ウルトラマンAの敗北

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ヤプールは吉村の体を借りたまま、ヤプール基地に戻ってきた。

オペレーションルームのベッドに体を横たえると、ヤプールは吉村の身体から分離した。

ヤプールは吉村の身体を見つめると、目からスキャン光線を放ち、吉村の身体の隅々をスキャンした。

そして、オペレーションルームの中心に備え付けられた透明なカプセルに近づいた。

「この超獣の姿とも今日でお別れだ。」

ヤプールはカプセルに入ると自らボタンを押した。

真っ赤な光線がカプセル内部を赤々と照らす。

超獣の体の全身を覆う醜い突起が溶解し、溶けた身体が再構成される。

いくら時間がたったであろうか、カプセルの中の真っ赤な噴煙の濃度が薄れていく。

赤く照り輝く、長身の雄姿がそこに現れた。

鍛え抜かれた長身の身体、分厚い胸板、割れた腹筋、引き締まった腰、

逞しくもすらりとした長い脚。そして、繊細で細長い指先。

寸分と違わぬ吉村の逞しい肉体がコピーされ、赤く再現されていた。

そしてその胸にはダイヤ型にくぼんだキラータイマーが薄暗く怪しげに青く光っていた。

「ふっふっふっ。北斗よ、次にお前がエースに変身するとき、それはエースの最後だ!」



囮超獣バクタリが東京に出現し、北斗は即座にエースに変身した。

しかし、バクタリはエースとは戦おうともせず、逃げるように地底へと潜り始めた。

囮とも知らず、逃すものかと地中深くバクタリを追うエース。

どれほど、地中深く潜行したであろうか、そこは、純白の大きな空洞だった。

バクタリがその空洞の端でうずくまっている。

勝利を確信し、一歩一歩とバクタリに近づくエース。

エースの関心はうずくまるバクタリに集中し、背後には全く、無防備であった。

その時、赤い影がそっと背後に忍び寄り、その強靭な腕で、エースを抑え込む。

【う〜っっっ。】

不意を突かれたエースがその野太い声を発した。

赤いキラーはその長身の逞しい肉体をエースの背に密着させた。

【うっっ〜うっ。】

キラーの厚い胸がエースの背に密着する。

キラーの膨らんだ股間が、エースの尻に密着する。

【あ〜っっ。この感覚は何だ。!】

背後からキラーの熱い鼓動がエースに伝わる。

キラーからでる分泌する透明な汗がエースとキラーの潤滑油となる。汗から香る吉村の匂い。

赤く照り輝く肉体。

【あ〜っっ。この香りは。】

一瞬ひるんだエースであったが、力に優るエースは見事キラーを投げ倒した。


立ち上がる真っ赤なキラー。壁面の純白に映えるしっとりと湿った赤。白い壁面を

バックに、キラーのボディラインが見事なまでに映し出された。

エースは我が眼を疑った。

吉村と瓜二つのボディラインがそこに映し出されているのだ。

【こっ、これは。】

一瞬エースの動きが止まった。

その隙をつき、再度エースの背後に入り込むキラー。

【う〜っっっ。】

再び、不意を突かれたエースがその野太い声を発した。

再びエースに身体をぴっちりと密着させるキラー。

キラーの股間がエースの柔らかな臀部の割れ目に沈み込む。

【う〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ。】

エースの野太い声が、喘いでいる。

【だっ、だめだ。】

振りほどこうとするエース。執拗に迫るキラー。

エースが逃れようとすればするほど、キラーの身体はエースに密着し、そして、揺れた。

【う〜〜〜〜〜う〜〜〜っ〜〜〜〜〜〜〜っ。】

エースの野太い声が、喘ぎに変化した。

(もう少しだ、エース。堕ちるのだエース。)

【こっ、このままでは。。。。。】

渾身の力を振り絞り、エースは再びキラーを投げ倒した。


静かに対峙する真っ赤なキラーと、シルバーに赤いラインが凛々しいエース。

【何故だ。何故なんだ。吉村っ。】

(ふっ。ふっ。ふっ。エースよ俺を倒せるかな。これは俺にとっても最後の賭けだ。)


先に沈黙を破ったのはエースだった。

距離をとるため、真横に助走すると同時に、両腕を伸ばしつつ、そのがっしりした上半身を

大きく左後方にひねった。

そして、投げつけるように素早く正面に向き直りL字型にその逞しい腕を組んだ。

銀色に輝くエースの太い右腕からメタリウム光線が静かに発射された。

この間、時間が止まったように微動だにしないキラー。

七色に光るメタリウム光線はキラーに向かって直進する。

しかし、メタリウム光線は僅かな処でキラーの頬をかすめ、後ろへとすり抜けて行った。



【だっ、だめだ、俺には出来ない。】

その場に跪くエース。

メタリウム光線によって、そのエナジーの大半が消耗した。

跪くと同時に赤く点滅を始める、胸のカラータイマー。

エースが敗れた瞬間であった。

それは、エースが自らの欲望に敗れた瞬間でもあった。