連載小説
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#10:バグ・ハンティング -混沌の狩場-
「ハインライン、補給の手配は出来るか?」
 向かってきた3匹のベルゼバブを連射モードのブリューナクで撃ち落し、クオレは尋ねた。
「可能です。ただし戻って来たイェーガー達でハンガーが塞がっています。若干時間を待たねばなりません」
 人員と機体がフル稼働状態じゃ仕方ないかとクオレが諦めた瞬間、バルカンが横から飛んで来た。ACのみならず各種ACBにも搭載されるフォースフィールドでダメージは抑えられたが、被弾してフィールドが一時的に弱くなった部分の装甲が破られる。
 そしてクオレは、ドラグーンフライが襲来して自分の周囲を目まぐるしく飛び回り出したのをレーダーで認識した。そして、先のバルカンの出所が彼等である事を即座に理解した。
「またか!」
 いい加減、クオレはうんざりしていた。高機動性ゆえにとにかく鬱陶しい上、量産機だけに何度撃墜しようともドラグーンフライはしつこく出て来る。
 憤懣やるかたない声と共に、拡散モードに切り替えたブリューナクが火を噴いた。翼を吹き飛ばされ、本体を損傷したドラグーンフライは煙を吹きながら高架道路の支柱に激突し、爆発。ぶつかられた支柱は揺らいだが、一部が削られただけでひび割れは起こさなかった。
「ベルゼバブといい、今のドラグーンフライと言い……何で俺はこううざったい連中にばっか当るんだ?」
「そこまでは分かりません」
 運が悪いとしか言えないとハインラインは思ったが、悪運を理由にケチつけられるのも好ましい事ではないと感じているので、押し黙る。
「しかし、撃墜してしまうのですから結局同じなのでは?」
 それもそうかとクオレは返すが、メインモニター端に表示されたエネルギー残量がオレンジ色に変色し、音を上げた。燃料切れではない、スティンガーもAC同様、コンデンサに蓄積されたエネルギーで行動の多くを賄っているが、そのエネルギー蓄積残量が少なくなっていたのだ。やむなくクオレはエネルギー回復のため、スティンガーを一時停止。ブリューナクへを一時的に停止状態にし、機体をアイドリングモードに切り替えた。
 スティンガーをはじめ、殆どのACBにはACのような独立したジェネレーターは搭載されていないが、戦闘機同様、エンジンに発電機――ACで言う所のジェネレーターが直結されているため、ACのようにブースト移動でエネルギーが消費される事はない。いや、消費はするが、ブリューナクやフォースフィールド発生装置、生命維持装置や各種電子機器の消費量を含めたとしても、パイロット――少なくともクオレの気にはならないレベルである。
 さらに、スティンガーはACよりも一回りは小柄かつ軽量なので、その分必要なエネルギーはACと比較すると少ない。武装こそ両手に搭載できるものに限定されているが、無駄な装備がないぶん、エネルギー効率もACと比較してかなり高い。データによると、非武装時のスティンガーのエネルギー消費量は、AC用旧式ジェネレーターCR-G69装備時で余剰出力4000台を叩き出すほどであった。これは並みの逆間接ACをも上回る省エネ性である。
 しかも、スティンガーは双発機であるため、同時に2つのエンジン内臓発電機を使える事になり、ACではしばしば起こりうるチャージング自体、滅多にない。少なくとも、ACで問題なくエネルギー管理が出来ているパイロットであれば、まずチャージングになど陥らない。バッテリーがある事を言い含め、エンジンが停止しても当面電力には困らないのである。
 事実、クオレのスティンガーは停止から4秒でコンデンサ容量を完全回復させていた。そうなればすぐに立ち去るべきだったのだが、背後でコンクリートやアスファルトが砕ける音、そしてレーダー上の赤い反応が出現したため、再度使用可能状態にしたブリューナクを向ける。スティンガーを餌と判断したのか、全長5メートル強のグラトンワームが這い出し、口を大きく開いて粘液塗れの醜悪な牙と、気色悪い以外に適切な形容詞のない赤黒い口の中を曝していた。
 すぐさまブリューナクが火を噴き、開いた口を頭もろとも炭化させた上で吹き飛ばした。続けざまに現れた2匹も、同じように苦もなく倒す。
「そう言えばハインライン、アニマドは今どこで何やってんだ?」
「君から見て、南南東・方位160の地点を東に進んでいます。距離14キロ、港湾区画に向かって――」
 通信を遮り、外部週音システムを介しての銃声がクオレの鼓膜を刺激した。
「くそッ!」
 レーダー確認が遅れたと、弾幕に晒されたクオレは舌打ちしながらオーバードブーストを起動、その場を急速離脱しに掛かった。
 冷や汗を垂らしながら、まずいと呟いたクオレはひたすら背後から迫る弾幕から逃げた。ハインラインもそれが正しいだろうと見ていたので、あえて何も言わなかった。
「お前も此処で殺してやる……」
 憎悪以外の人間性を著しく欠いた低い声と共に、黄色と黒の警戒色の迷彩模様が入った重量級4脚ACが、クオレ機の後方に倒れたビルの瓦礫を乗り越えて現れた。その両腕には人間の指の配置を模したユニークな特徴のマシンガンが握られ、肩にチェインガンとミサイルを搭載している。
「……俺が今まで殺して来た奴らと同じようにな!!」
 声の元である重量級4脚ACが飛び上がった。
 それはバレットライフという、24時間戦争時代のACだった。それは即ち、バーテックス、アライアンス、第三者勢力――そもそも武力抗争に加担したかどうかを問わず、レイヴンを片っ端から虐殺していた事で悪名高いリム・ファイアーが、復活していた事を意味していた。事実、バレットライフのコアの正面には、機械生命体軍団のエンブレムであるどす黒い地球が描かれている。
 ジナイーダと同様、復活させられた彼も憎悪以外の人間性を書き換えられており、結果、24時間戦争時代に見られた見境のない凶暴性だけを増大させられた殺戮マシンと化していた。
 もしこれが、レイヴンだけに留まっていたならば、世界各地でアンチ・レイヴンが叫ばれる今、ある程度は容認・許容されていた可能性もあっただろう。しかし、リム・ファイアーの攻撃衝動は、今や無抵抗な人間にさえ向けられており、ジナイーダ同様、無差別大量殺戮者としての悪評はもはや拭いようのない所となっていた。
 事実、彼の通って来た後では大勢の市民がペースト状の肉塊やバラバラ死体にされ、救助用のMTや救急車、重機等が悉く破壊されていた。さらに、付近を通りかかった救急車がチェインガンで粉砕される。
「殺してやる……殺してやる! 殺してやる!!」
 クオレに届く、リフレインされる殺意のみを乗せた声が、リム・ファイアーの捻じ曲げられて歪みきった人間性を如実に現していた。その声と共に、中空から凄まじい弾幕の嵐がクオレに襲い掛かった。しかし、クオレ駆るスティンガーは持ち前の機動性により、苦もなく弾幕を振り切って見せる。
 さらに、クオレはブリューナクを収束モードにチェンジ。エネルギーを充填し、その出力を高めて行く。コンソールに、パーセント表示されたエネルギー充填率が表示されるが、弾幕を掻い潜るのに忙しいため、そこまで注意が行かない。
 フォースフィールドである程度遮られているのは幸いであるが、その凄まじい弾幕をまともに浴びれば、フォースフィールドでさえ、押し切るように突き破られてしまう程の火力がある。これがスティンガー等、機体そのものの防御が脆弱な機種にとっては致命的であった。
 スティンガーは火力と機動性こそ高いが、半面防御はフォースフィールド頼みであり、それがなければAC搭載用のライフルやハンドガンにも簡単に破壊されてしまう程度の耐久性しかない。マシンガンの一斉射に晒されようものなら目も当てられぬ結果になる。
「殺してやる!」
「うるせぇんだよ、テメェは!!」
 ファシネイターに一歩劣るとはいえ、24時間戦争時代にはすさまじい弾幕で畏怖された機体を前にしても、ハインラインが見ているクオレからはまったく畏怖が感じられない。
 と言うのも、バレットライフの戦い方は、36年前と全く変わっていなかったのである。この辺はファシネイターと通じる所があるが、バレットライフの場合は機体重量が重い為、中空に浮かんでいる間は著しく機動性が落ちるという問題があった。
 そして、ハインラインは勿論、クオレはその弱点を良く分かっていた。それが、オーバードブーストで再び距離を離し、機敏な切り返しで有効射程を外れた弾幕を逸らす様子に現れている。チャージ継続中のビーム砲に電力をとられてしまっているが、レーザーキャノンとレーザーブレードを欠かさず装備するグラッジパペットで慣れている手前、エネルギー兵器を抱えたままでのオーバードブーストや回避行動などクオレには朝飯前だった。
「ハインライン! エネルギーチャージが140%になったら教えてくれ!」
 了解とだけ返すと、ハインラインは手元のコンソールを切り替え、クオレ機のステータス表示に切り替えた。破損状況や通信状態、残り燃料やブリューナクのエネルギーチャージ状態などの諸情報が、スティンガーのCGモデルに重なる形で表示される。
 ブリューナクのエネルギー充填は、121%を示していた。
「あと10秒、と言った所でしょうか」
 ブリューナクのチャージスピードを知っているハインラインなので、目標到達までの時間を推測するのは容易なことであった。それまでの間なら、幾ら血の気が多く激情家であるクオレでも、易々とは死なないだろう。
 唯一気をつけるべきは、クオレのスティンガーには今、ブリューナクしか射撃武器がない事にあった。至近距離で連射の利かない収束モードのブリューナクと高速連射を可能とするマシンガン2丁が撃ち合えば、ダメージレースでクオレが撃ち負けるのは、ハインラインの目には明確であった。かと言って、近距離での射撃戦を得意とするバレットライフに対し、ハードフィストで殴りかかるのは愚の骨頂である。
 とは言え、それが杞憂であった事はすぐに分かったのだが。
「充填140%です」
「よし!」
 退き続けていたクオレ機が前進に転じた。
 その間にもエネルギー充填率は徐々に増して行き、ロックオン可能範囲に到達したころには142%に達した。だがクオレはそこまで見ていない。彼が見ているのは、バレットライフの動きのみだ。
「殺してやる! 俺が今まで殺して来た奴らと同じように!!」
 バレットライフが歓喜に咽ぶかのように、射程内に戻って来た獲物へと銃撃を見舞う。
「そりゃ――」
 クオレはスティンガーを横飛びさせ、同時にファイアーボタンを押し込んだ。
「――テメェに言うセリフだ!!」
 ブリューナクから一筋の強力なビームが迸り、バレットライフのコアに突き刺さった。収束された光の束は装甲をFCSやジェネレーター、更にはコックピットブロック内の頭脳ユニット諸共ぶち抜き、燃料タンクをも貫通して大爆発を誘発した。バラバラに吹き飛んだ脚の一本一本が瓦礫やビルの天井に落ちていく。
 クオレはスティンガーに頻繁に乗っているわけではない。だが、ハンター仲間から、バレットライフのコアをブリューナクで一撃必殺可能になるのに必要なエネルギー充填率は聞いている。エネルギー充填に要する電力と、その間の出力低下に伴う機動性への影響を考慮した結果、140%程度で十分と言う結論がハンター達の間で言われるようになり、クオレもそれを踏襲したのだった。
 もしこれが、中量級コアCR-C89Eと中量級腕部A09-LEMUR2、中量級脚部LH07-DINGO2のオラクルであれば、エネルギー充填80%程度はあれば、コアを一発で撃ち抜けるレベルである。そのため中量級コアに中量級腕部と、同クラスのバレットライフも同程度のチャージであれば破壊できるとされていたが、4脚の特性である高エネルギー防御性能はこのACも例外ではないため、結局、余計にエネルギーを充填する必要があった。
 ちなみにブリューナク自体は、エネルギーを収束して発射するので充填率は100%を超える事が当たり前になっている。だがあまりに過度なエネルギー充填をすると、今度は砲身自体にダメージが及んだり、最悪エネルギーオーバーフローによる自爆を起こしかねない。そのため安全装置が設けられており、200%以上は充填しないよう、チャージリミッターが設けられている。それ以上のエネルギー充填も理論上は可能だが、安全性の観点から行うパイロットは極めて少数である。
 クオレもまた、安全性を考慮してブリューナクの酷使は避けていた。
「やれやれ、レイヴンとクソッタレのジなんとか位に留めときゃ、こんなマネなんざせんでも済んだものを……」
 そのクオレが、もう木っ端微塵にされたバレットライフに向けて毒づいている。
「今の時勢だったら、レイヴン専門のハンターとしてやっていけたろうに……クソッタレのド畜生女なんかと同列になりやがってよ! このクソッタレのマシンガン馬鹿が!!」
 世界各地でレイヴンの存在を認めない風潮が漂う現在なら、リム・ファイアーであれば多少は評価されていたかも知れなかった所だろうが、しかし機械生命体の一員――と言うよりは、憎んでやまぬジナイーダの同類になり、各地で破壊と殺戮を繰り広げている以上、同情などクオレにはなかった。彼にとって、ジナイーダとそれに関わるものは、否定されるべき存在であり、破壊による抹消を施す以外に何ら存在意義を見出せない。
 だがブリューナクの残り少ないエネルギーを酷使したのは確かであり、残りエネルギーはこの時点で14%にまで低下していた。
「クオレ、航空隊にインファシティへの出撃命令が出ました」
「おい、正気か!?」
 クオレは我が耳とハインラインの言葉を疑った。だが冷静に考え、自分とは頭の出来が、まともな方向に置いてまるで違うオペレーターが嘘や冗談を言うとは思えなかったため、疑いはすぐに上層部へ転じられた。
 クオレが知る限り、市街地に侵入したモンスター相手に航空機が出向く事は少ない。ACやACBと比較し、総じて足の遅い生物兵器とその成れの果てに対し、航空機はスピードが災いして市街地を飛行する事に激しく難がある。衝撃波で窓ガラスや看板が壊れ、街路樹や備品などが吹き飛ぶ事も珍しくはない。そのためビルの隙間に入られればお手上げ状態と言うのが実情で、無理に攻撃しようとして誤爆を起こすケースもしばしば見られる。
 ゆえに航空機がモンスター相手に出撃するとすれば、大抵は遮蔽物となるビルがない荒野や草原が主であり、市街地への航空部隊投入は滅多に行われなかった。
 故にクオレは理解に窮したが、ハインラインによると、モンスターがあまりにも大量に押し寄せて来た為、ダビッドソン少佐もACやACBだけでは無理があると判断、止む無く出撃を命じたとの事である。
「大丈夫か? 相手はモンスターだぞ? しかも住人もどれ位避難できているか分からん有様だ」
「私もそうは思ったのですが……」
 上からの命令なので私も逆らえないと、ハインラインは言葉を濁した。
「ただ、武器はミサイルがメインであり、先の機械生命体追走戦のような爆装はしないでの出撃です。投下型爆弾の類も恐らくはないでしょう」
「なら良いんだけどよ……」
 クオレは腑に落ちなかった。やはり、市街地を這いずり回るモンスター相手に航空機を動員する事には、どうしても納得がいかない。これがアースガルズ大陸であれば、国土が広く郊外の荒野や草原地帯からモンスターが現れるケースが多かったため、航空機部隊出撃にも理解は示せた。それに、インファシティ郊外は草原地帯や荒野、森林が広がる為、そこのモンスターを駆除しに行くと言うのであればまだ納得が行く所である。
 だが今回はインファシティそのものへの出動であり、クオレとしては納得の行く話ではない。
「考える所は私も君もあるかと思います。ですが、今は……」
「わぁってる」
 気のない返事をクオレは返した。都市部での航空攻撃の是非を考えるよりも先に、さっさと戻ってきて補給を受け、また化け物退治をやってくれとハインラインが言いたいのだと分かったので、とりあえず基地に戻る足を進める事とした。
 確かに、考えに耽って足止めしても仕方がない。今この時も、どこかでモンスターによる犠牲者は出ているであろうから。こうなるとクオレとしては、誤爆をやらかさないでくれと航空隊に頼むように祈るより他ない所である。
 だが、瓦礫の隙間から粘液が飛び出した為、クオレの注意は反射的にそちらに向いた。粘液はスティンガーに掛かることなく、10メートル先の倒壊寸前のビルの壁面に当り、白い煙を上げる。
 咄嗟にクオレが砲口を向けた先で、血液がそのまま動いている様な不定形の生命体が、瓦礫の隙間より這い出した。
 それは、ハンター達から「ブラッディスライム」と呼ばれている怪生物だった。例によってこれも、生物兵器が脱走し野生化した成れの果てである。
 獲物の血を取り込んだことで赤く染まったその身体は、クオレが見る限りでは直径3メートルほどに広がり、ゼリー状になった中心部がドームの様に盛り上がっている。無色透明ではないので内部の様子は分からないが、恐らく中は生者・死者無関係な人体や化け物の肉、そして棄てられたままのゴミが溶けた混ざり物が渦巻いているに違いないとクオレは察した。
「蟲の次に……よりによってコレかよ!?」
 クオレは苦い顔となった。彼が(そしてハインラインも)知る限りでは、ブラッディスライムはアメーバ状の身体だけに致命傷を負わせるのが極めて難しく、しかも再生力が強い為僅かな断片からでも自己を複製してしまうほどである。
 過去、クオレはグラッジパペットでこの化け物に何回か遭遇・攻撃しているが、今見ている直径3メートルクラスのものでさえ、マシンガンを幾ら撃たれても平然としており、レーザーキャノンを何度も照射しやっと始末できたと言う有様であった。また、同業者がグレネードを撃ち込んで吹き飛ばしたものの、飛び散っていた破片のいくらかが焼け残り、後に小さなスライムとなって活動・増殖を始めたと言う、笑えない話も聞いていた。
 クオレが知る限りでは、ブラッディスライムを撃破するにはレーザーやプラズマ等の非実体兵器、あるいは高熱兵器――ACで言うならば火炎放射器やナパームロケット等で焼き尽くすか、酸や化学薬品で細胞組織そのものを破壊するしかない。一応、液体窒素で凍結させた後に焼却処分した話も聞いている。
 ブリューナクでも始末出来るとは知っていた為、クオレはまず、ダメージを見るために連射モードに切り替えて発砲した。だが案の定、ブラッディスライムは体表のいくらかを焼かれながらも活動を続行していた。
 そのクオレを獲物と認識したのか、或いは自己の生存を脅かす外敵と判断してかは不明だが、ブラッディスライムは赤く毒々しい泡を、クオレ機目掛けて噴出した。泡と言っても粘液塊だが、その中には酸も含まれているため、喰らえば当然スティンガーの装甲にダメージが及ぶ。クオレ機は泡を喰らうまいと、ブーストダッシュでその場を離脱した。
 ACよりも一回り小柄なスティンガーだが、搭載されたACB用ブースター・エッジB-T221は、燃費重視型とは言え巡航時においても時速380キロと言う、現行の中量級2脚ACクラスの速度を発揮する。おかげでスライムの泡を回避するには全く困らない。
 バーテックス戦争時代は、当時の主力兵器であるACは時速500キロが出なければ遅いと言われており、エッジB-T221搭載時のスティンガーもそれに倣い、最大出力で時速550キロを出せるし、オーバードブーストも起動すれば時速700キロ台を容易く叩き出す。だが燃費・旋回性・パイロットの対G性、そして都市部での高速移動に伴う衝撃波による周辺被害など、様々な問題があるため、そこまでの速度を出す必要性は薄かった。
 何より、ブラッディスライムの赤い毒泡を回避するに、ピーク速度は必要ない。
 お返しだとばかりに、クオレはスティンガーを集束モードに切り替え、エネルギー充填率25%で発射した。光線をもろに浴びたブラッディスライムは半分蒸発させられた格好で、瓦礫の中に引っ込んでいく。
「逃がすか!」
 クオレは再びエネルギーをチャージ、充填率23%のブリューナクで瓦礫を吹き飛ばし、赤い不定形生命体に止めを刺した。
 いや、中央のドーム状部位は焼き払ったが、その周辺に飛び散った粘液は、かすかに脈打つような動きを見せている。こうなると拡散モードで焼き払うのが無難と見ているので、クオレはすぐに念入りに潰しに掛かった。
 おかげでブラッディスライムは排除できたが、ブリューナクの残りエネルギーを更に酷使する結果になってしまった。
「あと8%か……」
 基地に帰るまでエネルギーが持つか、クオレはいよいよ不安になって来た。しかも、そんな時にベルゼバブが飛来。すぐさま拡散モードのまま一度発砲し、撃墜に成功するが、エネルギー残量は7%に減少した。
 少し進むとブラッディスライムにまたも遭遇。泡をジャンプで回避し、頭上から拡散モードで3回射撃して中央の盛り上がった部位を破壊するが、エネルギー残量は4%に低下。
「くそッ、これ以上は無理だ!」
 最早ブラッディスライム排除にはエネルギーが足りないと判断し、クオレは完全撃破出来ない旨をハインラインに伝えると、帰還の足を早めた。
「ブラッディスライム粉砕。座標N35・W22――」
 一方でハインラインはブラッディスライム出現を確認したエリアを報告した。クオレ機にスライムを撃破出来る火力が殆ど残っていない以上、位置を教え、あとは専用の装備を携えた同業者に始末してもらうより他なかった。
 だがクオレもハインラインも幸いだった。周辺で戦闘していた1機の蒼いスティンガーが、ハインラインからの通報を受けて即座に移動開始、クオレ機とすれ違いでブラッディスライムに向かって行った。チェインでは市民及び建造部の安全に考慮した規約の関係で、市街地での火炎放射器や高性能爆薬搭載の破片効果榴弾――俗に言うグレネードの使用が禁止されている。そのため、恐らくあのスティンガーはプラズマキャノンか何かで駆除に当るのだろう。
 敵への警戒に意識を傾けていた為にクオレには分かり辛かったが、周辺ではスティンガーやサイクロプスを初めとしたACBやMTが、怪物達を探して徘徊している。殆どは他地域より遠征してきたハンターやイェーガーの機体だ。彼等が撃破されたと言う報告が殆ど入っていない為、殆ど一方的な展開となっているらしいとクオレは見た。もっともこれに限らず、ハンティングとはそう言うものなのだが。
 だがクオレは見てしまった。すれ違いざまに味方を見送った直後、ビルの物陰で、マンホールのふたを押し上げて不快な粘液に塗れた生命体が這い出して来たのを。
 単刀直入にいえば、それはヒル――ハンター達からブラッドサッカーと呼ばれる生命体だとクオレにはわかった。だがその体長は優に人間サイズはあり、獲物の血を反映した、滑りを帯びた赤黒い体躯から醸し出される生理的嫌悪感たるや凄まじい。
 しかし、この生物がおぞましいのは、何と言っても原型とされているヒル同様、吸血行為をする事であろう。そして、都市部においてそれは、人間を餌食にする事を意味している。
 このモンスターが生物兵器として生み出されたのか、あるいはもともと居たヒルが突然変異で超巨大化した成れの果てなのかはクオレには分からない。彼に分かるのは、このゲテモノは機動兵器全般に対する攻撃性がない事、そしてこれを排除するにブリューナクは不要であることだ。即座にブラッドサッカーを踏み潰す。
「クオレ、今入った報告です」
 現れたベルゼバブを拡散ビームで叩き落とし、クオレは通信モニターに意識と視線を傾ける。
「機械生命体が西へ敗走を始めたとの事。現在、地元ハンターと政府の連合戦力で追撃中です。チェインの航空隊も、一部がそちらに向かったとの事」
「機械生命態はひとまず大丈夫そうだな。まあ油断は出来ねぇんだけど」
 撃退に成功したとは言え、まだデヴァステイターの総本山がどこかにある。それを潰さない限り、事態が好転する事はないだろう。第一、襲撃して来た群れを駆逐した所で、機械生命体側は未だに頭数で人類戦力を凌いでいる。他の地域では分からないが、少なくとも現在、ユーラシア大陸ではそうなっていた。
 逆にそれが、報酬や名声目当てだったり、機械生命体やジナイーダへの復讐を理由として、インファシティへとハンター達が集まってくる理由にもなっていたのも事実であった。実際、ハンターやイェーガーが操っているとは分かるが、アセンブリ自体は全く見慣れないACや、明らかに独自の塗装だと分かるカラーリングを施されたスティンガーやサイクロプスが徘徊する様子を頻繁に見かける。
 まるで腐臭につられて集まって来るハエだ――クオレはそう思いかけたのだが、しかしながら自分も似たような存在であると言う自覚もあった。他でもない、ジナイーダ憎しで彼方此方を渡り歩いている自分もまた、ハエみたいな存在なのである。既に死した存在であるはずの、忌まわしき女が放っている憎悪と言う名の腐臭に。
「またか……」
 水道管が戦闘の余波で破裂したのだろう、クオレの行く手ではアスファルトの亀裂より汚水が吹き上がって湿っている。そこで、粘液に塗れたブラッドサッカーたちが這いずり回っていた。
 ブラッドサッカー達は陸生のヒルがベースとされているが、湿潤な場所を好むため、こうして水場に集まる性質がある事は知られている。こいつらは先ほど見た同類とは違い、体長は1メートルに達していない。それでも人間が襲われれば失血死は免れないだろうとみなし、クオレは市民の安全確保を視野に入れ、残らず踏んで行く。
「ったく、いつからインファシティはこんな地獄みたいな有様になっちまったんだ!?」
「それは断言出来ません。ですが、我々が来る前から兆候はあったようです」
「どう言う事だ? 教えてくれ」
 クオレは機を進めながら返した。
「下水道に突入したハンターたちから、アミダやブラッドサッカー、マガットなどの目撃情報が相次いでいます。これだけのモンスター達が数日そこいらで今のような有様になるとは考えられません」
 少なくともマガットやブラッドサッカーに関しては、インファシティ周辺から現れた物ではなく、相当前から下水道に巣食っていた可能性が濃厚だと、ハインラインは自説を述べた。
「何より、クオレもあのニュースは知っているはずです」
「ああ、覚えてる」
 ハインラインが言うニュースとは、今年の3月下旬から続出している変死事件だった。被害者は老若男女さまざまであったが、いずれも路地裏で血液を抜き取られたり、四肢や内臓がなくなっていたりと無残な姿で発見されている。更に下水道職員たちからも「化け物を見た」との証言が相次ぎ、事態を重く見たイェーガーズチェインは警察と共同で下水道内のモンスター掃討を行うと発表した。だが、その準備の段階でレイヴンとの抗争や機械生命体との戦いが発生し、実施出来ずにいたのであった。
 それを遠征前に新聞で知っていた為、若きハンターはハインラインの言を否定しなかったのである。
「ったく、あのクソッタレのド畜生が攻めて来なけりゃ……!」
 モンスター相手だというのに、クオレの怒りの矛先はジナイーダに向けられていた。だがそれも仕方のない事である。何しろ、彼女が襲撃した事で生物兵器退治が先送りになったのだから。
 そんなクオレの神経を逆撫でしたのは、全長3メートルほどに巨大化していたブラッドサッカーが女性を襲っていた事だった。惨い事に用を足している最中にでも襲われたのか、露出した臀部から吸血されている。女性なので整理の血の匂いに惹かれて襲ったとは推測されるが、いずれにせよクオレの生理的嫌悪感は臨界点を突破。世界一卑猥で危険なヒルにハードフィストをぶち込んで黙らせる。
「おい、しっかりしろ!」
 ブラッドサッカーが死ぬや、クオレはすぐにスティンガーから降りて女性に呼びかけるが、脈拍は一切なく血の気も体温もない。ブラッドサッカーが吸い付いていた尻は大きく食い千切られ、内臓が露出している。
 ブラッドサッカーは名のとおり吸血もするが、獲物から血がなくなると今度は肉を貪り出すと言うおぞましい習性を持つ。それが、この被害女性に如実に現れていた。
 内部をスキャンする術を持たないクオレであるが、被害者がすでに息絶えている事は明確だった。そう言えば、彼女が悲鳴を一切上げていなかったことにクオレは思い当たった。
 あの地点ですでに息絶えていたのだろうかと推測はしたが、このままひどい姿で放置されるのも不憫だと見たクオレは、近くに偶然あったボロ布で女性の下半身を隠してやってから、スティンガーに戻った。
「クオレ、どうしたのですか?」
「多分OLだと思うけど、ブラッドサッカーに襲われていた」
「で、どうでした?」
 クオレは首を横に振った。
「そうですか……」
 ハインラインはそれ以上尋ねようとしなかった。
 丸出しの尻から吸血され、挙句腸を貪られるという酷い惨状で命を落とした女性の冥福を祈りながら、クオレは帰還を急ぐ。だが、その哀悼も数秒後には激しい怒りに転じたのだが。
「畜生、それもこれもあのロクデナシのド畜生女のせいだ! あのクソが妨害しなけりゃ、さっきの超絶変態ヒルを駆除出来ていた所だったのによ! いや無駄な武力闘争でヒル退治の予定をパァにしたクソッタレのレイヴンどもも同罪だ!」
 さまざまな暴言・毒舌・誹謗中傷がジナイーダに、ついでにレイヴン達にも吐き出された。
 しかし、クオレ機前方から大量の民間人が逃げて来たため、悪口は不意に中断。事態が飲み込めないながらも、彼は恐怖に駆られ、着のみ着のままで必至になって駆けて来る人々に「早く逃げろ!」と怒鳴る。
 一体何事か――次の瞬間には、赤く縁取られた漆黒の外骨格を持つ8本足の巨大節足動物が現れ、逃げ遅れた人間達を次々に串刺しにし、顎で粉砕し出した。巨大なクモではない。確かにそれはクモに酷似した姿ではあるが、全長15メートルに達する巨体から、モンスターである事は明確であった。更に言えば、そいつに「ブラッディランサー」の名がある事もクオレとハインラインには既知であった。
 サソリを思わせる鋭い刺の付いた尻尾と、名の由来である血に染まったような赤い馬上槍の如き爪を持つ第1肢、そして頭胸部をはじめ、クモ型の本体は全体的に鋭角的なフォルムをしており、刺を幾つも備えた複雑な構造の顎が、クオレを前に憤怒とも威嚇とも、更には歓喜とも取れる軋りを上げる。
「野郎ッ……!」
 クオレは即座にブリューナクを集束モードに切り替え、エネルギーチャージを開始した。
「援護する」
 恐らくはここに遠征し、先程まで近くで戦っていたのだろう、ハンター操るACが加勢に現れた。2丁のMWG-MG/800が火を噴き、異形の巨蟲目掛けて弾丸が降り注ぐ。
「おい、そいつにそんな豆鉄砲は効かねぇぞ!」
 クオレの言うとおりだった。ACやMT相手だったならば押し切るように勝利する事も難しくない連射力を伴ったマシンガンの弾だが、ブラッディランサーは衝撃で身体を軽く揺さぶられた程度で、外骨格には傷一つ付いていなかった。
「ミサイルを使え! そいつなら外骨格にも通じる!」
 ハンターが駆る青と白のACは、各種センサーを備えたMHD-MM/004、付加機能こそないが旧型番CR-C83UA時代から優れた防御性能に定評のあるCCH-04-EOC、優れた省エネ性でCR-A92XSから型番が変更された今尚使われるCAL-66-MACH、24時間戦争時代は死角なしと謳われたCR-LH92A3改めCLM-02-SNSKA1と言うフレームに、旧型番WB05M-SATYROS時代より誘導性に難を抱えるも、弾速と威力に優れる中型ミサイルを放つMWM-M24/2が積まれている。上腕部には旧型番CR-E73RM時代と同様、4連装のミサイルを3回発射可能なCWEM-R12を搭載している。
 クオレは過去に戦った経験から、ブラッディランサーの外骨格にはライフルやマシンガンは通じないが、ミサイルまでは防げない事を知っていた。ACに乗っているハンターもそれを察知したのだろう、武器を切り替え、中型ミサイルを撃ち込んだ。
 AC相手に使うにはいささか難を残すミサイルであるが、そのミサイルはブラッディランサーの右第1肢の根元に直撃し、血塗られた槍の片方を機能不全にした。しかし腕を千切られ、激怒した怪物は反撃として超硬質の爪を振り上げる。
「危ねぇ!」
 クオレが叫んだ時には、重量級コアは巨蟲の槍に貫かれていた。通信モニターの唐突な途切れ方を見るに、恐らくコックピットをやられただろうとクオレは見た。
 しかも間髪居れず、ブラッディランサーは尻尾をコアに突き立て、糸を引いて滴る黄緑色の不気味な液体を大量噴射し、無残な姿となって煙を上げるACを前方へと放り出した。
 ACに掛けられたのは強烈な溶解液で、びしょ濡れになった装甲は見る間に溶けて行き、続いて腐朽した腕が軋みながらハードポイントより落下し、崩れ落ちた。槍に貫かれて10秒も経とう頃には、ACはスクラップ同然となっていた。
 ブラッディランサーは溶解液を獲物に掛けて硬い殻を穿ち、溶かれた肉ごと啜ると言う悪趣味な捕食を行う事が知られていた。戦闘目的で生成されただけに動きも敏捷であり、その攻撃に対し、オーバードブーストのないACが逃げるには、余りにも遅すぎた。
 そして、ACを喰えぬと判断したブラッディランサーは、クオレ機にも溶解液を飛ばしながら接近して来た。だがスティンガーはACよりも回避行動はずっと素早い。目測を誤った黄緑色の液はアスファルトや鉄筋コンクリートを腐朽させ、泡や煙を上げて融解させたが、スティンガーには滴も当らない。
 迫って来るスピードも、全長15メートルと言う巨大さを考慮すれば常識外に素早いものの、それでも時速400キロ台を軽く叩き出すスティンガーには到底及ばない。
「ハインライン! エネルギー充填率は!?」 
 回避行動で忙しいので、クオレはコンソールを見やらずにハインラインを呼んだ。
「80%です」
「よし、それぐらいありゃ十分だ」
 クオレはファイアーボタンに指をかけた。
「エネルギー残量から察するに、チャンスはあと2回。必ず命中させるように」
 ハインラインから念を押されながらも、降りかかってくる溶解液を際どく回避し、繰り出された血染めの馬上槍から飛び退きで逃れ、クオレはトリガーを引いた。集束されたビームが瞬きも許さぬ時間で突き刺さり――ブラッディランサーの尾を根元より引き千切った。
「外した」
 口を狙ったつもりだったのにとクオレは舌打ちした。
 尻尾を千切られた激痛にのたうった怪物だったが、やがて姿勢を正し、クオレ機目掛けて肉薄した。巨大な爪を振りかざし、今度は口の下から生えた牙の様なものから雷光を飛ばし、スティンガーのフォースフィールドを穿つ。
「最後の一発……」
 クオレは再びエネルギーをチャージし、今度は軋りと唸りを上げながら開閉される口に狙いを定めてブリューナクを向けた。
 ブラッディランサーは表面こそAC用火器弾を容易く弾く鎧に覆われているものの、捕食の為の器官が集中している頭にだけは「隙間」が生じており、もし生物兵器として投入する目的で作り出したとするならば明確すぎる弱点を露呈している。嘗て戦ったクオレはその辺を熟知しており、故に尾を千切り飛ばした攻撃を外れと評したのであった。
 一応、溶解液を封じる事は出来たが、そもそもクオレの腕前を以ってすれば、そんな事をしなくても仕留められる。
 巨蟲の口の下から覗く一対の牙から稲光が迸り、クオレ機を掠めて飛ぶが、これは獲物をマヒさせる事が目的の為、スティンガーとは言え致命傷とはならない。だが、フォースフィールド修復中、あるいはフィールドが破られたり弱くなった箇所に受けたとしたら、電子機器や配線にダメージが及ばない保証はない。
 稲妻と爪を掻い潜り、エネルギーを充填しながらクオレは待った。ブラッディランサーの口が開放されるその時を。いや、一瞬開いたが、横に振るわれた爪に邪魔された。
 だが、その爪が返されたとき、クオレの目が光った。
「くたばれぇッ!」
 ブリューナクの砲口から集束ビームが放たれ、ブラッディ・ランサーの口を直撃した。光線は消化器官や筋組織、更には心臓までぶち抜いて尾の付け根を内側から破った。出て来た時は威力をかなり減じていたが、それでも後方に現れていたバレットライフの左腕を指型マシンガン諸共吹き飛ばした。
 巨蟲を倒したクオレだったが、しかし4脚ACはすぐさま自分を狙った相手を認識、チェインガンやマイクロミサイルを撃ちながら迫ってきた。
「ブリューナク、撃ち止めです」
 ハインラインが全部言う頃には、クオレはオーバードブーストでバレットライフとの距離を離しに掛かっていた。ACのそれとは違い、溜め動作なしですぐ起動するが、発動時には機体にとって莫大なエネルギーを消費し、しかもかなりの熱が発生するのは同じだ。機体の負荷を考えると、あまり無理はさせられない。だが、左腕がなくなった分軽量化されたバレットライフが殺意を吐きながら迫って来ている。
 ならばとクオレは、射撃から逃れようとビルの谷間をすり抜け、交差点を曲がってひたすらに逃げ捲くる。応戦手段はない。忌々しい相手ではあるが、自分の今の腕を考えると、バレットライフはハードフィストだけで戦うには危険すぎる相手であるとクオレは判断していた。よって、望みは逃げ続けてツキを期待するのみである。
 そんなクオレは運の悪い事に、背後から、赤いレーダー反応に猛スピードで迫られていた。
 カーブを曲がろうと減速した際、背後の敵機は減速が間に合わずクオレの目の前をフライバイした。トンボと複葉機を2で割ったようなドラグーンフライのフォルムは、彼には見間違いがなかった。
「クソ、厄介なヤツに出くわしたか!」
14/08/07 15:22更新 / ラインガイスト
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■作者メッセージ
 蟲との闘い・パート2――としたかったのですが、執筆していくうちに何を考えたのかバレットライフを出し、スライムを出し、挙句ヒルを出しと蟲どころかゲテモノが混ざりこんでしまい、気がつけば前回に輪をかけてカオスな惨状を曝す結果に……(爆)。

 こう言っちゃ何ですが、どんどん人外相手との戦いが蓄積されて行くに従い、話がエスカレートして、段々制御出来ない方向に行ってますね。

 ちなみに本来は、後でアミダ――それも原作やNXに出て来た奴じゃなくて、「火炎を吐く奴」「稲妻を飛ばす奴」「粘液でクオレ機の足を止める奴」「グレネード食らっても平然としているほどカタい奴」「NX版AMIDA超巨大化ヴァージョン」と言った珍妙(過ぎ)な亜種も出て来る予定でしたが、結局ボツにして最初から書き直しました。

■お詫び
 YYさんから「ACの武装に、巨大キンチョールとかインサイドに設置型バルサンとか欲しいですw」とレスがあり、それに対する意見を今回劇中で記述する予定――という旨を伸べましたが、作者が情けなくもそれをド忘れしてしまい、今回においては記述に至りませんでした。お詫び申し上げます……(陳謝)。

(※2012年7月16日現在、同ネタは次回劇中の後半に記述済み)

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まろやか投稿小説 Ver1.50