連載小説
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#7.日常的ミッション
「……朝か…」
 カーテンの隙間から差し込む人口の朝日を浴び、アストライアーは目覚めた。
 無言のまま、彼女は半身を起こし、枕元に置かれた目覚まし時計に目を向ける。現在午前7時5分前。7時にセットされたアラームはまだ鳴っていない。
 起床したアストライアーがカーテンを半分開き、部屋に朝日を照射しだすと、その脳内では機械的とも本能的とも言える思考が起動させられ、脊髄から手足の末端に至るまでの神経に覚醒を促す。
 同時に、室内の様子も明らかにされた。装飾と呼べるようなものが一切無く、全体的にすっきりとした印象をしている室内だが、何故かそこには物騒な雰囲気があった。
 ベッドの横にはデスクが設置されており、表面の所々がわずかに傷付いた、薄型ディスプレイのパソコンが設置されている。その前には漆黒の刀身を持つ刀が、鞘に収納された状態で、「黒百合」と象嵌された台座に固定されていた。刀身の周囲には鍵の付いた鎖が巻き付けられ、簡単には持ち出されないよう工夫されている。まるで、刀に封じ込められた得体の知れない力を、厳重に封じているように……
 その前には、折り畳まれた衣類一式と、椅子にかけられた男性用の軍用ロングコートが見て取れる。デスクの脇には書類の束が、バインダー式のファイルに収められて片付けられていた。
 デスクの向かって右側の壁は引き扉になっており、その中はクローゼットになっている。無造作に開けられているその中には、着用者と、幾多の相手レイヴンの血を吸った、どす黒い防弾・対刀性のボディスーツや防弾ジャケット、ハーネス類が吊るされ、その下にはボディスーツの各部に留め付ける軽金属装甲が無造作に転がっていた。
 更に装甲の傍では、最もポピュラーな9mm×19mm弾を放つ拳銃、折り畳んでの持ち運びが可能なショットガン、催涙ガスを詰めた携帯用のスプレー缶、トンファーと称されるトの字型の棍棒、鞘に入れられた軍用ナイフ数本、ショットガンの銃口ほどの直径を持つ金属製の杭、人間用レーザーブレード等の数々の武器が、動作停止状態で陳列されていた。
 さっさと着替えるか……物騒な空気を放つクローゼットなど気にも留めない部屋の主が、ベッドの横に設置されたデスクの上に、予め置かれた着替えに手を伸ばす。だがそこで彼女は違和感を覚え、動きが止めた。
 クローゼットが原因ではない。彼女にとって、それは見慣れて久しい光景であり、今更違和感を覚えるようなものではない。
 異変は床にあった。本来何も無い筈の床に布団が敷かれ、見知らぬ少女が眠っていたのを目にしたのだ。
 即座に警戒態勢に移行したアストライアーだったが、しかしすぐにその少女――否、幼女と言うべきだろうか、ともあれその者の正体は判明する。
「……何だ、エレノアか」
 それは昨日からアストライアーと同居する事となった孤児の名であった。孤児が寝ている横で、機械的とも言える手際の良さで寝間着から普段着へ着替えた後、女戦鴉はエレノアの寝姿に目を向ける。
 と言っても顔しか見えないのだが、しかし枕に頬擦りをする様な状態から、すうすうと規則正しい、心地良さそうな寝息を立てている。その表情は実に安らかで、可愛いものだった。あたかも、布団の温もりを全身で感じている様に。とてもこの殺伐とした部屋には似つかわしくない。
 それを前にし、彼女は悩んでいた。もう少し寝かせてやるか、それとも起こすべきかについて。今まで路上生活していたエレノアが、こうして気持ち良さそうに眠っているのを邪魔したくはなかったが、一方ではこの家で生活する身分ゆえ、自分のサイクルに合わせて起きてもらった方が良いのだろうかとの考えが、脳内で拮抗していたのだ。
 戦場では殆ど迷う事無く決断し、行動してきたアストライアーが、些細な事で悩む――戦場でしか彼女を見た事が無い者にとっては、まず考えられない事であろう。
 そんな中で、エレノアが目覚めた。ゆっくりと上半身を起こし、まだ眠たそうな表情でアストライアーに向き直る。
「ん……あ…あすおねーさん…おはよう…はやいんだねぇ……」
「……済まない、起こしてしまったか」
 申し訳無い、といった表情のアストライアーだが、しかしエレノアはそんな事は全く気にしていない様子である。単に寝ぼけていただけか、あるいは本当に気にしていないのか。
「ううん、いつもはかってにめがさめちゃうから。くるまとか、ひととかで」
 確かに、今頃は通勤ラッシュが始まり、当然人足が多くなるからなとアストライアーは思い起こしていた。レイヴンとなってからは縁遠い存在となった概念ではあるが。
「でもいそがしい人をとめたりられないから、しかたないよね。…ところでアスおねーさん、おきがえはどうするの?」
「昨日と同じ奴でいい。特に汚れてもいないしな」
「はーい」
 自分の眼前で、パジャマから普段着に着替えようとするエレノア。このパジャマ、アストライアーの所有物と言う事もあり、全くサイズが合っていなかった。その幼女に合わぬサイズの衣服の所有者は、着替えるエレノアに視線を向けていたが、その目には、エレノアのあちこちに付いた傷跡が。
 それらの中には、既に痕跡程度しか残っていない傷もあれば、つい最近付いたであろうかさぶたも見受けられる。傷ついた人間に感傷を抱くアストライアーではなかったが、しかしエレノアの傷跡を見た彼女の顔に、どことなく悲しげな表情が浮かぶ。
 しかし、傍目から見れば無表情のままにしか見えないだろう。
「…? アスおねーさんどうしたの?」
「あ……別に何とも…」
 エレノアはアストライアーの顔を見て、言葉を続けた。アストライアーの顔は、いつもの冷たい表情に戻っていた。
「あたしがきになるの?」
 自分の考えた事を察しているのか。アストライアーの背筋に僅かながら恐怖心にも似た感覚が走る。
「…と、兎に角朝食準備してくる」
 そう言うと、アストライアーはエレノアから逃げる様にして部屋から出た。
「あ、ちょっとぉ〜……ま、いっか♪」
 気になる点はあったが、とりあえず着替えるエレノアであった。


「おきがえ、終わったよ」
 衣類の袖を引きずりながら、エレノアが寝室から出てきた。これもアストライアーの所有物であった為、サイズが全く合っていなかった。ただしそれは、身長168cmのアストライアーが着用するには小さ過ぎる。
 これは厳密に言えば、アストライアーが着用していたのではなく、BBのエゴにより、幼くして他界させられた妹の所有物だったのである。
 しかしそれでも、女剣士の妹と、その衣服を纏う孤児とは30cmはあろうかと言うほどの身長差だったのだが。
「そうか、じゃあそろそろ朝食にしよう」
「はーい」
 テーブルの上には既に皿、空のコップ、サラダが盛られた小さめのボウル、バターなどが既に用意されていた。エレノアはアストライアーから借りたシャツの腕をまくる。
「今パンを焼いているから、焼けるまではサラダでも食べていてくれ」
「はーい」
 と、スプリングが跳ね上がる音と同時に、トースターが焼き上がったパンを垂直発射式ミサイルの様な勢いで弾き出した。アストライアーは落下軌道を読むと、皿を着弾地点に置いた。時間にして2秒足らずで、狐色に焼き上がったトーストは、音を立てて皿に着弾。
「すっごいげんきなパンだね」
 テーブルの上に吹き飛んだパンを拾うアストライアーを横目に笑うエレノア。アストライアーはそれを気にする様子も無く、皿の上に乗ったパンにバターを塗り、エレノアの目前に移動させた。
「さあ、食べるといい」
「ありがと。それじゃ、いっただっきまーす♪」
 調子の良い挨拶に続いて、エレノアは衣服の裾を捲り上げ、パンにかじり付いた。ちょっと食べ難そうだなと、アストライアーには映っていた。最も今日は、この後エレノアを連れて出撃する事になる為、もう少しだけそれに耐えてくれれば良いのだ。
 ちなみに現時点で、アストライアーに届いている依頼は無い。それどころか、特に新聞を賑わせる様な、センセーショナルな話題すらも無い有様だ。戦乱と混迷の最中にあるのが嘘の様な、実に平穏な日である。
 最も、それは朝方だけであり、昼過ぎには市街地内でテロリストと企業の戦力が、レイヴンが激しい戦闘をやらかさないとも限らない。
アストライアーからすれば、できる事ならそれはあって欲しくなかった。折角自分と暮らし始めたばかりの幼女の命を散らす事にもなりかねないからだ。
「ところで、昨日はよく眠れたか?」
 アストライアーは焼きたての食パンを美味しそうにかじるエレノアに尋ねた。
「うん。もうぐっすりと。てか、あんなに気持ちよくおねんねしたのは生まれてはじめてだったかも」
「オーバーだな……あ、そうか……貴女はストリート・チルドレンだったからな…」
 アストライアーも呟きながらパンにバターを塗り、口に運んだ。


「さて、今日は貴女の服を買いに行こうと思うんだが…」
 一通り朝食が済んだところで、アストライアーが今日の予定を口にする。
「えー? いまのままでいいよ」
「そうも行かない。外出する時とかどうするんだ? 貴女のサイズには合わない服で遊びに行くのか?」
「だいじょーぶだよ……ああっつ!!」
 サイズの全く合っていないズボンの裾に足を引っ掛けたのだろう、エレノアは顔面から派手に転んだ。幸いカーペットの上に転倒したので、何も敷いていない床に転倒するよりダメージは小さかった。
「大丈夫か?」
「うん……」
 涙を浮かべ、顔をしかめるエレノア。これで彼女も、新しい服を買う必要性を身をもって思い知る事となっただろう。だがそんな幼女は、自分の格好を見てある事に気が付いた。
「もしかして……このままいくの?」
「当然だ」
 エレノアが来ているものを含めたアストライアー宅の衣類は、身長100cm前後の幼女には到底着せる事が出来ない代物ばかりである。選択の余地など、もとよりないのだ。
「そんな……だいじょーぶなの?」
「大丈夫だ。ちょっとした工夫をすれば」
 アストライアーは自室へと戻り、安全ピンを4つ持ってエレノアの傍に戻って来ると、エレノアのズボンの右足の裾を、ちょうど足首が見える辺りまで折り返した。そして裾を、持って来た安全ピンで留めていく。
「こうすれば裾は一応ずり落ちなくなる。他の部分もそうするから、少しの間我慢しててくれ」
「はーい」
 そしてアストライアーは、エレノアのもう片足と両腕も同じように捲り上げ、安全ピンで留めていった。
「よし、これ位で良いだろう」
「いいの? よかったぁ、これでやっとおでかけだね」
「いや、まだだ。私が外出の用意をしてからだ。悪いがもう少し待っててくれ」
「はーい」
 そうしてエレノアが待つこと2分、外出の用意をしたアストライアーが自室から出て来た。ネイビーブルーのGジャンに黒いジーンズ、フェイクレザー製の黒いグローブと言うファッションで。短い紺色の頭髪と相まって、まるで男性のようである。
 さらに、買った物を入れる為だろう、大きめのバッグも手に提げていた。その上から、アルタイルの遺品である濃紺のコートを羽織い、バッグを肩にかける。
「よし、では行くか」
「うん! …でもそれなに?」
 エレノアに、アストライアーのGジャンの内側に見える黒い何かが目に付いた。
「……見ない方が良い」
 エレノアが見たものの正体を察し、アストライアーは声を濁らせた。
「まあまあ、そういわないでみせて♪」
 だがエレノアはそう言うと、アストライアーのGジャンを捲り上げた。
 Gジャンの下には黒いシャツ、その上からホルスターが装備され、拳銃が収められている。更に、腰の辺りには鞘に収められた刃物も見受けられる。その正体が「黒百合」である事は論を待つまい。
 他にも、鞘に収められた数本のナイフが、ジーンズのウェスト部分に留めつけられていた。
「これって……ピストルとナイフ?」
 そう言い、拳銃に手を伸ばすエレノア。
「触るな!!」
 不意に、殺意と敵意に満ちた声が張りあがる。同時に、フェイクレザーの手袋は黒百合を握り、抜刀した。自らの意思とは無関係に、過剰なまでの自己防衛本能に基づいて、反射的に体が戦闘態勢になってしまったのだ。
 突然の事に、エレノアは反射的に後ろに飛び退いた。
 殺伐とした空気が流れる中、我に返ったアストライアーは、怪訝そうな顔をして幼女の顔を見下ろす。勿論、戦闘態勢を解き、漆黒の妖刀を鞘に納めた上で。
「……どうした?」
「び、びっくりしたよぉ……おねーさんがいきなりおこったんだもん…」
「ああ、すまなかった。だがコレに触ったら駄目だ。実弾が装填されている。不用意に扱うと人間の一人、二人は殺傷出来る」
「なんでもっていくの?」
 勿論護身目的である。目前で尻餅をついたままの幼女に、女レイヴンはそう告げた。そうでなくても、BB絡みを除けば、アストライアーの戦いは自己防衛か金稼ぎのどちらかに限られる。
「あ、そうだね……こわいひととかがくるかもしれないんだね……」
 先程まで太陽みたいな笑みを浮かべていたエレノアの表情が、まるで黒雲に覆われた様に暗くなる。
 だが無理も無い。エレノアが昨日までいた世界は、そしてアストライアーが身を置いている世界は、明日すらどうなるか分からない世界。家も持たず、生きる為には殆ど犯罪も辞さない浮浪者が居ても何ら不思議は無い。
 アストライアーはその事を察してか、エレノアを察して言う。
「だが安心していい。私の傍にいれば安全だ」
「ホント?」
 アストライアーにとって、この発言は不本意なものだった。
 何しろ彼女自身、以前「この世界は外面は砂糖やクリームで固めてあるが、裏は血生臭くどす黒い世界だ」とか、「攻撃を躊躇っていては、到底この世界は生きて行けん」と言っている事からも分かる様に、常に殺伐とした世界に身を置き、そしてそれを常に自覚していなければならない。それもすべて、BBへの復讐を誓った時から背負い続けていることだった。
 勿論今もそれを肝に銘じていたが、それを言うべきではない。今のアストライアーの頭は何故か、そんな思考で満たされていた。もしそれを口にしたら、何か良くない事が起こる――彼女の中で、何かがそう囁いている様な感覚さえ覚えていた。
 それが悪魔の囁きか、あるいは神のお告げかはどうでも良かった。彼女にとって重要なのは、その感覚に従う事だと察したのだから。
「……ああ、約束する」
「ホントだね?」
 女レイヴンは肯いた。
「じゃああたし、アスおねーさんのそばからはなれないからね。どんなことがあってもはなれちゃダメだからね♪」
 本当なら「保障は出来ない」と言いたかったアストライアーだが、あえてそれを言わなかった。それを言ってエレノアを不安にさせたくは無かったのだろうか。だがその配慮の甲斐あって、何とかエレノアに無邪気な笑顔が戻った。
「あ、でもどうやっていくの?」
「バイクで行く」
 本来は車で行きたいのだがと呟きながら、アストライアーは玄関を施錠。エレノアと話をしながら、マンションの一階にある駐輪所に向かった。
 そして駐輪所の自分のバイクのところに来ると、チェーンを外し、颯爽と跨る。その後ろには、当然のようにエレノアが座った。
「準備は良いか?」
「うん、いいよ」
 エレノアが意を告げたその直後、バイクのエンジン音が駐輪所に響き始め、アストライアーとエレノアを乗せたバイクは市街地へと向けて疾走し出した。
「掴まってろ!!」
 エレノアが自分の華奢な体に両手でしっかりしがみ付いている事を確認すると、アストライアーはバイクを加速させた。
 本来なら目的最優先で最加速させたい所だが、アストライアーはそれをしなかった。何故なら、今までの彼女は自分の身の安全だけを考えていればよかったが、今回はエレノアと言う護衛対象がバイクに同乗している。下手に加速したり、急激な旋回等をしようものなら彼女を振り落とす事になりかねないからだ。
 最も、今はスピードを要求される様な場面ではない。単なる購買目的の移動である為、急ぐ必要はないのだ。


 子連れの運転に違和感を覚えながらメインストリートまでバイクを進めたアストライアーは、そこで更なる違和感を感じた。
 後方の様子を知るためのミラーには数分前から、白い軽乗用車を映し出していた。既にズタズタの他殺体に変貌させられているが、昨日の男が意趣返しをするべく彼女の元に現れたときと同じである。
 ドライバーは見た感じでは中年の女性、恐らくは何処かに買い物にでも行くのだろうが、しかし疑心暗鬼に駆られるアストライアーは、後方より来る車両のドライバーを、自分の命を狙う追跡者と認識した。
「チッ、このクソ忙しい時に!」
 目前の横断者用の青信号が点滅している。このままでは赤信号になると察し、女剣士はバイクを急加速させ、人目のないところに誘き出そうと、愛車を左折させ、小さな路地へと進んでいく。だが後方の軽乗用車はアストライアーを気にする様子もなく交差点を直進、アストライアーの視界から消えると、次の交差点で右折し、車列の中へと消えて行った。どうやら、本当に彼女とは関係のない人間が乗っていたようだ。
 去り行く軽乗用車を見送り、アストライアーはようやく安堵した。しかしながら、ここまでの一連の行動は、エレノアを守ろうとするあまりに疑心暗鬼になる女戦鴉の姿そのものだった。
「アスおねーさん?」
 疑問を感じてか、エレノアが小さな声で話しかけてきた。だがいくら彼女の問いとは言え、後方の車に襲撃者が乗っていると思っていた、などと回答は出来ない。
「いや、何でもない。何でもないんだ……」
 やがてメインストリートに戻ったバイクは、この数分後、ショッピングモールの駐輪スペースへ滑り込む様に乗り入れると、そこで愛車のエンジンを停止させた。


 ショッピングモールの駐輪所にバイクを乗り入れたアストライアーは、エレノアを従え、今回の作戦領域たるブティックへと足を踏み入れる。
 目標はエレノアの護衛と、それ用の衣服の獲得であり、それ以外はない。其処で戦闘行動をやらかそうなどと言う意思は微塵も無ない。最も、自分かエレノアを襲おうとする者が現れれば話は別であろうが。
「いらっしゃいませ、こんにちは」
 店員の挨拶を横に、アストライアーはエレノアを女子用衣服売り場へと連れて行く。既にアストライアーの脳内に描く作戦行動は開始され、脳内メインシステムは戦闘モードに移行している。エレノアを守る為ならば、彼女は如何なる相手とでも戦うつもりでいた。
「さて、どれが良いか選んでくれ」
「うーん、そうだね」
 落ち着かない素振りで、陳列されている衣類を見てエレノアは悩んでいた。
「うぁ〜、いっぱいありすぎてどれがいいんだかわからないよー!」
「貴女が好きだと思った奴で良い」
「う〜ん…」
 目の前に並んだ大量の、よりどりみどりな服を前にし、首を傾げたり頭を抱えたりして悩むエレノア。異性から見れば、その仕草は何気なく可愛らしいと思うかもしれないが、彼女を護衛している女戦鴉は別に興味は抱いてなかった。
 だがアストライアーが「可愛いヤツだな」と思っていた事は確かだ。実際、アストライアーの口元が、僅かではあるが緩んでいたのだ。それに気づく者が誰もいない事は、幸か不幸か。
「今日は特に何も無いからな、ゆっくり選んでも良い」
「うん」


 そうしてエレノアが悩む事30分あまり。一通り衣服を選んだところでアストライアーが口を開いた。
「選んだら次は試着してみる事。実際に着用して確かめるんだ」
「はーい。……でもどこで?」
「あっちに試着室がある」
 アストライアーはブティックの隅を指差す。指差した先には、当然のように試着室が並んでいた。
「着替え終わったら私を呼べ」
「はーい♪」
 エレノアは嬉々とした表情で試着室に入り、カーテンを閉めた。
 その間、アストライアーは試着室の外で待機。勿論、懐に忍ばせた拳銃かナイフか、あるいは黒百合に手を伸ばし、すぐにでも引き出せる体勢にしておく事も忘れない。不振な輩が現れないとも限らない、と警戒しているのだ。
「あれ? アスお姉さまじゃないの?」
 アストライアーの耳に女の声が入ったのは、そんな時だった。
 声に応じて反射的に振り返る女レイヴンだが、しかしその手にナイフや拳銃は握られていなかった。何故なら、声の主はアストライアーにとっては比較的親しい人間の声であったからだ。
「……ミルキーウェイか」
 声の主はアストライアーが在籍するアリーナにおいて、アイドル的な人気を誇る女性レイヴンだった。以前、依頼をこなしている際に共闘し、その際に知り合いになったのだ。
「奇遇だね、ここで会うなんて。何をしに来たの?」
「衣服の購入の為だ。当たり前の事を聞くな」
 少々微笑み混じりだが、しかしアストライアーの口調と態度は冷たい。
「そりゃそうだけどさぁ……でもだからって怒らないでよ、もう……」
「これで私が怒っている様に見えたか?」
「お姉さま……目が笑ってないよ?」
 僅かな微笑み混じりのアストライアーだが、その目は戦闘時のそれに程近いものだった。しかも、微笑み混じりの表情だったとは言っても、彼女の顔をあまり見ていない人間からすれば、殆ど変化が無い様に見えるほどの、極めて微妙な変化でしかなかったが。
 ミルキーウェイはアストライアーから見れば「顔見知り」の部類に入るが、それでもその微妙な変化は分からない。或いは、内に秘めた言い知れぬ殺意と、睨まれただけでバッサリと斬られそうな鋭い視線を前にして、そんな事は何処かに吹っ飛んでしまったと言うのが正直な所だろうか。
「それよりお前……その服の量は何だ?」
 ミルキーウェイの両手にはそれぞれ数着の服が。盗難防止用のタグが付いている所からするに、まだ未会計の衣類らしい。
「これ? この間の依頼で報酬が入ったから買っちゃったの♪」
 嬉々としたミルキーウェイだが、その前のアストライアーはいつもの冷徹さを多分に含んだ表情を崩さない。これは単に彼女が、他者に無関心な性格と言うのもあるのだろうが。
「お姉さまもファッションに気を使ったら良いのに。そんな男の人みたいな服じゃなくてさ、ヘソ出しとかミニスカとかさ」
「気に食わない。露出過多は無防備で危険極まりない」
 アストライアーは女性にしては珍しく、ファッションは将校を思わせる濃紺のロングコートを初めとし、フライトジャケットやジャンパー、ジーンズ等と男性的な衣服が多く、女性用の衣服、例えばワンピースやスカートなどは殆ど所持していない。
 強化人間化して以来、ファッションに無頓着な人間になったと言うのもあるが、最大の理由としては先述の通り、露出は危険である事だった。実際、胸元を強調した様なファッションやミニスカートの類となると、大抵痴漢に狙われ易くなる上に、何も身体を防護する物がない為、事故や怪我の際に被るダメージも大きい。
 それらはアストライアーの、極めて個人的見解であるが、しかしいつ何時狙われるかも知れない要素が転がる中で生活している以上、妥協して付け入る隙が生じるのは、何としても避けたい所だった。ただ、日常生活の中でそれが良いかどうかとなると、これはまた別問題だが。
「あら〜、気に入らないんだ。てか、アスお姉さまってファッションとか興味ないの?」
「興味が無い」
 アストライアーは当然の如く言い放つ。ミルキーウェイは更に言葉を続けようとしたが、それは突如割り込んできた男の声によって未遂に終わった。
「ミルキー、何やってんだ!」
「あ、ごめーん!」
 レジの前に居た男は、ミルキーウェイを呼び出すと、彼女と代わる様にしてアストライアーに歩み寄って来た。
 ミルキーウェイと代わる様にして、若い男がアストライアーに歩み寄ってくる。彼もまた、アストライアーには見慣れた男であり、それゆえ戦闘態勢に移行する必要は無いと、彼女の脳は統制を発していた。
 ただ、その言葉や態度には、ミルキーウェイの時と比べると明らかに棘が感じられる。
「奇遇だな、アス」
「それはこっちの科白だ、ストリートエネミー」
 ストリートエネミーもまた、ミルキーウェイと同様にして、アストライアーと同じアリーナに在籍している。そしてアリーナランクでも、同じCランクに位置していた。ただし同じCランクランカーでも、ランクはミルキーウェイと比較すれば上。20代半ばという年齢ではあるが、腕の方は確かである。
「またミルキーウェイの連れをやっているのか? 精が出るな」
「第一声がそれか!?」
 ストリートエネミーもすかさず反撃する。
「それに、俺は連れじゃねぇ。荷物持ちをやらされてただけだ」
「どう言おうが、結局は連れだろ? ミルキーウェイの言う事を聞いてそれをやった以上は」
「……」
 ストリートエネミーはあっさりと沈黙してしまった。振りかぶる事も肯く事も出来ないまま、2人のレイヴンの間に重い空気が流れる。
「あのぉ、アスおねーさん?」
 そんな中、エレノアに呼びかけられ、アストライアーは試着室の方に首を向ける。体は相変わらず試着室に背を向けていたが、しかしその顔には一瞬、安堵の表情が見えた。
「きてみたけど、どうかな?」
 エレノアが試着室から出てきた。先程選んだ白い半袖のポロシャツに紅い半ズボンを着て。
「……元気そうで良いんじゃないか」
「ホント? ありがと〜! あとほかにもあるから、みせてあげよっか?」
「そうだな。見せてくれ」
「は〜い、ちょっと待っててね〜」
 選んだ服を着た姿を見せてあげようと、エレノアは再び試着室へと戻った。
 一連の光景を前に、ストリートエネミーは愕然としていた。アストライアーがエレノアと一緒になっていた事が意外だったのだ。
 これまで、彼はアストライアーの戦いぶりを何度か目の当たりにしているが、今の彼女は、戦場で見せた戦いぶりと、僚機でさえ平気で抹殺する冷徹さからは全く想像出来ない状況だった。
 彼はアストライアーと共闘した際、依頼中に彼女を裏切った元・僚機を躊躇いもなく殺戮する様を目撃している。その冷酷非道ぶりは凄まじく、時にはブレードで頭部や四肢を斬り落とし、コアを叩き割るように破壊した事すらも有ったほどである。そうした印象が根強く脳裏に残っているストリートエネミーにとって、今のアストライアーの行動は驚愕に値した。
「お……おいおい、何だその娘は?」
「ちょっと訳があってな……」
 エレノアの事を聞かれ、迂闊にも彼女の事を口走りそうになったアストライアーだったが、そこで我に返った。
「貴様、それを聞いてどうする!?」
 反射的に、アストライアーは臨戦態勢に移行。僚機をも抹殺する冷酷なレイヴンとしての顔を前面に出して来た。
「彼女に手を出そうと言うならば、容赦はしない」
 懐に忍ばせた拳銃――否、黒百合だろうか、懐に忍ばせた凶器にも手が伸びている。今にもストリートエネミーに襲い掛かりかねない形相であった。
「おいおい、別にあの娘には関心は無いぜ? だからその懐の危険物はよせよ!」
 ストリートエネミーがアストライアーの腕を掴んだ。
 この時点で周囲の客はまだ異変に気が付いていないらしく、何も変化は無い。或いは、単に見て見ぬフリをしているだけだろうか。
「貴様は信用に値しない。何度そうやって薄汚い所業を繰り返したか……」
「人聞き悪いな。確かに俺は薄汚ねぇ生き様だったが、ヤクとレイプ、未成年を食いモンにする行為はしない主義だぜ。安心しな、あの娘には手は出さねぇよ」
 とりあえず、女剣士は凶器から手を離した。だが、それでも戦闘中さながらの毅然とした態度は崩さない。ただ、攻撃したらアストライアーに待っているのは社会的な死である。それは分かっているが、しかし頭も身体も、反射的に攻撃態勢に移行してしまっていた。
「お兄ちゃ〜ん、荷物持つの手伝って〜」
 異様な空気に満たされたこの場から逃れる為の蜘蛛の糸が垂れ下がってきた。彼を呼ぶミルキーウェイの声である。
「ああ、ちょっと待て、アスとの話終わったら行くからよ」
 最近、ストリートエネミーはミルキーウェイと共闘する事が多く、彼女からは兄呼ばわりされている。一見すると恋人や兄妹の様な関係の2人だが、その2人に何があったのかは、アストライアーには分からなかった。
 そして、その理由を聞く気にもなれなかった。聞いた所で何にもならないと判断していたのだ。
「それに、あいつが居るからな……あいつに泣かれると後が厄介だ」
「そうか」
 アストライアーは表情を崩さずにため息をついた。涙を武器にしていると言ってもいい様な、ミルキーウェイの行動に呆れたのだ。
 だが、彼女はそれに対して表立った批判をするつもりは無かった。「涙を武器にする」と言うのは少々幼稚とも取れるが、それはあくまでも共闘した人間のやり方。どう言う意図があっての事なのかは兎も角、敵対者でない以上、それを表立って批判するのは、共闘した人間の反感を買うだけではと考えていたのだ。
 かつて、味方である筈のレイヴンに裏切られた過去のあるアストライアーにとって、馴れ合いは出来るだけ避けたいものだったが、しかしレイヴンも――アストライアーの様な強化人間も含め――血の通った人間、またはそれに端を発する存在であるが故、他者との関わりがどうしても必要な場面に度々遭遇している。
 故に、彼女も戦友や僚機を必要とし、そうした者への配慮を必要としたのだ。ただ、この女剣士はそれを殆ど最低限にしているのが実情なのだが。
「じゃ、俺はミルキーが呼んでるから行くな。くれぐれも日常生活で死ぬなよ」
「貴様もな」
 ストリートエネミーはそう言うと、ミルキーウェイの服を入れた紙袋を持ち、彼女と共に外へと出て行った。ミルキーウェイに抱き付かれ、赤面して慌てていた彼が印象的だった。
「アスおねーさん…」
 先程からストリートエネミーとアストライアーの会話を聞いていたのだろう、試着室を閉ざしているカーテンから、エレノアが顔を出した。
「さっきのひと、おねーさんとおなじれいぶんの人?」
「ああ」
「ふーん、そうなんだ…」
 ちょっと考えている様子のエレノア。目前で話をしていた男性が誰なのかは、やはり気になるようだ。
 だが、すぐに考えたような表情は消え、再び無邪気な笑顔になる。
「あ、そうそう、このふくはどう?」
 言うと、エレノアは黒い半ズボンに白いシャツ姿で出て来た。
「良いんじゃないか。他はどうだ?」
「あ、ちょっとまっててね〜」
 その後もエレノアは何回か試着室に入っては、選んだ服を披露した。ただそれの殆どは、半ズボンやスパッツといった物ばかりだったが。
「……それにしても、どれも半ズボンとかばかりだな。何故?」
「だってうごきやすいんだもん♪ あ、でもカワイイのもえらんでみたんだよ?」
 そして再び試着室に戻るエレノア。しばらくして、再び彼女が出てきた。
「どう? カワイイでしょ?」
 エレノアの姿は肩の辺りが膨らんだ感じのシャツにフリルの付いたスカート。表情から察するに、かなり気に入ったらしい。
「まあ、良いんじゃないか。……で、そんなもので良いのか? 良いならレジに持って行くが?」
「うん、いいよ」
「じゃあ元の服に着替えてくれ。それを着るのは一応会計が済んでからだ」
「うーん、このままでいたいんだけど……ダメ?」
 仕方あるまい。アストライアーは無情にもそう告げた。本来なら着せたままにしてやりたい所だが、あえてそのままにしておいた。
 大人になる事への第一歩、それは欲しいものややりたい事があっても我慢する事だと言う事だからだ。多分違うとは思うが。
 だがそうだとすれば、アストライアー以下レイヴン達の大半は大人失格か――いや、そう言われても不思議はあるまい。
 レイヴンは自由を風評とする故に、何をしでかしても不思議はない――従って反社会的行動や、あるいは獣の様な振る舞いを行う連中、更には倫理や道徳観、人権に反する行為を取る者が現れるのは必然である。BBと、それに復讐を誓ったアストライアーが最たる例であるのは論を待つまい。
「そっか……でもいいや、おうちにかえるまでがまん、だね」
 それは兎も角として、アストライアーの意図は分かってもらえたようである。元の、サイズの合わないアストライアーの服に着替え直すエレノアがそれを証明していた。
 エレノアが着替え終わると、アストライアーはエレノアが選んだ衣服と、その途中で数点選んだ女の子用下着数点をレジまで持っていく。
 一瞬、資金を心配したが、先のノクターン戦のファイトマネーが入っている事を思い出し、アストライアーは考えを訂正した。
 その間にも会計は進み、請求に基づいてアストライアーが札を引っ張り出す間に、店員が紙袋に衣類を入れようとしていた。
「あ、袋は不要だ。バッグ持参なのでそれに詰めていく」
「は、はい」
 店員の手が、衣類からレジへと向けられた。


 一通りの会計が済むと、アストライアーは衣服一式を全てバッグに詰めてブティックを出た。その後、バイクまで歩いて戻るのだが、その間、エレノアの嬉しそうな顔がアストライアーの目に入った。
「どうした? やけに嬉しそうだが?」
「だって、アスおねーさんが『いい』っていってくれたんだもん♪」
「そうか…」
 エレノアを見ているうちに、アストライアーは自分が微妙に微笑んでいた事に気が付いた。それも、初めて彼女の顔を見た人間でも分かるほどの微笑である。
(また笑った、私……何故だ?)
 家族を失って以来、全く笑わなかった自分がどうして……その疑問は、即座に呟きとなって出た。
「ん? どうしたの?」
「いや、何でも無い。それより早くバイクに乗ってくれ。出るぞ」
「はーい」
 いつもの無表情でエレノアをバイクに乗せるアストライアー。だがその心の奥では、エレノアが喜んでいた事を嬉しく思っていた。
 そして、自分もそんな彼女を見て気分が良かったし、万事良しとするかと、女戦鴉は割り切った。
 微かな喜びを胸に、アストライアーは再びバイクからマフラー音を響かせた。


 バイクの背に乗って消えて行くアストライアーとエレノアを、遠くの交差点から見つめている青年がいた。
「彼女……アルタイルの娘か」
 レイヴンとしての彼女を知っているのだろうか、青年の口から呟きが漏れる。と言う事は、彼は同業者か、あるいは目の前を過ぎ去った女剣士に対して、意趣返しを企図する人間だろうか。ただ、レイヴンについては詳しい者である事は確かなようだ。
 そんな彼の容姿はロングヘアーの女性を思わせる漆黒の長い髪、それと同じ色の瞳。それらは彼の白い肌と冷めた表情と相まって、見る者に無機質な印象を与えていた。だがその体躯は、細身長身の女性と見間違えるほどの美を有した、不思議な男性であった。
「しかしあの少女、そして彼女と一緒にいたアルタイルの娘の顔……」
 男は行き来する車の向こうに消えていった2人を見つめ、再び呟いた。
「まあ良い、いずれ分かるか」
 そう言い残すと、青年は交差点を渡り、歩道の反対側を行き来する人込みの中へと姿を消した。


 一方のアストライアーは自宅に急行したが、その数分後には再びバイクを飛ばしてトレーネシティの繁華街へと向かっていた。その背には、木にしがみ付く小猿のようにエレノアが寄り添っていた。
 そんなエレノアの姿は、先に購入した白いポロシャツに赤い半ズボン姿となっていた。
「アスおねーさん……こんどはどこいくの?」
「また買い物だ。今度は食い物を、だが……」
 アストライアーはバイクを主な交通手段としている為、一度に大量のものを運ぶ事は出来ない。出来るとしたら、それは背中に背負ったバックパックの容量程度、それ以上は危険だ。
 まさか、食料を満載したレジ袋を手にぶら下げたシュールな姿でバイクなど運転出来まい。マナ=アストライアーはあくまでレイヴンであり、大道芸人の類ではないのだから。
 車を運転出来れば良いのだが――今更ながら、アストライアーはそんな事を思い浮かべていた。
 しかしながら、彼女は今まで、その必要性を感じていなかった。これもBBへの復讐を第一にしていた事と関係しているのだが、交通手段はガレージに向かう為の足である程度で良く、必要以上の積載量は必要なかった。したがって、彼女は父・アルタイルが生前乗っていたバイクを、日々の足に用いる程度で事足りていたのだ。
 因みに、彼女は本人名義の原付二輪免許を持っている。当然ながら、これを手にしていなければ、警察機構に拘束され、目的を達成するどころではなくなってしまう。
「そら、着いたぞ」
 バイクは大型量販店の立体駐車場に乗り入れると、地下1階の一区画に設けられていた駐輪スペースに滑り込み、そこでエンジンを停止した。
 キーを引き抜くと、エレノアを引き連れた女剣士は、大型量販店地下1階の食品売り場へと侵攻を開始した。
「アストライアーか?」
 女剣士の鼓膜が振動したのは、売り場に入ってすぐの事だった。コートの中に忍ばせた凶器に手を掛けた上で、アストライアーは振り向く。だが、声の主の姿を確認すると、凶器に伸ばした手をすぐに引っ込めた。
「トラファルガーか……」
「私も居たりするがな」
 トラファルガーの左手側から、スキュラも姿を現した。
「何故、此処に?」
「仕事絡みで色々とあってな」
 聞けば、トラファルガーは次に受ける依頼の事でスキュラに話したい事があり、この量販店の片隅にあるカフェまで彼女を呼び出したのだと言う。恐らく、話があるから此処まで来てくれと待ち合わせを取り付けたのだろう。
 スキュラが続けて話したのだが、彼女が呼び出された理由は意趣返しでも何でもない、単なる共闘要請だったと言う。トラファルガー単独では手に余るほどの依頼が来たのかと思ったアストライアーだが、それ以上は口にしない。
「ねー、はやくいこうよー」
 アストライアーの後方から無邪気な声がした。再び振り向いたアストライアーの視線の先では、当然のようにエレノアが居て、急かすようにロングコートの裾を引っ張っていた。
「もう少し待っていてくれ」
 トラファルガーとスキュラは揃って顔を見合わせた。心を捨てた復讐者というレッテルが貼られたアストライアーが子供を連れているのだから、無理もない所ではあったが。
 当然ながら、二人は我が目を疑った。まさかこれは夢か、あるいは幻覚ではないだろうなと。だが、どうやら夢でも幻でもない事をすぐに悟る事となった。アストライアーが殺意を込めた目線で睨んでいる事と、己の背筋が冷たくなっている事に気がついたからだ。
「今、小さい娘を見たんだが……」
 殺意を感じ、トラファルガーの頭脳は前言を撤回すべく動いた。
「……すまない、どうやら幻覚だったようだ。暫く依頼続きでマトモに寝ていないからな」
 手に凶器が握られていないところからするに、アストライアーに殺意はない。トラファルガーの目にはそう映った。最も、その殺意もあと数十秒間現れなかったら良い方だが。
「いや、案外その辺のバカなガキかも知れない。また意地汚く人にたかって金やら食い物やらをせびるんだろう。しやしかし、最近こう言うバカが増えたな、多分戦闘のせいだろう」
 まるで何かを誤魔化すかのような言い方をするアストライアー。エレノアが何か言っているような気がしたが、彼女はあえてそれを無視した。そうする間にも、疑惑の視線は、今度はスキュラに向けられている。
 視線の先の女レイヴンは、自分にも疑念か殺意が向けられている事を知り、その場しのぎ的な台詞を紡ぎ出した。
「……私には何も見えなかったが?」
 どう見ても苦し紛れであった。すべてを言い終えた後で、墓穴を掘ったかとスキュラは戦慄する。
「そうか……」
 だがスキュラの言葉で、アストライアーの顔からは殺意が消えた。
 アストライアーとしてはそれ以上、何も言う気はなかった。スキュラはエレノアの存在を今この場で初めて知ったものの、それについて深く言及するつもりは無さそうだと見たのだ。
 彼女の考えている事は大体分かっている。そうでなければアストライアーがスキュラを友人と認知し、信頼を置かないはずがない。当のスキュラが、そんな彼女をどう思っているかは別として。
 そして、信頼するには値しないにしても、アストライアーの脳は分かっていた。トラファルガーとてそれは同じで、一連の出来事に対し、見て見ぬフリを決め込んでいるだろうなと察した。
 裏切りの横行するレイヴン世界において、この2人だけはまともな人間性を有しているとアストライアーは見ており、そう信じたかった。
「じゃ、私は失礼する」
 殺意の失せたアストライアーはエレノアを引き連れ、食品売り場へと歩を進めた。直後から、エレノアが怒ったような仕草を見せ、アストライアーはそんな幼女に、謝るように頭を下げていた。
「アレ……どう思う?」
「さあな。俺がどうこう言った所でどうにもなるまい。その事情を知る事は簡単だろうが、その後が面倒だ。喉元に刃を突き付けられないとも限らん」
「それもそうか」
 スキュラとトラファルガー、両者の視線はアストライアーの背へと向けられていた。詫びだろうか、彼女はが大き目の菓子の箱を手にし、エレノアに手渡している。
「で、これからどうするんだ?」
「私はガレージに行く。デルタを調整しなくては」
「そうか。俺はもう少し此処をぶらついてから帰るとしよう。整備、頑張ってくれ」
 挨拶もそこそこに、スキュラと別れたトラファルガー。数日後の戦いで同じ戦場に並ぶであろう同業者を見送ると、彼の視線は再び女剣士へと向いた。
 こうして見ると、アストライアーも優しい一人の女性に見える。外見は兎も角として、おおよそレイヴンであるとは思いがたい所があった。
 だがトラファルガーは知っている。視線の先の女性が、復讐の為にアリーナに参戦した自分と同じ存在である事を。
「アス……」
 そんな女剣士と幼女が接する姿を見て、トラファルガーは呟いた。
「嘘をつくのが下手糞だな、お前って奴は……」
 そう言いながらも、トラファルガーは微笑んでいるようにも見えた。その微笑は何を意味しているのだろうか。嘲笑か、父性の表れか、あるいは妹を見守る兄の眼差しか。それとも……
 いずれにせよ、それは周囲の人間には知らぬ所であった。それ以前に、周辺の人間がトラファルガーに気付く様子自体、全くなかった。
 トラファルガーはしばらくアストライアーとエレノアの様子を見詰め続けていたが、やがて行き交う人の流れへと姿を消した。


 スキュラ及びトラファルガーと別れた後もモールで色々と買い物をし、アストライアーがエレノアを従えて帰宅したときには、時計が午後6時半を回った頃の事だった。既に黄昏時は過ぎ、外は暗くなっていた。
 ただ、バイクで移動していた事もあってか荷物の積載量が低く、彼女達はこれまでに二度、三度と、自宅とショッピングモールを行き来する事となった。
 その甲斐あって、モール内でのレストランでの昼食を挟んでの買い物はこれで済んだ。なお、アストライアーはレジ袋をぶら下げてバイクを運転していた訳ではない。
「ただいま〜」
 エレノアは帰るなり、リビングのソファーに飛び込んだ。だが、その直後、人体が硬い物にぶつかった鈍い音がリビングに響いた。
「いったぁ〜〜〜い!!」
 どうやら、勢い余って壁に頭をぶつけたらしい。
「……随分元気だな。まあそれは良いが、家まで壊さないでくれ。また外で寝たくはないだろう?」
「そんなのムリだよ〜!」
 微笑み混じりでちょっとした小言を言うアストライアーに、エレノアは少々怒りながらも、笑って答える。アストライアーには、それが楽しそうに見えた。
 と、エレノアは何かに気がついたのか、サイドボードに手を伸ばす。どうやら飾られていた写真が気になった様だ。
「これ、なに?」
 エレノアは先ほどサイドボードに飾られていた写真をアストライアーに見せた。
 写真には、濃紺の髪と瞳を持つ学生服の少女と、その妹と弟らしき少年少女、そしてその両親らしい男女が写っていた。男性はグローバルコーテックスの社章が入ったジャケットを羽織っている。
「だれかな? アスおねーさんのおとうさんとおかあさんかな? ……あれ、アスおねーさん?」
 写真を見て気になった事を色々と言うエレノアだが、アストライアーの方を向いた彼女は、言葉を詰まらせた。視線の先のアストライアーが悲しげな表情を浮かべていたからだ。
 勿論、エレノアにはその理由が分からない。
「ねえ、どうしちゃったの?」
「……その写真の事を考えていた」
 口を開くも、しかしアストライアーは俯いた。
「その写真の真ん中に、髪の長い人が写っているだろ?」
「うん」
 確かに写真中央には、濃紺の長い髪を持つ学生風の少女が写っている。少年少女と、両親と思しき男女に挟まれて。
「それ……かつての私の姿だ」
「え〜〜〜〜〜!?」
 エレノアは驚いた。何しろこの写真のアストライアーは、長い髪に無邪気な笑みを浮かべた顔、さらに今の彼女には全く無い「女性特有の胸の膨らみ」が、学生服の上からでもはっきりと確認できたのだ。
「ホントなの!? だってかみのけがながいし、すっごいきれいなかおだし、おっぱいもおっきいし……ぜんぜんべつのひとだよ!?」
「信じられないだろうが、事実だ」
 無心に返事をするアストライアーの目はエレノアを見ていなかった。更にその言葉も、何かを恥じる様な、まるで吐き捨てる様な言い方だった。
「じゃあ、なんでいまみたいになっちゃったの?」
「……」
 エレノアはアストライアーの顔を覗き込んで言葉を続ける。
「しりたいなぁ、どうしてアスおねーさんがこうなっちゃったのかって」
「……聞きたいのか?」
 しばしの沈黙の後、アストライアーが発した問いにエレノアは「うん」と答えた。それを見て覚悟を決めたのか、アストライアーは口を開いた。
「済まない……気持ちは分かるが、それだけは聞かないでくれ。地獄が蘇る様な気分になる……」
 アストライアーの顔は何時にも増して暗かった。地獄が蘇る様な気分になると語りながらも、それを思い出すきっかけになるであろう写真を捨てずに飾っているのは、過去の戒めの意を込めての事だった。
 写真以外にも、僅かばかり残された家族の遺品が女戦鴉の周囲を囲んでいた。彼女が日常的に着用している男性用のロングコートや、懐に忍ばせた黒百合等の武器類は、父アルタイルが生前使用していたもの。自宅に置かれている家具類は母親が使っていたもので、パソコンは弟や妹が使っていたものをそのまま流用。エレノアが先程まで身に纏っていたサイズの合わぬ服は、妹のものだった。
 こうした遺品の数々も、写真と同じ理由で残していた。
 しかしエレノアにそれを知る術は無いし、知ったとしても、幼子一人でどうにかなるものでもない。
「――夕飯、どうする? 貴方が食べたいものにしようと思うのだが…」
 話題を変えるべく、アストライアーが思い出した様に口を開いた。その顔はいつもの彼女の顔だった。と言っても、エレノアは彼女の顔を昨日と今日の分しか見ていない。昨日出会ったばかりとあっては必然的にそうならざるを得ないが。
「いいの?」
 アストライアーは無言で頷いた。
「それじゃあねぇ……う〜ん……ちょうどスパゲッティがあるから、スパゲッティでいいかな?」
「貴方が良いと言うのであれば、それにするか」
 そう言う訳で、今日の夕食はスパゲッティに決定。
 何とも安直な、等と言う突っ込みはこの際不要だ。何故ならこれはエレノアが決めた事であり、それが現在のアストライアーにとっても決定事項なのだから。
 現在、アストライアーの脳内にインプットされた作戦目標は「エレノアと行動を共にせよ」と言うものであり、彼女は戦闘行動のみをプログラミングされた精巧な無人機の様に、それに従っているだけだった。
 夕食のメニューが決まった所で、アストライアーはエレノアの目の前にある引き出しからまだ細長い棒となっているスパゲッティを取り出し、鍋に大量の水を入れて、コンロを点火させた。
(この待ち時間が長いんだったな……この間に具を選ぶか)
 しばらく考えた後、野菜室から徐にニンニクを取り出して皮を剥き、摩り下ろし始める。
「アスおねーさぁん……」
「何だ?」
「ニンニクくさいよぉ……」
 エレノアが鼻をつまみながら訴えて来たので、窓を開けさせる。やはり、子供にニンニクの臭いは厳しいらしい。
(まあ大人でも、あの臭いを嫌う奴は少なくない。子供だったら尚更か……)
 化学兵器を思わせるほどの臭気が漂う中で呟きながら、アストライアーは半ば無心で、具となるマッシュルームを包丁で手早く切る。
 スパゲッティも茹で上がると、ただちにフライパンに油を引き、摩り下ろしたニンニクと茹で上がったスパゲッティ、細かく切ったマッシュルームを加熱。数分して、それを皿に盛り、刻んだパセリをトッピング。
 エレノアの食べる分にニンニクはダメかも知れないと考え、フライパンに入れずにいたパスタに、鍋に入れて加熱していたミートソースをかけてやる。
 サイドメニューにはドレッシングをかけたサラダ。これらをトレーに乗せ、エレノアが待っているリビングルームの中央に設置されたテーブルまで持って行く。
 現在時計は午後7時12分を示している。アストライアーにしては少々早い夕食であった。
「出来たぞ」
 エレノアが座る前で、テーブルにそれぞれの夕食となるパスタが盛られた皿をテーブルに置く。続いてサイドメニューのサラダ、フォーク、空のコップとオレンジジュースの入ったボトルも置かれた。
「たべていい?」
「ああ」
「それじゃ、いっただきま〜す♪」
 アストライアーが許可を出すと、すぐにエレノアはスパゲッティに飛びつく様にして食べ始めた。
 だが、フォークに巻きつけるようにしてから口に運ぶのではなく、スプーンでスープを掬い上げるのと同じ様にして、フォークに引っ掛けるようにしてから食べていたので、少々食べ辛いように見える。
「待て、こうした方が食べ易いぞ」
 その様子がアストライアーの目に留まったのか、彼女はスパゲッティを口に運ぼうとしていた手を止め、エレノアの手をとってフォークを回転させた。すると、フォークに巻き付く様にしてスパゲッティがまとまる。
「こうやって食べた方が良いんじゃないか?」
 エレノアはアストライアーがフォークでスパゲッティを纏める様を興味深く見つめる。多分、今まで路頭に迷っていた状態だったので、こうして食べる事はしなかったのだろう。
「あとは自分で出来るか?」
「うん」
 アストライアーから解放されたエレノアは、すぐさまアストライアーから教わった方法でスパゲッティを纏め、口に運ぶ。刹那、笑顔で「う〜ん」と言う声を発して軽く身震い。どうやら美味しく感じ、それを表現しているらしい。
 少々オーバーアクション気味だが、しかしそんなエレノアを、アストライアーは興味深そうに見つめていた。
「ん? アスおねーさんどうしたの?」
 そんな彼女の視線に気が付いたのか、エレノアがアストライアーの顔に目と目を合わせる。
 アストライアーは先程からスパゲッティを口に運ぶよりは、エレノアが食事をしている様子を眺めているだけだ。勿論、自分が食べる分は殆ど減っていない。
「いや……貴女が可愛いと思ってな……」
 止めよう、自分で考えて馬鹿らしく思えてきた。そんな考えと、しかしエレノアが美味しそうにスパゲッティを口に運ぶ様子を眺めながら、アストライアーも自分が食べる分のパスタを口に運んだ。


「ふあぁ……」
「どうした? 眠くなったのか?」
 夕食も済み、時計の針がまもなく午後9時を過ぎようかとしていた頃、エレノアがうつらうつらとし始めた。睡魔が襲って来たようだ。
「ねむい……もうおやすみしてもいい?」
「眠いのなら寝てもいい。と言うか、貴方はまだ子供だからな。早く眠った方が良いだろう」
 そう言う訳で、アストライアーはエレノアを寝室に連れて行く。
「ねぇ……あすおねーさんはねむくないの?」
「私位になれば夜中まで起きていても平気だ」
「そーなんだ……はやくおとなになれるといいねぇ……」
 夜中まで起床していても平気、と言うよりは、人間によっては眠る事を許されない立場の者もいると言った方が良いだろうか。パジャマに着替えるエレノアを見つめながら、アストライアーはそんな事を考えていた。
 レイヴンの中にもそうした人間がいる。アストライアーは近接戦主眼と言うこともあって有視界戦闘も多発する関係上、余程の事がない限り夜間のミッションは殆ど受けない。その為常人と同じサイクルでの生活を送る事も出来るが、中には夜間の任務を好んで受けるフクロウの様なレイヴンもいると、彼女は耳にした記憶がある。
 当然そうした人間は極端に睡眠時間を減らして、ほとんど徹夜状態か、あるいは昼夜逆転の生活を送っているのだとか。
 しかし、そうしたレイヴンの生活サイクルなどアストライアーの知った事ではない。今は彼女の目の前で眠りに落ちようとしている少女の傍にいてやること、これが今の彼女の最重要目標である。
 ただ最重要目標と言うのは、アストライアー本人が決めたものではない。再び「そうしなければならない」ような感覚が湧き上がり、それに従っていると言うだけの話である。
「それじゃ、おやすみ……」
 パジャマに着替えたエレノアは床に敷かれた布団に潜り込み、目蓋が静かに閉じた。続いて、すうすうと心地良さそうな寝息が聞こえてくる。
 無言のアストライアーは、非常に穏やかな、戦場での彼女を知る人間誰もが疑うぐらいの微笑みを浮べ、エレノアの頬に軽く触れた。この時ばかりは、初めて彼女を見る人間でも、微笑んでいる事が分かるだろう。それ位の笑みだった。
 安らかな寝顔を浮かべて夢の世界に旅立ったエレノアの頬を軽く撫でたアストライアーは部屋の照明を切り、リビングに戻った。
「お休み、エレノア……」
 アストライアーの囁く様な声と共に、寝室のドアは閉じられた。


 昨日、不意に自分の元に訪れた小さな命と自分が、果たしてどの様な生活を紡いで行くのだろうか。寝室から抜け出たアストライアーは、そんな事を己に問うていた。
 しかし、今の彼女にはそれについて有効とも思える事は一つしかない――彼女の傍に、出来るだけ居てやる事だけだった。だが、自分はあくまでもレイヴン、おいそれとエレノアの傍らに居続ける訳にも行かなかった。その上、他の同業者がこれを見たら、何をしでかすか分からない。
 それでも彼女は今日、エレノアの傍から片時も離れる事は無かった。理不尽な戦いの中では風の前の塵にも等しい、その様な甘っちょろい事が、血生臭い世界に生きる自分に何の意味があろうか、レイヴンとしてそれはどうなのか――そんな事を考える前に。
 それでも今日、十分満たされた気分になった事は確かであった。
14/10/16 11:33更新 / ラインガイスト
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■作者メッセージ
 エレノアたん(「たん」って何だ)とアス姐さんの一日なお話。
 エレノアたんの保護に気を配るあまりに過剰な反応を見せるアス姐がウリの話です(笑)

 半ば殺伐としたAC3LBですが、しかしその殺伐とした物語でこう言う日常的シーンが入るのはどうなんだ、等と当初は危惧していましたが、やっぱり入れて正解だったなと実感。
 何せ……自分で言うのもアレなんですが、書いている過程でエレノアたんは勿論、アス姐のキャラが悪くないと思えるようになったのですから(爆)。
 やはり好感度を持たせる意味でも、こう言った人間臭いエピソードは必要じゃないかと私は思っています。

■執筆経緯
 投稿前の段階では、此処はすっ飛ばしていきなり対ワルキューレ戦を執筆していましたのですが、ストーリーが進むにつれエレノアたんが絡んでくる事が多くなり、その時にぼろきれ状態(ぇ)は流石に不味いと思い、「普通の少女に近付くプロセス」的に書いてみました。
 基本的には本編とは関係なさそうなので、いっそ番外編としても良かったかも知れません。最も、この話は元々本編とは関係のない番外編として執筆していた物だったりしますが(オイ)。
 因みにその時のタイトル名は「エレノア=フェルスの新しい一日」(爆)。
 レイヴン連中が出て来ないどころか殆どACからも逸脱していて、現在との共通点と言えばアス姐がエレノアたんの親代わりになっている位。
 その後、ランカーレイヴンが落命するかも知れない(何)ほどの怒濤の日々の中で修正を行い、現在の話になってタイトルも変わってしまった訳ですが(なってしまうってアンタ)。

■文字数
 因みにここの文字数チェックで文字数を確認した所、あろう事か文字数が20000オーバー……エレノアたん愛しとは言え書き過ぎですね。
 と言うか、AC3LBは文字数の増加が凄まじい限りです。第1話が6000文字ぐらいなので軽く3倍はいってる計算に……(汗)
 第7話はメモ帳でのファイルサイズが44KBで、他の話も大体20〜30KB前後だと言う事を考えるとその長さが良く分かります。
 しかしながら、以後これほど長ったらしいサイズの奴は出て来ないハズ……だったのですが、まさかこれを超える長ったらしいエピソードの話が出てしまうとは、執筆当初は思ってもいませんでした……。

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まろやか投稿小説 Ver1.50