかった。

 それを見守ることしか出来ないサトシにもその移動するものが

よいものではないことくらいはわかっていた。

エース:・・・ぐっ・・・はぁはぁ・・・そ、そういう・・・こと・・・か・・・

サトシ:ど、どうしたの?エース

エース:わ、私の・・・興奮が・・はぁ・はぁ・はぁ・・

     この装置を通って・・負のエネルギーに・・・か、変わり・・

     全身に巡るようになっているらしい・・・


サトシ:・・・?!・・・・は、早く・・外さないと・・・

エース:無理だ・・・体に融合・・して・・しまった・・・ようだ・・

サトシ:ご、ごめんなさい・・エース・・・ど、どうしよう・・・・

エース:サトシが悪いのではない・・・この拘束だって私がしてしまったことなのだから・・・

 そんな互いを気遣うやりとりを待ってくれるほど優しいヤプールではなく、

そのプロテクターのデコレーションはまだ終わってはいなかった。

 首輪に伸びたロープも融合し、首輪から黒い液体がエースの顔を駆け上り始めた。

 首を漏れなく包み込み、顎をしっかりと黒く染めた。

顔の側面を登る液体は耳を包み込み顔を残して頭も綺麗にコーティングしてしまった。

 サトシが行うエースのための行動は全て裏目裏目に出てしまい、

誰の目にもエースが助かる見込みがないのは明らかだった。

 また1つ、エースが助からない証拠が出来上がっただけであった・・・。