Day Control


10話


 自らがジャックを窮地に追い込んだ・・

そう考えたセブンは、ウルトラマンと共に光の国で療養している最中も

頭の中はずっとジャックのことでいっぱいだった。

 ようやく銀十字軍の施設から退院したかと思えば、

光の国の住人に化けたナックルの使者より受け取った手紙に従い行方をくらましてしまったのである。

 その手紙の内容は簡単なものだった。

 ジャックを助けたければ誰にもばれずに、誰にも話さずに指定箇所にくること。

 貴方様の命と引き換えにジャックを助けます。

  その手紙の指示通り、単身ナックルの罠の中に乗り込み囚われの身となったのだ。

 ウルトラ兄弟と言えどもナックル星人の用意周到な計画の前には打つ手もなく、

身を落としていくことしかできないのだった。

 ジャラジャラ・・・ジャラジャラ・・・・・

 ジャックをお仕置きから解放してくれるように懇願させられた場所からどれくらい歩いただろう。

 ようやく近代的な建物が現れた。 その中に入っていくナックル・・・

そして奴隷の様に付き従うセブン。

 セブンが連れ込まれたのはジャックが拷問を受けていたあの忌まわしい建物だった・・・・・・。

ナックル星人「まずはここであなたに差し出してもらうものがあります・・・」

セブン「ま、まさか・・・ジャックの無事を確認していないのに・・・殺す気か・
・・?」

ナックル星人「まさか!そこまで非道ではありませんよ」

セブン「で、では・・・一体、何を・・・・?!・・・」

ナックル星人「この装置・・見覚えがあるようですね・・・・」

セブン「・・・・・・」

ナックル星人「拒否すればどうなるか・・・わかっていますね?」

セブン「くっ・・・くそっ・・・・」

 ジャックの命を盾にされてはセブンにもどうすることもできなかった。

 素直に頭をさしだし、ナックルの持っていた装置を装着されていくのだった。

ナックル星人「サロメ星人から譲り受けたこの装置であなたには色々と教えてもらいますよ」

セブン「(な、なんとか黙秘しないと・・・)」

 秘密を維持でも守り抜こうと心に決めるセブンだったが、

そんな決意は何の力にもならずに頭の中を丸裸にされていく・・・。

ナックル星人「兄弟たちの弱点を教えなさい」

セブン「くっ・・・じ、弱点は・・・っ・・・低温・・・」

ナックル星人「プラズマスパークを失うとどうなりますか?」

セブン「うっ・・・光の・・・っ国が・・・氷の・・・っ・・氷の星に・・・」

ナックル星人「なるほど・・・さすがは裏切りのセブンですね」

セブン「(だめだ・・・全く抗うことができない・・・)」


 その後も次々と機密事項を暴かれセブン・ジャック、

2人の情報で光の国の攻略方法が1つまた1つと築き上げられてしまっていた。

 最後に「手紙の指示に本当に従ったのか?」を確かめ、装置からセブンを解放したのだった。

ナックル星人「ありがとう・・・裏切り者のセブンよ」

セブン「う、裏切ってなど・・」


ナックル星人「”じ、弱点は・・・っ・・・低温・・・”感謝するよ、ふははははは・・・」

セブン「・・・・・・」


ナックル星人「さぁ、君にご褒美をあげよう・・ついてきなさい!」

 ナックルに引かれて隣の部屋に入ったその瞬間!

ビビビビビビビビビッ

セブン「ぐわぁぁぁぁぁっ・・・・・・な、何をした!」

ナックル星人「いえねぇ、あなたの体に細工をしたんですよ」

セブン「さ、細工だと!」

ナックル星人「欲情しても快楽が絶頂に達しても決してエネルギーが外に漏れない・・・

         漏らすことができない体にしてさしあげたんです」

セブン「・・?!・・・」


ナックル星人「以後、生きている限り、あなたは体に欲を溜め込んでいくことになるんです」

セブン「外道が・・・」


ナックル星人「褒め言葉・・と、とっておきましょう。さぁ、ジャックの元へと行きますよ」

セブン「・・・・・・」


 ”弟のために処刑される”はずだったセブンの体に施されたこと・・・

”欲をためこむ”。

 この事実はセブンが予想した最期とは遠くかけ離れた惨めな最期になることを

示唆しているものだった。

 しかし、今のセブンがどうしようとも拘束は破れず、逆転できる要素は何一つなかったのだ。

 うなだれた深紅の奴隷は主にひかれ、実験施設へと入っていく。

ナックル星人「ここで待っていなさい、お仕置き帰りの弟が今、きますよ」

セブン「・・・・・・」


 外をニヤニヤと見つめるナックル星人の視線の先には逆さ磔にされたジャックが

磔台のまま帰還してくるところが見えていたのだ。

 その姿は見るも無残に汚されつくし、より惨めな姿へと身を堕としていた。

セブン「・・・?!・・・ジャック・・・・・」

ナックル星人「感動のご対面・・・の前に・・・一余興ありますので、楽しみなさい」

セブン「な、何を・・・」

 外から実験施設へと収容されたジャック。

 室内に入ると磔台は回転し、獲物の拘束を解き放ってみせた。

 弱りきったジャックは床に倒れこむとなかなか起き上がれず、

その場でナックル星人の目を楽しませていたのだ。

 マジックミラーごしにセブンにもジャックの衰弱した姿を見ることができたが、

音のさえぎられた部屋からでは声をかけることもできなかった。

ウィィィィィン ガシャン!

ジャック「・・・な、何が・・・・・起きたんだ・・・」

ナックル星人「おかえり・・ジャック」

ジャック「ナックル・・様・・・・一体、何を・・・」

ナックル星人「”ジャックの 弱点は 低温”・・・

         いい情報をもらったので確かめてみようと思ってな」

ジャック「そ、その声は・・・セブン兄さんの・・・・・そ、そんな・・・・」

シュゥゥゥゥゥゥ・・・

ジャック「・・?!・・さ、寒い・・・・か、体が・・」

ナックル星人「どんな風に凍りつくのか・・・今から楽しみだよ、ジャック・・・」

ジャック「・・・お・・お、お願いです・・・たす・・・た、たすけ・・・助けて・・・」

ナックル星人「じゃあ、1時間後に見に来るとしよう・・・じゃあな・・・」

ジャック「ま・・待って・・・・・く、くだ・・・ください・・・・」

 体を小刻みに震わせ、紫色に光タイマーがゆっくりと点滅を始めたのだ。

 1時間後に・・と嘘をつき、マジックミラーごしに震えるジャックを満面の笑みで鑑賞するナックル。

セブン「どういうことだ・・私は・・私はそんなこと言っていない」

ナックル星人「はて?そうでしたか?でも、いいじゃないですか?裏切ったのは事実ですから」

セブン「私は・・・私はジャックを裏切ったことはない!」

ナックル星人「そんなことより・・ほら、御覧なさい・・・もう真っ白ですよ?」

セブン「・・・?!・・ジャック・・・ジャック頑張るんだ!」


 ナックルの指差す先には全身を白く染め上げ、動きがほとんどなくなったジャックがいた。

 両膝を床につき、たち膝のまま両腕は胸を抱くようにして身を縮めている姿勢のまま

体が凍り始めていた。

 そんなジャックの脳裏には楽しかった光の国での暮らしが思い出され、

その中にはセブンの姿も当然含まれていた。

ジャック「セブン・・兄さん・・・・ど、どうして・・・・」

 マジックミラーごしに立つセブンが見えたかのようにセブンのいる方向に右手を伸ばし、

左手はだらんと下げられたまま、ついに体が完全に凍りつき氷像と化してしまった。

ジャック「僕は・・・・兄弟じゃ・・ない・・・・のか・・・・・」

 その言葉を最後に機能を全て停止させ、セブンへの思いを胸に時を止めた。

セブン「・・・ジャック・・・・た、頼む・・・ジャックを元に・・・戻してくれ・・・・」

ナックル星人「その願い・・きかないでもないが・・・条件がある・・・・」

セブン「条件?!・・・な、なんだ・・・何をすればいい!」


ナックル星人「これを・・・あなたが装着すれば助けましょう・・」

セブン「こ、これは・・・・・?」


ナックル星人「これは我等が星の奴隷服・・

         それも、ジャックとは違いモルモットが装着するものです」

セブン「モルモット・・・奴隷・・・・・」

ナックル星人「そうですよ?体中を実験し尽くされ、拷問を受け、

         死さえも喜びに思える者が装着するものです」

セブン「・・・・・・」

ナックル星人「別に着なくてもいいのでは?ジャックもあのまま死んだほうがよいのかもしれませんし」

セブン「・・・着る・・・着るから・・・だから、ジャックを・・・・」

ナックル星人「いいでしょう・・さぁ、着なさい」

 セブンはナックルの差し出す黒い球体を手に取る。

 その途端、セブンの手の中で展開し始めた黒い球体は液体の様に獲物の体を駆け巡り、

顔以外の全てを包み込んでしまったのだ。

 そして、獲物を覆い尽くしたことがわかると体との隙間をなくし、

セブンの新しい表皮のように振舞い始めたのだ。

セブン「うっ・・・っ・・・約束どおり・・・着たぞ・・・ジャックを・・」

ナックル星人「モルモットごときが生意気な!」

セブン「・・?!・・・」


ナックル星人「しかし、その命を投げ打つ行為に免じて、今回は許しましょう・・・

         次からは”ナックル様”と呼ぶように」

セブン「・・・・はい・・・ナックル・・・様・・・・」

ナックル星人「では、これを・・・・」

セブン「こ、これは・・・?」

ナックル星人「助けたいのでしょう?これを素手で塗りこんでジャックを解かしてきなさい」

セブン「・・・・わ、わかりました・・・・」

 ジャックの凍りつく冷凍された部屋に1歩、また1歩と歩みを進める黒く染められたセブン。

 1歩ごとに足は冷え切り感覚がなくなっていく。

 ようやくジャックのもとにたどり着くとその入れ物に入っているネバネバした液体を

手に取りジャックの体に塗りこみ始めた。

 ネチョネチョとジャックの体に絡みつく液体は凍った体を解かしていき、

止まった時間を進め始めた。

 弟の顔にこんな汚液を・・・と抵抗があるも、助けるために仕方なく顔にも満遍なく

塗りこめて行くセブン。

 徐々に息吹を取り戻すジャックとは対称的に両足は既に凍りつき、

体の感覚がなくなっていくセブン。

 まるで自分の体に冷凍部分を移して助けたようにジャックの全身が解けるころ、

セブンは指一つ動かせなくなり氷像と化してしまっていた。

セブン「(これでジャックも・・・助かる・・・)」

ジャック「・・・はぁ・・はぁ・・・・・こ、ここは・・・」

ナックル星人「お目覚めかな?ジャック」

ジャック「・・・?!・・セブン兄さん・・どうしてここに・・・」

ナックル星人「そいつは私のモルモットだよ」

ジャック「モルモット?!」

ナックル星人「えぇ、またしてもお前を裏切って情報をリークしに着たので捕まえてあげました」

ジャック「(冷凍が弱点て・・・本当に兄さんが・・・)」

ナックル星人「さぁ、可愛いお前のために捕まえたのだ・・そいつをそのまま処刑しなさい!」

ジャック「し、処刑?!」

ナックル星人「どうした?できないのか?」

ジャック「・・・・・」

ナックル星人「完全な冷凍状態・・今、そいつの体を砕けばそれで終わり・・さぁ!処刑しろ!」