555悲話(8)

 

ナガレが独房に入れられて、数日が過ぎた。

下半身は丸出しのままだが、チン毛は残っている。

この島に連れてこられた当初、弟ショウのように剃り落とされるものと思っていたが、

処置室なる部屋に連れ込まれる途中で慎也のストップがかかり、

この独房に入れられたのだ。

“おそらく、発信器を見つけたんだろう。

 防衛軍が行動を始めているはずだ。

 そうなれば、ここの連中も、俺に下手な手出しは出来ない。

 ざまぁ見ろだ!”

囚われの身ながら、むしろナガレは勝ち誇った気持ちにさえなっていた。

その頃、ショウは社員食堂、いや戦闘員食堂の裏にいた。

そこには、残飯の入ったポリバケツがおいてあり、「奴隷食堂」の立て札がたってる。

ショウはポリバケツから、今日の食事をあさっていた。

兄ナガレが連れてこらてた時、慎也から“奴隷のレクチャー”を命じられたが、

突然、中止になっている。

それ以来、ロビンも戻っていなかった。

ここ数日、大型輸送機が頻繁に発着している。

何かが起こっているのは確かなようだが、ショウにはまるで事情が分からない。

「ショウ」

吐き気を堪える食事を終え、奴隷小屋に戻ると、そこにロビンの姿があった。

少しやつれた感もある。

「ロビン。今までどうしてたんだ」

「あぁ。何でも、この基地の所在を防衛軍が発見したらしい。

 防衛軍が行動を開始したという話もある。

 もともと、ここは“秘密基地”という事になっているから、

 たいした防御態勢はないんだ。

 慎也の奴、必死になって他の基地から武器を集めていたよ」

「そうか。で、お前は・・」

「慎也の奴、すっかり怒り狂っていてね。

 お陰で、ずっと嬲りものにされていた・・」

ロビンは伏し目がちに言った。

再生光線で身体の傷は治せても、心の傷は治らないのだろう。

ショウもそれ以上は、何も聞かなかった。いや、聞けなかったのだ。

“せめて、この小屋にいる間だけでも、ロビンをゆっくり休ませてやりたい”

ショウの心に、ロビンに対する友情以上の感情が芽生えつつあった。

 

翌朝、ショウが起きるとロビンはまだ眠っていた。

ショウはロビンを起こさぬよう、静かに小屋を出ると、

朝食を取りに戦闘員食堂へ向かった。

情けない想いで、残飯をかき集める。

しかし、ロビンに少しでも栄養のある物を食べさせようと、

ポリバケツの中に顔をつっこんで、少ない肉を探し回っていた。

 

「ギャーー」

ショウの耳に悲鳴が聞こえた。ロビンの声だ。

ショウは慌てて声のした方角に走り出す。

そして、目を見張った。

二人の戦闘員に両足を引っ張られ、股裂きの状態で引きずられている。

すでに、ロビンの背中から血がにじんでいる。

さらに、護衛のゴリラ怪人が、手にした棒でロビンのチンポをつついて面白がっていた。

“何て事を!”

「おぉっ。ショウか。

 ヨシ!。こっちに来て、お前も手伝え」

ショウに気づくと、ゴリラ怪人はそう言って、ショウを呼び寄せ、

ショウにもロビンの足を引かせようとする。

だが、ショウの耳にはロビンの悲鳴しか聞こえていない。

目は苦しそうなロビンの表情が見えているだけだ。

ショウの心の中で、積もり積もっていたものが、一気に吹き出した。

「きっ、貴様らー!!」

ショウは唖然としている戦闘員に走り寄ると、まず一人に蹴りを見舞う。

突然の展開に、茫然自失のもう一人が我に返る間もなく、

ショウのパンチが炸裂する。

「おのれー、何のまねだ。

 お前も兄貴のように、キン玉を踏みつぶしてやろうか」

「そうか、貴様が兄さんを」

ショウの回し蹴りが、ゴリラ怪人の顔面にヒットする。

ゴリラ怪人はわずかに顔を背けただけで、すぐにパンチを繰り出してくる。

パンチは空を切った。

よろけるゴリラ怪人に、2発3発とショウのパンチが見回れる。

圧倒的な体力差を、ショウはスピードと気力で補って、戦っている展開だ。

だが、突如、ショウの身体に何かが巻き付いてきた。

トカゲ怪人の舌だ。

「何をやっているんだ、ゴリラ怪人。

 慎也様がお怒りだぞ」

「てめー、よくもナメた事をしてくれたな」

ゴリラ怪人のパンチが、身動きのできないショウの顔面を襲う。

さらに腹に、そしてキン玉に。

「うぅっ」

ショウは気を失って、その場に倒れ込んだ。

 

ショウが気が付くと、拷問室に天井から鎖でつり下げられていた。

足につけられた鎖は左右に開かれ、Yを上下逆にしたような状態だ。

「やっと気が付いたようだな」

ゴリラ怪人が鞭を手に近づいてくる。

「ロビンは、ロビンはどうした」

「人の事より、自分の事を心配するんだな」

言うや、ゴリラ怪人の鞭がショウの胸板に見舞われる。

「うぅっ」

「どうした、正義の味方は強いんじゃなかったのか」

さらに鞭が振るわれる。

「黙れ!、低脳怪人め。

 いい気になっているのも、今のうちだぞ」

「誰が低脳だって?!。

 チンポコ丸出しのゴーグリーン」

怒りに震えるゴリラ怪人の鞭が、丸出しのショウのチンポに見舞われる。

「あぁっ」

歯を食いしばり、苦痛に耐えるショウ。

だが、朦朧(もうろう)とする意識の中で、ショウは別の感情を感じ始めていた。

“ロビンはいつも一人で、この苦痛に耐えているんだ

 だが、今はロビンと一緒なんだ”

それは、自分がロビンと一体になる感覚だ。

ゴリラ怪人の鞭が振るわれる度、ショウの心はロビンとの一体感を深めていくのであった。 

 

“あぁっ。もっと鞭を!”

ショウは心の中で叫び続けた。