555悲話(14)

 

トレーシー島の陸と海で、二人の司令官が苦虫を噛み潰していた。

一人は、自慢の防衛システムをあっさり突破された慎也。

もう一人は、木戸少将である。

「木戸少将。君は途方もない浪費家だよ。

 たいした装備を持たない慎也を相手に、爆撃機隊を全滅させられ、

 艦隊も大被害を受けた。

 これ以上の犠牲者を出すのはごめんだ。

 慎也に降伏を勧告したまえ」

防衛軍の乾総監の言葉が耳から離れない。

“戦争に犠牲はつきものなんだよ。ド素人が!”

木戸少将は収まらぬ怒りに震えつつ、慎也に向けて降伏勧告を行った。

「ナガレ君。艦砲射撃が止んだぞ。

 今のうちにショウ君を探しに行こう」

奴隷小屋で、ベッドの毛布に潜り込んでいたナガレに、ダイゴが声をかけた。

「嫌だ。あいつらのところに戻るなんて・・」

「何を言っているんだ。

 ショウ君を見殺しにするつもりか?!」

「ショウなんて・・。デカチンだし・・。嫌いだよ・・」

「君はそれでも男か!」

「はいはい、そうですよ。ちっこいのがついてますよっ」

ダイゴはお手上げのポーズをとった。

その時、外でゴリラ怪人の大声がした。

「ナガレ!。そこにいるのは分かってるぞ。

 お前にはスンラデアが待っているんだ。

 おとなしく出てこい!」

ドアの隙間から、外をうかがうダイゴ。

「ゴリラ怪人と、戦闘員が10人ぐらいだ。

 どうするね、ナガレ君」

「留守だって言ってよ」

“アホか”・・と思うダイゴ。

だが、ともかく敵が迫っている。

ダイゴは胸ポケットからフラッシュランスを取り出した。

「あっ、いいなぁ。そんなの持ってるんだ。

 それで変身して、でっかくなったら、ゴリラ怪人なんてイチコロだよね。

 早くやっつけてよ」

毛布から顔だけ出したナガレの言葉に、ダイゴは取り出したフラッシュランスを

しまい込んだ。

「えっ、どうしたの?」

「ここは一旦、敵の捕虜になろう。

 その方が、手っ取り早く敵の基地に入る事ができる」

「あっ、アンタねぇ。んな気楽に言うけど、捕まったら最後、

 とんでもない事になるんだよ」

「虎穴に入らずんば虎児を得ずだ」

「ダ、ダイゴ。・・・」

 

一方、ショウの捕らわれている地下牢も、爆撃の被害を受けていた。

爆撃により、地下牢の電源が破壊され、牢の電子ロックが解除されたのだ。

ショウは恐る恐る外に出ると、地下道を地上に向かう。

地上が近づくにつれ、屍(しかばね)をさらす戦闘員の姿が目に付いた。

ショウは戦闘員から光線銃を奪い、地上を目指す。

と、突然、背後から声が聞こえた。

「あれぇ〜。ショウちゃん、どこにお出かけするの?」

トカゲ怪人だ。

振り向きざま、ショウは光線銃の引き金を引いた。

青白い光がトカゲ怪人の額にヒットする。

だが、所詮は戦闘員の武器だ。

トカゲ怪人には、殴られた程度のダメージしか与えられない。

だが、ショウを丸腰だとばかり思っていたトカゲ怪人は、

この攻撃に不意をつかれた。

その隙に逃げ出すショウ。

「追え!」

トカゲ怪人の命令で、戦闘員が後を追う。

ショウは、時々後ろを向いて戦闘員を狙い撃ちしながら、

迷路のような地下道を走り回った。

だが、追いかけてくる戦闘員の数は、増える一方だ。

ついに、光線銃のエネルギーも切れた。

こうなれば、ひたすら逃げるしかない。

目の前に扉が見える。

ショウは、体当たりで扉をぶち破った。

が、そこはサンダーバードの格納庫跡。

昨日の壮行会の会場だ。

特設リングや、ミニキングジョーが、昨日のままになっている。

ミニキングジョーが侵入者に気づいて、ショウに歩み寄る。

たじろぐショウ。

背後からは、戦闘員やトカゲ怪人も追いついてきた。

「ショウちゃん。今日は、ミニキングジョーとデスマッチはいかが?」

トカゲ怪人は、長い舌を出して笑みを見せる。

一歩一歩、ショウに近づくキングジョー。

ついに、ショウは壁際まで追いつめられた。