連載小説
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#36.悪
「はて、どいつに頼んだら良いのやら……」
 アストライアーは、レイヴンとその搭乗AC名をリストアップしたメモを片手に、ソファに腰掛けていた。
「リストアップは終わったのか?」
 近くで椅子に腰掛け、エレノアと一緒になって子供向け番組を見ているブルーネージュが横目で話し掛けてきた。
「まあ、な……」
「しかし、それで良いのか?」
 ブルーネージュがさらに尋ねる。
「確かに、直美は何をしてくるか分からない。機体自体がオールラウンダーであり、あらゆる状況下に過不足なく対応して来る。だから似たような戦闘スタイルの相手を探すというのは納得が行く」
 ちょっとごめんとエレノアに声をかけてから、ブルーネージュはアストライアーが作成したリストに目を落とす。
「……と、数秒前までは思ってたんだが」
 リストにストリートエネミーやアップルボーイの名があった事を知って、ブルーネージュはため息をついた。
「そいつらじゃ練習相手としては役不足だろう。直美はもとより、貴女と比べてランクに差があり過ぎる」
「そうは思ってたんだ……思ってたんだが……」
 アストライアーは苦い顔となった。
 実のところ、アストライアーは来るべき直美との決戦に備え、その練習相手となるだろうと思って相手候補のリストを作成したのだ。リスト入りの基準は直美のAC・ヴァージニティーと同じコンセプト――得手不得手のない、バランスタイプの中量級2脚ACを操る事であった。
 だが、リストアップされているレイヴンはいずれもアストライアーよりも格下の面々ばかりである。
 元々バランスタイプの中量級2脚は、レイヴン試験に挑む際に搭乗させられ、通過後はそのまま当人に支給される機体とコンセプトは同じ。つまり、正規の手続きを踏んだレイヴンなら誰もが一度は乗っているものなのだが、ある者は自分の得意とする戦闘スタイルに合わせ、またあるものは興味本位で手を出したら気に入ってそのまま使うようになったりで、程度の差こそあれど機体アセンブリは必ず変えてしまうため、バランス形の構成を維持するレイヴンは少数派であった。
 それに拍車をかけていたのが、バランス型のACは特化型のACに性能面で押し切られる事が多いと言う、アリーナでの戦闘結果だった。
 事実、レイヤード第3アリーナを見ても、完全なバランス型の構成と言えるACを駆るのはエースやストリートエネミー、アップルボーイと言った面々ぐらいであり、そのエース駆るアルカディアも軽量級OBコアに最高出力ブースターを搭載して機動力を高め、かつキャノン2門とスナイパーライフルによる火力も重視されている為、完全なバランス型とは言いがたい。
 その為、直美との戦いに備えての練習試合の相手となりそうなレイヴンを探すと、これが相当限られてしまっているのが現状であった。一応ブルーネージュのプレーアデスもバランス型であるのだが、彼女は2日後に依頼がある事を理由に、練習試合の相手となるのを拒否していた。
 直美との試合までは、今日を入れてあと3日。もちろんその間にアストライアーも訓練施設で練習を行うなど、出来る限りの事は行って来た。しかしながらエレノアの世話や、暴徒の鎮圧に出向かされたり、ミラージュの拠点警備に駆り出されたりしたおかげで、練習はまだ不十分だと見ていた。
 いや、直美を相手取る上で、練習に十分なんてないとアストライアーは見ていた。何せ相手は実力未知数の存在で、しかも実際に戦うまで何をしてくるか分からないのだから。
「ね、おかあさん」
 頭を抱えるアストライアーを察する様子もなく、エレノアが声を掛けてきた。何か頼みごとでもあるのだろうかと、意識を練習から切り替える。
「えいがみにいこう!」
「映画、か?」
 意外な事を言い出すんだなとアストライアーは認識したが、はて、子供が好き好んで見るような映画は何だろうかと考える。
 ただ、今は時間とアストライアー自身の精神上無理があった。見に行けるとしたら、直美との決闘後となるだろう。もちろん、生きて帰れる事が絶対条件であるが。
「何が見たいんだ?」
「『魔法少女ピクシー』!」
「ぐっ……」
 喜色満面のエレノアの前で、レディ・ブレーダーは頭をテーブルに打ち付けた。
「よ、よりにもよってそれなのか……」
 アストライアーは頭を抱えた。いくらエレノアの頼みとは言え、破壊・暴力・流血沙汰・強欲・強奪・裏切りと言った人間の暗黒面が跋扈する世界に生きる自分が、よりにもよって愛・友情・希望・夢と言ったものをテーマにした子供向けアニメ番組の劇場版なんぞを見なくてはならないのか。
「……おかあさん、だいじょうぶ?」
「大丈夫だ、少し力が抜けただけだ」
 エレノアに心配はかけまいと気力で体を起こす。
「でね、『魔法少女ピクシー』みたいの。だめかなぁ……?」
 まるで言えば従ってくれるだろうとの期待を丸出しに、目を潤ませて頼んでくるエレノアを前に、アストライアーはとてつもなく心が痛んだ。
 ここで断る事は簡単だが、そうなるとエレノアを泣かせる事になるかも知れない。だが、だからと言ってエレノアの頼みを断るのも悪い話である。
 しかしながら、アストライアー自身はそれを良しとしていない。寧ろ、強く否定したい気分であった。
 裏切りが横行するレイヴンとして生きていた事もあり、彼女にとって愛や友情、希望や夢と言った子供向けの露骨なメッセージで塗り固められた子供向けアニメは、壮大で醜悪な、吐き気すら催す詐偽も同然と映っていたのだ。
 そういう価値観があり、あの魔法少女のアニメは生理的に許容出来ない。見たら最後、頭が不快感でどうにかなってしまいそうな気配がある。得物の黒百合を振り回し、登場人物から観客に至るまでを斬り殺しかねない――それほどに不愉快な存在であったのだ。
 現在は管理者実働部隊の襲来に伴う破壊、都市機能を管理する各種システムのダウン及び暴走と、その影響が、レイヤードのほぼ全域で何かしらの形で表になっている。そんな有様なので、省エネなどの観点から、とてもアニメなど流していられる情勢下ではあるまいとアストライアーは見ていた。
 彼女に限らず、ここ最近のトレーネシティでは映画やアニメなど娯楽番組を流す必要性についてしばしば新聞や雑誌で取り沙汰され、その都度ライターや取材した識者の見解が分かれている。だが配給会社及び映画館はそれにも関わらず、「こう言う時こそ安らげたり、心を落ち着ける娯楽が必要である」との主張を一貫しており、放映・上映を続けているのが実情であった。
 この決断は賛否両論あれど、今の所大きな問題にはなっていないが、アストライアーは(あまり露わにしなかったとは言え)不快感を抱いている上、そんなものに現を抜かしている場合などではないと言うのが言い分である。
 そして、その理由として挙げられたのが、直美の存在だ。
 彼女に対する対策を練らねばならないし、まだまだ練習も行う必要がある。子供向けアニメの劇場版などにかまけている場合ではないし、それを見に行くかどうかを悩んでいる場合でもない。そして、その間にも貴重な時間はどんどん磨り減っていくのである。
 そうかと言って、エレノアを放置しておくのも我が意とするべきではないのも確かであった。
 しかし、現状を打破するに当って有効な考えが思いつかない。進退窮まったが如き気分にさせられ、レディ・ブレーダーは依頼での即断が嘘のように悩み苦しんだ。
「おかあさん……?」
 ジレンマに苦しむ義母を、エレノアは怪訝な面持ちで見ていた。
「悩んでいるようだな、相当」
 ブルーネージュはあくまでも冷静であった。
「あたし、どうすればいいの? どうすればおかあさんをもとにもどせるのかな?」
「戻す、か……」
 当のエレノアがそのアストライアーを悩ませている事は、ブルーネージュには明確であった。だが、それを言ったらエレノアが悲しむか泣くかするのは想像に難くない。この場合、エレノアには悪いが沈黙が最善であるとブルーネージュは見ている。
 その間にもアストライアーはジレンマを深めていた。しかもそれは、BB抹殺前、エレノアが居なくなった挙句に直美に負け続けた時の悩みがそうだったように、徐々に深みにはまり始めていた。
 だが、ブルーネージュの言葉が、アストライアーを思考のスパイラルから引き戻す。
「深く考えるな。貴女が己を見失ったら、エレノアはどうなるんだ?」
 そうだ、自分を捨てない事、曲げない事がエレノアを守る事に繋がると考え、そしてあの日誓ったはずではないかとアストライアーは思い出す。だから、拒むべきものは拒む姿勢でも構わないのではないか、とも。
 だが、その後でどんな嫌な顔をされてしまうのだろうかと不安はある。しかし、直美との決闘を控える中で、これ以上この問題を引き摺るわけにもいかない。
 ジレンマに陥り、レイヴンたる自己と娘で板挟みになった挙句、最早これまでとばかりにアストライアーは叫んだ。
「ごめん! アレだけは勘弁してくれ!!」
 自分の目の前で土下座する母に、エレノアの目は丸くなった。そして、それが自分の頼みの拒絶であることも、幼心ながら知ってしまった。
「どうして?」
 疑問が口を付いて出るまでは時間を要さなかった。
「私は……」
 あまり出来の良くない頭脳ながらも、アストライアーは必死になって拒否の口実を搾り出そうと頭をひねる。しかしそれは難しいことであった。何せ子供でも納得の行く事を、傷付けないように話さねばならないのだから。
 もしここで個人的感情をぶちまけたら、エレノアとの関係に巨大な溝、百歩譲って亀裂が生じるだろうとアストライアーは恐れていた。そんな状態を引き摺ったまま直美との戦いに臨むのは得策ではない。
 それだけはならない、何とか回避しなくてはと無い知恵絞って考えるアストライアーであったが、幸いにも言い逃れの術はすぐに浮かんでくれた。
「私は……その『魔法少女ピクシー』においては……悪い奴らなんだ。悪の魔女に操られて、ピクシーとその仲間と戦わねばならない立場だ。だから、ピクシー達の姿は見るのも辛い。苦しいんだ。私が悪だから」
「そんなことない! おかあさんはわるくないよ!」
 エレノアはそう母を庇い立てするが、しかしその母はもはやどれだけ手に掛けたか分からぬ犠牲者の血で染まり切っている。同じ依頼を受けたレイヴン達も、既に両手足の指の数でも数え切れないほど殺している。悪くないどころか、第一級殺人犯で死刑になっても何ら不思議はない。それにもかかわらず活きているのは、レイヴンと言う超法規的な立場にあるからである。
 とは言えレイヴンが超法規的なのはAC搭乗時に限られており、ACに搭乗していない時に犯した犯罪行為は通常通り裁かれる。
 殆どは自分の身を守る為に行った事とは言え、意趣返しや刺客を返り討ちにして殺し、それ以外にも一部生理的嫌悪感や憎悪に駆られての凶行もある。それらは人目の付かない所で行われ、決して表沙汰にはならなかったが、そうした殺人が露見したなら最後、アストライアーは重犯罪者としての厳罰は免れ得ず、それは死刑、万一それがなかったとしても終身刑か超長期――少なく見積もっても数百年単位以上の懲役刑を意味している。
 これらは、幾多の刺客や同業者を闇へと葬って来た当人が一番良く分かっている事であった。
「エレノア……優しいんだな。こんな私を悪くないと……」
 片膝をつきながら娘の方に手をやり、アストライアーは微笑した。
「だが、レイヴンは悪い奴らばかりで、私はそいつらの仲間――いや違うな、同類になってしまった。だからピクシーの前に出たら、私は消されてしまう」
「たいじされちゃうの?」
「多分……な」
 現実と虚構をない交ぜにするべきではないが、しかし他に自己主張の正当化にあたり、適切と思える事柄がアストライアーには思い浮かばなかった。
「レイヴンは基本的に悪人だからな……貴女を連れて来た奴等もそうだっただろう?」
 エレノアは否定も肯定もしなかった。思い出したくはないが、自分を勝手にアストライアーから引き離した連中はそう言った奴等だったからだ。その時はBB配下の女性が面倒を見てくれたおかげで、エレノアはアストライアーの元に居た時と大して変わらぬ水準での生活を送ることは出来たのだが、言う事を聞かなかったが為に、BBに殴る蹴るの暴行を加えられた事もあった程だ。
「でもなおみおねえさんはいいひとだったよ? れいぶんだけどいいひとだったよ?」
「直美は別格だ」
 エレノアが受けた仕打ちを知らぬながらも、直美を他のレイヴンと同一視するべきじゃないとアストライアーは言う。
「直美は悪党や管理者の手先である悪魔達を倒す立場だ。きっとピクシー達と出会ったなら、彼女達を手伝う事だろう」
 あの女の性格上、有り得ない事ではないとアストライアーはつぶやいた。
「兎に角、私はピクシーの敵なんだ。だから彼女達の映画を見る事は出来ない」
「じゃあ……」
 しょんぼりした様子でエレノアが尋ねてくる。
「じゃあ、どうしておかあさんはあたしにやさしいの?」
 悪い奴らの側にいるんだから、優しくは出来ないのにどうして出来るのだと、幼い瞳が残酷なまでに追及してくる。
 だが、それに対するアストライアーの答えは明確だ。
「貴女のおかげだ」
 エレノアはまだ分からないと言った様子である。
「貴女が、私をどす黒く辛気臭いレイヴンの世界から引っ張り出してくれたんだ。分からなかったかも知れないけど、貴女は私を助けてくれたんだ」
「あたしが?」
 そうだとアストライアーは頷く。
「多分これは、貴女にしか使えない魔法なんだろう。それも相当強力で、もし私が貴女を見捨てたりするような事があったら、私の中に居る貴女が泣く。それがとても苦しくて辛い」
「そうなの?」
「ああ。だが、私がこうして貴女と一緒に居て、笑ってくれたりすると私の中の貴女も笑ってくれるんだ。そうするとな、不思議な事に私も元気になれる。だから、貴女を守ってやる事が私の使命だと思っている。貴女に優しく接しているつもりなのも、その為だ」
 言い訳しているアストライアーが苦笑しているように見えたブルーネージュだったが、黙っておく事にした。これは2人の問題であり、自分が介入するべき事ではない。
「そうなんだ……」
 エレノアが何を感じているのか、アストライアーには分からなかった。聞く事も出来たが、何を言われるかが恐ろしくてそれも出来ない。
「あたしだけのまほうなんだね」
「そうだ、貴女だけの魔法だ。しかもそれはピクシー達でも使えないぐらい強力なやつだ、何せ悪の化身であるレイヴンを優しくさせているのだから」
 うまく口では言い表せないが、つまりはそう言う事だとアストライアーは締めくくった。内心では「頼むからそういう事にしてくれ」と思ってるだろうなとブルーネージュは考えたが、口には出さない。
「じゃあさ……」
 エレノアが突然、アストライアーの前で踊るような動きを見せると、なにやら理解に窮する言葉を口にしだした。
「えいっ!」
 何をしているのかと口にしかかったアストライアーだったが、踊るようなしぐさを終えた途端、声を張り上げたエレノアが、母目掛けて両腕を伸ばし、大きく開かれた小さな手を突き出した。
「……何をした?」
「まほうをかけたの」
 無邪気な笑みを浮かべながらエレノアが話す。
「……おかあさんがこれからもずっとやさしくいてくれるようにね!」
 ああ、そういうことだったか! 無垢な幼女が見せた一連の動作を、その一言で全て理解したアストライアーだった。
「そういうことなら……これからも変わらないさ。いや、変えてなるものか……」
 エレノアの頭を撫でながらアストライアーが優しく話す。こればかりは嘘偽らざる本音である。
「でもピクシーだけは勘弁してほしいな。エレノアと一緒に居られなくなってしまうかも知れん」
「うん……そうだね。おかあさんがダメならしかたないよね」
 母の気持ちを察して無理は言えないが、それでもちょっとしょんぼりするエレノアであった。
「……まあ、ごめんとは思ってるんだ。代わりに、どこかに連れて行こうかなって思ってるんだ」
 もし、直美との決闘で生還出来たらの話だが。
「どこに?」
「……あなたが行きたいと思った場所で良い」
 ピクシーが出てこないような場所であれば構わないと釘を刺した上で、エレノアに全部をゆだねようとアストライアーは言う。
「うーん……どこにしよう?」
「すぐに決めなくて良い。明日あさってに行くってものではないからな。依頼とかがない時に言ってくれれば良い。それまで、ゆっくり探してな」
「うん、そうする」
 エレノアからはそれ以上、特筆するような事やアストライアーの精神を無知のうちに甚振る様な言葉は出なかった。そして、娘との関係悪化を懸念していたアストライアーも、それが杞憂で終わったとようやく肩を撫で下ろせた。
 今、アストライアーは何とも臭い作り話、根も葉もない幼稚な嘘だと思っているだろうが、これはあながち間違いでもないなと、諦観しているブルーネージュは思っていた。エレノアが、女剣豪に降りかかって来た幾度の危機と苦難を切り抜ける心的な原動力になっていたであろう事は、彼女には既知であるからだ。
 しかも、これらはレディ・ブレーダーが普通にレイヴンをやっていたならば、まず有り得ない事であった。その彼女が、こうして魔法でもかかったかのようにエレノアに優しく接していられたのだから、まるっきり全否定するのも惜しい所である。
 とは言え、ブルーネージュとしては全く言いたい事がないわけでもない。
「……ちょっと苦しい言い訳だったな」
「言わないでくれ」
 エレノアが居る所で聞き苦しい話はやめてくれとアストライアーはぼやいた。
「しかし、貴女も随分と変わったものだ。以前なら見向きもしなかった子供向けアニメの劇場版一つで、あそこまで悩むとは予想外だった」
「何とでも言え」
 力のない声で返されてしまったが、昔の貴女とは比較にならぬほど人間臭くなったなと、ブルーネージュは遠い目で呟く。そこまで真っ直ぐと言うか本気と言うか、そういう姿勢では苦労も多かろうと思いながら。
 いや、そもそもブルーネージュが見て来たアストライアーは、冷徹ではあるがBBへの復讐にしろ何にしろ、基本的には一度決めた事からはわき目も振らず、ブレる事もなく真っ直ぐ突き進んでいく性分であった。それこそ最早頑固者と断言しても良いぐらいには。
 その性格ゆえに部分的に融通の利かない所もあったが、ブルーネージュにそれを咎める気はない。
「……だが、そんな貴女を悪くは言うまい」
 その囁きは、エレノアを構いだしたアストライアーには届かなかった。「勝手にしてくれ」とでも返されてしまうだろうかと考えれば、それでも構わぬ所だったのだが。
 しかしながら、困難や刺客、強敵から逃げることなく、愚直なまでに真っ直ぐ挑むその姿勢は羨望に値すると、前々からブルーネージュは思っていた。状況を判断しながら的確に立ち回り、しかしBB一派に降る事になった自分には決して出来ぬ事だと感じながら。
 そんな戦友は、今、外見から察して恐らく5〜6歳程度の幼女に翻弄され、時に庇い、時に力としながら共に生きている。この、血の繋がりがないながらも奇妙なバランスで成り立っている親子が、果たしてどんな関係を続けていくのか、ブルーネージュは興味を抱いていた。
 その為には、代役や戦友への助力等、無関係であるはずの自分がしなくてはならない事も多いだろうと溜息をつきながらも。
 しかし、今は今でこの親子に口出しせずに居るとしよう。ブルーネージュはそう、心に決めた。
 何せ次の相手は第2のイレギュラーである。幾らアリーナでの決闘とは言え、エレノアの元に生きて帰れる保証はないのだから――
16/05/21 18:29更新 / ラインガイスト
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■作者メッセージ
 ある理由で以前投稿していたもののプロット破棄して軌道修正するのがこれほどまでに大変だったとは……。
 安易な気分で主人公死なそうなんて思うもんじゃないですね。

 本作で何が苦労するかって言うと、AC同士のバトル以前にエレノアたんの描写だったりします。
 勿論AC同士のバトルにしても、スピード感と場面描写のし易さの両立や、相手との決着の落とし所、そして投稿後に冷えた頭で見返して些細なミスに気づいての赤っ恥(滅)と、まあいちいち骨が折れるのも確かなのですが、正直エレノアたんの厄介さはそれ以上。
 言葉遣いはもとより、「わからないことや自分が好きなことを遠慮も何もなく口に出してアス姐(ついでに作者)を翻弄する」という所がなんとも厄介。それで居て子供っぽさを出さねばならんのですからもう……。
 そんな訳で今回のアス姐は、ある意味作者の苦しむ様子の投影になってしまいました。

■魔法少女ネタを否定した理由。
 さらに輪をかけてほめられたものではないのが本作の執筆経緯でしょう。何せこの話、アス姐から魔法少女ピクシーネタを完全に切り離すべくこさえたものなのですから(ぇ)
 理由は長くなるので端折りますが……いつぞやみたいに変に魔法少女ネタをアス姐に被らせて、キャライメージを著しく損なうのは勘弁してもらいたいなと。
 ネタバレになるので詳細は伏せますが、そう言うのが無いのが、後で物語の意味キーポイントになっているのです。

 そんな訳で、魔法少女ピクシーネタをアス姐からシャットアウトするため、「子供番組が大嫌い」という新設定を追加し、急遽本作をこさえる運びとなりました。

 タイトルは……まあアレですね。アス姐の立場そのまんまという事で(良いのか)。
 だってアス姐は善悪無関係どころか、レイヴンでなかったら連続殺人犯ですよ?(言い過ぎ)。

 しかし、今更ながら言うのもあれですが……アス姐、随分饒舌になったもんだなあと思う。
 同業者に対しての基本姿勢は相変わらずですが……(苦笑)

 ちなみにこの話、ボツにした話のページを再利用する形で投稿しているので実際の投稿日時とずれが生じています(2013年12月7日投稿)。
 以降もしばらくこの状態が続くので、念の為。

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まろやか投稿小説 Ver1.50