連載小説
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#24.形振り構わぬ者
「チッ、反応なしか……」
 まさかスキュラが風邪で倒れているとは思ってもいないアストライアーは、この日も彼女に返事をよこせと言う主旨で、幾度も携帯端末をダイヤルしていた。
 ここでアストライアーの発信履歴を見たならば、6月7日午後2時から24時間後の現在に至るまで50回近い発信がある事に気付くだろう。
 傍目には悪戯電話か嫌がらせの類に見えるかも知れず、アストライアーとしても、これが嫌がらせ紛いの行為になっているだろうとは思っている。だが、これほど回数を多くダイヤルしていれば、嫌悪か何かを露わにしてでも自身に「止めろ」なり何なり言うだろうとも期待していたのも事実だった。今の所、その期待は裏切られているのだが。
 スキュラは携帯をマナーモードにしていたっけか? そうだとしても携帯を持ち歩いているならばいずれは気付く筈だと信じて。
「アストライアーさん?」
 女の声で、アストライアーは我に返った。そして、私は今撤収中だったんだと思いだした。
「何でもない。それより、さっさと戻るぞ」
 溜息と共に操縦に戻る。
 現在ヴィエルジュは、セクション709のだだっ広い荒野のど真ん中にいた。お馴染みのアヴァロンヒルではない。地理的には同じ第1層の自然区にあるのだが、天使とも仏像とも取れる容姿をした機動兵器の残骸も、そのほかの巨大な残骸も此処にはない。あるのは乾いた台地と石ころ、爆撃機グランドロックの残骸ぐらいのものだ。
 そして、荒野の只中とは言えまだ機能する都市が遠くに見え、その中心には他セクションへの連絡通路である事を示す巨大ターミナルが鎮座していた。この都市はキサラギが管轄しており、同社の研究施設も存在している。
 ユニオンに資金提供していた報復措置として、クレストはここに爆撃機を差し向けさせたのだが、途上のアヴァロンヒルにおいて、キサラギから派遣されたレイヴンの奇襲を受けた。爆撃機はエンジンを損傷しながら、此処まで辿り着いたものの、墜落したとアストライアーは聞いている。
 そのアストライアーは、座礁したミラージュの軍事研究船に向かい、データポッドの回収へと向かっていたのだ。その依頼は達成したのだが、アストライアーの不平不満は絶えない。
「全く、貴様がしくじったせいで……」
 アストライアーの蔑みの視線は後方に向けられていた。
 バズーカを手にし、頭部をお馴染みのMHD-RE/005からCHD-02-TIEに換装したヴィエルジュの後方には、戦場には似つかわしくないピンク色に塗装された、支給された時そのままのアセンブリのACが続いている。第3アリーナのランカー達を知っているならば、現在の最下位最弱ランカー・元メイドのカリンが駆るハウスキーパーだとすぐに気が付くはずである。
「回収に向かった奴が回収されるなんて洒落にならん!」
「だ、だっていきなり通路が崩れて……」
 元々データポッドの回収はカリンが受けた依頼だったのだが、彼女は座礁船の通路崩壊によって帰還出来なくなり、結局アストライアーに「データポッドと、データポッド回収に向かった元メイドを“回収”して欲しい」と、あきれるような依頼を出したのであった。
「でも、こうしてデータポッドも無事だったのですし……」
「無駄に手を煩わせるな!」
 アストライアーは怒鳴った。
「大体、これが回収系のミッションで、しかも敵戦力も殆ど居なかったから良かったものの、本来なら貴様の様な役立たずはとっくに死んでるぞ! こうして助けに来てやっただけ有り難いと思え!」
「ご、ごめんなさい〜」
「謝罪など聞きたくもない! 謝罪なら貴様と似たようなアニメキャラどころか猿にだって出来る! それよか少しは反省しろ!!」
 1ヶ月前にエレノアが消えて以来、何かと荒れ気味のアストライアーではあるが、今日の彼女はその中でも特に荒れている部類にある事は間違いなかった。
 その最たる原因は、カリンの不手際と言い訳は勿論だが、元メイドと言う、彼女の明らかに話題性を狙ったような経歴にあった。
 レイヴンになってまでメイドの真似事をして、しかもロクに勝てもしないのに、与太者を初めとした周囲から人気と言う彼女の立ち居地が、アストライアーの激しい嫉妬と怒りを買っていたのだった。アストライアーの言葉が厳しくなるのも、感情論的に言えば当然だった。
 レイヤード第3アリーナの人気最弱クラスランカーとして、よくアデューが挙がるのだが、アデューは少なくとも平素はごく普通の青年で、どんな相手でも(例えそれがアストライアーだったとしても)腐らずに戦う実直で勇敢な姿勢を持っており、最近になってちょっとだが成長しつつあるため、アストライアー自身はその点を一応評価している。
 勿論、ザコと見下していないと言えば嘘になるが、それでも嫉妬心の類がないだけに、カリンの時の様な罵声は飛ばさないだろう。
「大体、メイドが戦場に出るだと? ここは反吐の出るようなアニメやマンガの世界じゃない! 道楽なら同人誌やなりきりチャットでやれ!」
「それは言いがかりでは……」
「うるさい! 依頼しくじったくせにでかい面出来る立場だと思うな! 大体、大した実力もないくせに――」
 カリンへの罵倒はそこで止まった。アストライアーの鋭敏な聴覚が、外界の銃声か爆発音か、兎も角そういった音を捉えたのだ。
 すぐに周囲を見渡す。見たところ、北に広がっているキサラギ管轄の都市では戦闘が起きている形跡はない。起きていたなら黒煙か何かが上がっている筈だった。
 続いて、ヴィエルジュの眼前をロケットが過ぎり、レーダーは9時方向からACの反応が迫っている事を示した。IFFは味方でない事を告げている。
 アストライアーは即座に戦闘体制に移行。ターンブースターで東へと向きを転じると、またもロケットが飛来した。だがそれは、どれもヴィエルジュを大きく外れて飛んで行った。
「行け!」
 アストライアーはカリンに怒鳴った。これ以上先輩の怒りを買うまいと、カリンはのろのろとした動きながらもその場を離れた。
 ハウスキーパーが去り出したのに少し送れ、丘の向こうからACが姿を現した。
 重量こそあるが防御性能も群を抜くMHD-SS/CRUST、堅牢な装甲を持つCCH-0V-IKS、中量腕部のスタンダード品CAM-11-SOL、汎用脚部CLM-02-SNSKをフレームとし、クレスト製マシンガンCWG-MG-500と、ヴィエルジュと同じく支給されたレーダーCRU-A10、よく見えないがミサイルポッドと思しき何か、そしてレーザーブレードとターンブースターで固めているらしい。カラーリングはオレンジと黒のツートンだが、赤茶けた荒野の中では意外と目立たない。
 外見的特徴から、レイヤード第3アリーナの補充ランカーとして登録されたグローライトが操るスマトラだと、アストライアーには分かった。
 グローライトは若いレイヴンだが、愛機を防御性能に優れるパーツで固める堅実さに定評があり、まだ目立った戦果がないながらも活躍が期待されている若手ランカーだった。真面目な性分ゆえ、ロケットや火炎放射器といった奇抜な武器には手を出さない事でも知られている。つまり、ロケットはコイツが撃ったのではないと、アストライアーは見た。
「うるせぇな! 何度も言ってるだろ!」
 罵声と共に、今度は青と黒の4脚が姿を現した。暗い配色のせいでフレームは良く分からないが、4脚の中ではトータルバランスの良さで定評のあるMLF-MX/KNOTをベースに、重散弾砲CWC-SLU-64と全武装パーツ中最大携行弾数を誇るマシンガンMWG-MG/1000、そして火炎放射器KWG-FTL450で固めている。
 アストライアーはこのアセンブリに見覚えがなかったが、ブラスと言うパイロットの名前だけは覚えていた。だが、クールヘッドと言う機体名や、一度反感を抱いた相手はいつまでも覚えているブラスの執念深い性格は知らない。
「あんた等の下に付くのは真っ平御免だ!」
「他を当ってくれ!」
 グローライトとブラスが何かを拒否している事に、アストライアーは一瞬疑問符を浮かべた。
「ええい! 何度も言わせるんじゃねぇ!」
 ヒステリックな野郎の声に続き、カヌーの様なフロート脚部MLR-SS/REMをベースとした、赤と黄色の派手な彩色をしたACが空中に舞い上がり、ロケット、更には武器腕CAW-DS48-1とエクステンションCWEM-R20から、計8発のミサイルを放ってスマトラに迫った。だが互いの距離が近過ぎて、ミサイルは8本ともスマトラの頭上を越えた挙句、勢い余って地面を削って終わった。
 このACと搭乗者は、アストライアーにも見覚えがあった。
「何の真似だ、ホスタイル!」
 アストライアーの言葉に反応しないホスタイルではなかった。
「テメェ、丁度いい所に居やがった!」
 好戦的で短気なホスタイルは即座に狙いをヴィエルジュに変更、両肩の中型ロケット砲MWR-M/45を打ち放った。だがふらつく搭乗機アトミックポッドでロケットの狙いなど定まるものではなく、砲弾は次々にヴィエルジュから外れて飛んで行く。
「この間散々やってくれた礼をしてやるよ!」
 オーバードブーストで突っ込んでくるアトミックポッドを容易く横跳びでかわし、アストライアーは鼻息を漏らした。第3アリーナから第2アリーナに移籍した今となっても、アリーナで彼女にズタボロにされた事をまだ覚えていた事を知ったのだ。
「帰れ馬鹿野郎。今日の機嫌は最悪だ」
 アストライアーが不快感も露わに言った。
「うるせぇ!」
 ホスタイルは愛機を旋回させると再びオーバードブーストを起動し、強引にヴィエルジュへと突っ込み、中型ロケットを見舞おうとする。
 やっぱり変わってない――いや、変われるだけの上等な脳ミソなどないかとアストライアーは逆に安堵した。以前もそうだったが、ホスタイルは待たされる事を極端に嫌う落ち着きの無い性分で、血の気が多い。後先を考えずに行動し、スピード違反や無謀運転、更には軽犯罪を度々引き起こしているぐらいである。
 そんな単純なホスタイルは、アストライアーに気を取られていたばかりに、スマトラやクールヘッドからマシンガンを撃ち込まれるチャンスを与えてしまった。軽量級コアとフロート脚部が次々に穴だらけにされていく。
「テメェら、何しやがる!!」
 逆上したホスタイルは即座に狙いをスマトラに切り替えた。結果、アストライアー戦の最中によそ見をし、あまつさえ彼女に背後を向ける事になってしまった事に気付かなかった。自ら破滅への道を求めたと言わざるを得なかった。
 そのチャンスを逃すアストライアーではない。即座にアトミックポッドにバズーカを打ち放つ。二度、三度と立て続けに砲弾を打ち込まれたフロート脚部は爆発。
 直後、オーバードブーストが発動したのだが、最早制御不能となったアトミックポッドの上半身は出力の続くまま、その場を離脱した。
「チクショー! 覚えてやがれえええええええ!!」
 ホスタイルの負け犬の遠吠えと共に、アトミックポッドは火に包まれながら西の地平線へ向けてすっ飛んで行った。
 何しに来たんだと言いかけたアストライアーだったが、レーダー上にピンク色の光が次々に出現し、自身との距離を詰めつつあるのに気が付いた。
 それはミサイルの接近を示していた。
 振り向くまでも無く、アストライアーはヴィエルジュを急上昇させ、機体を捻った。直後、彼女の眼前を弾頭と噴射炎と煙が掠め飛んで行った。新手かと、アストライアーはターンブースターを吹かし、ヴィエルジュを急速旋回させる。
 新手の敵ACは3体。何れもアセンブリは同一で、ショットガンと拡散投擲銃を手にし、両肩にミサイルランチャーを搭載した重量2脚。黄金色の本体に、緑色の左腕と紅色の右手を認めた直後、3機のACはヴィエルジュに向け、一斉にミサイルを打ち放った。
 1機から飛び出したミサイルは、背部ランチャーと上腕部の連動ランチャーから4発ずつ。それが3機一斉、つまり24発ものミサイルが繰り出された。凄まじい爆炎を発しながら迫るミサイル網だが、追撃コースが素直な為、アストライアーが円運動で回避するには全く苦労の無い代物だった。第2波、第3波もやはり回避に支障はなかった。
「72発も無駄撃ちして何が楽しいんだ、ロイヤルミスト!」
 そう言わせる根拠は、機体の配色だけではない。機体と同配色のエンブレムに、彼のシンボルである「頭上に冠を抱くグリフォン」が描かれていた事だ。彼の愛機であるカイザーが3機もいる事は腑に落ちないが、恐らくはあのいずれかにロイヤルミストが乗っているかも知れないと見ていた。
「済まんな」
 ロイヤルミストと思しき声が響く。
「わざわざお前の方から出向いて貰ってな」
 直後、カイザーから第4波のミサイル24発が、ついでショットガンと拡散投擲銃、更にEOまでもが繰り出された。
 反射的にアストライアーは上空円運動を行い、ミサイルは纏めて回避したが、ショットガンを浴び、拡散した小型擲弾を脚部に浴びる。だが、ミサイルやEOの直撃よりは被害が少なく済んだのは確かだった。
 ヴィエルジュは間髪居れず、距離を詰めるカイザー3機の側面をオーバードブーストで通過。そのまま急速旋回し、カイザー編隊の側面を取る。
 カイザーは対AC戦を想定して組み上げられ、重量級機体の常である不足気味の旋回性以外はあらゆる面で高い水準を誇っている。高出力ブースターとジェネレーターを搭載している為、スピードに関しても重量2脚としては破格のレベルと言える水準を叩き出しており、しかも長時間のブースト使用が可能なため、並みの中量級2脚相手であれば運動性で負ける事も少ない。だが、重装備ゆえに旋回性能は優れているとは言えない。確かに、重量2脚としては優れる旋回性能ではあるのだが、中量2脚ながら軽量2脚にも迫る機動性とスピードを誇るヴィエルジュには及ばない。
 機動力を活かした近接戦となれば、ヴィエルジュが圧倒的に有利だ。
 勿論、ロイヤルミストも近接戦に持ち込まれる事を想定し、カイザーを重量級2脚としては珍しい、拡散武器を用いた近接銃撃戦仕様に仕立てている。
 アストライアーは、自身を追いかけながら向き直ろうとするカイザーの様子を見て、冷静なまでに分析していた。これが1対1ならば即座に斬りかかってもいい所だが、今回は3機を同時に相手取っている。迂闊な接近を試みれば、1機は即座に斬り捨てられるだろうが、残る2機から包囲攻撃されるリスクを冒しかねなかった。
 それに、今は3機が一体になって向かって来ているが、ここで散開でもされると、1機を狙う間に他の機から横槍を入れられる可能性も捨て切れなかった。
 そこまで判断し、アストライアーはまずバズーカを発砲、先頭のカイザーへ、背後から砲弾を叩き込む。重量級コアの装甲や防御スクリーンは堅牢で、バズーカと言えど簡単に崩せるものではなかったが、砲弾はEOの片割れを弾き飛ばし、頭部や右腕をもぎ、ミサイルランチャーに突き刺さって爆発を誘った。爆発が消える前に、剣戟を食らわすのも忘れない。
 先頭の機が背後を深々とやられ、あっけなく戦闘不能に追いやられると、残る2機は左右に分かれた。アストライアーは即座に、向かって左側のカイザーに向かった。
 右にいた機はヴィエルジュをすぐに視界に捉え、ショットガンと拡散投擲銃を撃ちながら迫る。左の機の背後に回っていたヴィエルジュは多少の被弾はしたが、コアを背後から斬り付け、まずは高出力ブースターの片割れを損壊させた。
 左のカイザーはヴィエルジュを追い払おうとショットガンを放ったが、僚機の正面に散弾が当たった。
「お前、どこを見ている!!」
 誤射されたカイザーのパイロットが怒鳴った。
「すみません……」
 誤射したパイロットが小さく謝罪したのを、アストライアーは傍受した。
 そこからアストライアーは、今斬り付けたカイザーのパイロットこそがロイヤルミストであると判断した。残る一方、そして先ほど撃破したカイザーのパイロットは不明だが、影武者を使った可能性が高いと、彼女は見た。
 そもそも1回の試合で何十万cと言う大金が支払われるような試合をしているロイヤルミストの事、影武者を用意する事は十分可能だろうと言うのが、アストライアーの見解である。
 ましてや、威風堂々を装いながら、実際はランカーを恫喝したりと、アリーナの裏を知る者からは「意地汚い小悪党」やら「BBの威を借る小物」と扱き下ろされていた男が、それを考えなかった筈はない。
 だが、その考察はアストライアーの今の助けにはならない。実際、影武者の方が五月蝿くショットガンやEOを繰り出して迫っている為、その対処を考えねばならない。
 アストライアーは本物と見られるカイザーの撃破をひとまず放棄し、背後から剣戟を2度繰り出して足の関節とブースターを損壊させ、機動力を奪うに留めてから、影武者へと向かった。
「くそっ、いい気になるな!」
 愛機を破壊され、既に怒り心頭のロイヤルミストはEOとショットガンを連射してヴィエルジュを背後から狙ったが、当るのは散弾の一、二発ぐらいで他は悉く外れた。しかも、直後には影武者の側面を取ったので、射撃のチャンスがなかった。
 小便臭い小娘ごときに翻弄されるとは何たることだと、ロイヤルミストは憤った。


 ブラスとグローライトの2人は、ヴィエルジュがカイザーの周囲を小馬鹿にする様に踊り、飛び跳ね、バズーカや剣戟を食らわす姿を見ていた。
「……どうする?」
 グローライトが尋ねた。
 ブラスは無言で、今自分が置かれている状況について考えていた。
 元々ブラスもグローライトも、特に互いに縁があるわけでもなく、また互いに関心を寄せるような仲でもなかった。今まで互いを意識しておらず、ここにいたのも偶然、今回初めて共闘している時に、たまたまホスタイルに急襲され、ロイヤルミストの配下になる様強制されたのだ。そして、それを拒否して此処まで逃げてきて、偶然その先にアストライアーがいただけの事だ。
 ブラス自身、ロイヤルミストがBB第一の手下である事は知っている。第3アリーナ内部では、他のアリーナにも増して派閥抗争が激しく、かつ表面化している事を、補充ランカーとしてエントリーした直後に知った。
 そして、BB派の最たる連中を含め、多くのランカーが倒れている事も分かっていた。
 記憶にあるだけでも、グランドチーフとコルレット、クラッシュボーンはアストライアーに敗れて死亡、ファウストとファナティックは依頼先でアストライアーに裏切られてこれまた死亡。ミダスは依頼先で元彼氏のバーチェッタに倒されて瀕死の重傷となり、トルーパーは試合中に事故死。
 ファンファーレやノクターン、フライングフィックスやアスター、ドロール、クライゼン、フレアやバックブレイカー、チェーンインパクト、ツインヘッドB、ストラスボルグ、リップハンターはアキラまたは直美に殺されたと聞いている。
 ツインヘッドWはクレストのデータバンク突入の際に戦死し、キッシングバグとダックスはアストライアーを謀殺しようとした所、管理者の巨大機動兵器に遭遇して仲間諸共死亡。フラジャイル、ホズミ、ツクヨは管理者実働部隊の攻撃で帰らぬ人となった。
 キャストダウンとパイロン、トラファルガー、ヴァイス、パイク、ツヴァイハンダーは負傷に付き戦線離脱中。ワルキューレは戦死したと言う話を聞いていないが、行方不明になっている。
 だがこれも、あくまで第3アリーナという限られた場所での話。他のアリーナにまで視野を広げると、BBに味方したばかりに相当数のレイヴンがアキラに消されたり、管理者部隊の攻撃で落命している。
 こんな時勢だから、BB派閥も余程の人手不足であろう事は、ブラスには容易に想像出来た。それこそ、自分やグローライトにさえ声を掛けねばならないぐらいに。
 しかし、ブラスには倒壊寸前のBB派閥に入って運命を共にする、と言う考えはなかった。大半の人間と同じく、彼も死ぬのは嫌だからだ。
「グローライト……」
「何だ?」
「何でお前、BB派閥に入ろうって考えなかったんだ?」
 変な事を聞くなぁと言うような眼で、グローライトはブラスと、その愛機クールヘッドを見た。
「もうすぐ、オレの妹が最初の赤ちゃんを産むんだよ」
 今ひとつ関係があるとは思えないながらも、そいつは驚いたなと、ブラスは漏らした。
「妹さんは幾つだ?」
「今年で19」
「そりゃ相当の早産だな」
 そうだろうとグローライトは笑った。
「だからさ、オレは死ぬなんて選択肢はしたくない。4年も長く生きているくせに馬鹿な兄貴とかなんやらと、妹に墓前で罵られたら浮ばれそうにない。それにBB派閥なんて行ったら、自殺志願みたいなもんだ。アキラとその仲間に殺されかねない」
「極めて賢明な判断だというべきだな」
 ブラスは頷いた。
 その直後、彼は、のろのろと歩くピンク色の初期配備ACが、カイザーにライフルで銃撃を仕掛けてきた事に気付いた。
「アストライアーさん!」
 カリン駆るハウスキーパーだった。
「貴様! 何故戻って来た!!」
「データポッドを届けて来ました!」
「律儀に報告するな!!」
 アストライアーは怒鳴った。
 ロイヤルミストは即座に新手のACに反応した。そして回避がおぼつかないのをいい事に、連動ミサイルを含めたミサイルを連続で繰り出し、ハウスキーパーをあっけなく粉砕してしまった。
「何故逃げなかった……どこまで馬鹿なんだ……」
 悲痛な悲鳴を上げて崩れた元メイドを前に、アストライアーは吐き捨てた。だが拡散投擲銃が繰り出され、蒼白いエネルギー弾と拡散擲弾が掠め飛ぶに及び、余計な感傷をすぐに捨てた。
 剣戟を一閃させたが、刃は届かず、光波だけがカイザーに当たる。
「援護しろ!」
 ロイヤルミストか影武者かは分からないが、ブラスの耳に男の声が届いた。
 しかしグローライトとブラスは互いに顔を見合わせ、既に破滅したも同然のBBにすがるロイヤルミストと、カイザー2機相手に互角以上の戦いを演じているアストライアーとでは、どちらが頼りになるか、そしてどちらを敵に回してはならないかと言う話になった。
 その話は数秒もしないうちに結論が出て、二人は同時に行動しようと言う話になった。
「援護する!」
 グローライトは叫び、愛機スマトラの武装を切り替え、肩武装を立ち上げる。アストライアーに確認出来なかった肩装備の正体は、ミサイルランチャーとしては破格の最大携行弾数で知られるCWM-S60-10で、そこから3発のミサイルが山形の軌道で放たれ……影武者カイザーに着弾した。
 更に、クールヘッドからもマシンガンが放たれ、影武者の装甲を抉った。
 影武者は一瞬戸惑ったが、その一瞬のうちにヴィエルジュがムーンライトを一閃した。側面から斬りかかられたニセモノは右腕を失った。
「貴様等、何の真似だ!」
 激昂するロイヤルミストを無視し、ブラスはマシンガンを撃ちまくった。ショットガンを撃たれるが、距離がある今は大した損害など望むべくもない。
 反撃にミサイルを繰り出すロイヤルミストだったが、スマトラがインサイドカーゴから何かを射出した事で、突如ミサイルのロックオンが利かなくなった。
 放たれたミサイルは目標を見失い迷走。噴煙の中、ロイヤルミストは小型装置がスマトラ周辺に展開しているのに気付いた。良く見るデコイとは全く違っていた。
「ECMメーカーか!」
 これにはロイヤルミストも苦い顔となった。下級ランカー風情が上等なものを持っているとは予想していなかったのだ。
 第3アリーナではミサイルの使用者が多く、その事もあってインサイドと言えばデコイがセオリーとされている。ロイヤルミストも例外ではなく、ミサイルカウンター未装備という弱点を考慮し、20発のデコイを積載している。その為、ミサイル対策にはデコイが当たり前、ECMメーカーは誰も使わないだろうと、ECMによるミサイルカウンターを考慮のうちから外していたのだった。
 ロックオンが利かないならば直接叩くまでと、カイザーはスマトラに迫り、目視でのショットガンと拡散投擲銃、そしてECMメーカーの干渉を受けなかったEOを繰り出して迫る。
 下位ランカーAC2機は急いで左右に分かれ、マシンガンを乱射しながら射線から逃れた。クールヘッドの薄い装甲が削られ、後ろ足やレーダーギリギリの空間を、蒼白い大型エネルギー弾が掠め飛んで行く。
「何故、こいつ等が加勢?」
 ロイヤルミストが予想外のECMメーカーに苦しめられる中、アストライアーは疑問を抱いたが、即座にそれを是正した。今はそんな事を気にしている場合ではないと。
 余計な考えを振り切るかのように、ヴィエルジュは剣戟を立て続けに繰り出し、とどめにバズーカを見舞って偽カイザーを爆発炎上させた。スマトラのECMメーカーはヴィエルジュのレーダーやロックオンにも干渉していたが、至近距離での目視戦闘を主軸としている彼女に、さしたる影響はなかった。
「貴様の相手はこの私だ!」
 アストライアーの怒号と共に、ヴィエルジュが残っていたカイザーに突撃した。
 ロイヤルミストも、背後から突っ込んできた相手を迎え撃とうと旋回したが、ヴィエルジュの旋回スピードはそれを遥かに凌駕していた。半ば苦し紛れにショットガンと拡散投擲銃を放つが、一発も当らない。
 スマトラとクールヘッドによる援護射撃もあり、ヴィエルジュが背後を取るのに、全く苦労はなかった。
 悪く思うな――剣戟を繰り出そうと言う直前になり、轟音と共にヴィエルジュの背後から巨大な火炎弾が飛んで来た。だが、それはヴィエルジュの右側面を掠めて飛び、地面に着弾。爆風でヴィエルジュを舞い上げ、スマトラを後退させるに留めた。
「貴様……」
 噛み合った歯を覗かせるアストライアーの口から、ドスの利いた言葉が吐き捨てられる。
 丘の上へと向いたヴィエルジュの先には、嫌になるほど記憶に残っているACがいた。流れ出た血の様な紅い手と細部を持つ、濃灰色の逆関節。大掛かりな拡散バズーカMWG-SBZ/24とお馴染みの大型グレネード砲CWC-GNL-15を携え、昆虫の様な頭部を持ったAC。
 左肩の怪物の様なエンブレムのデザインに組み込まれている、「BB」の文字に見間違いはない。
 アストライアーの宿敵がそこにいた。
「あれは私の獲物だ!」
 手負いのカイザーは好きにしろとだけ言い、アストライアーは宿敵へと飛び掛った。オーバードブーストを全開にし、一挙に距離を詰める。
 タイラントは即座に反応し、再びグレネードで砲撃。だが横とびで射線から逃れたヴィエルジュにはかすりもせず、そのまま側面を取られる。
 タイラントは狂ったようにその場で旋回を始め、3連ロケットや拡散バズーカを放つが、攻撃はその尽くが、全く正確さを欠いている。
 こんな程度だったのかと訝るアストライアーだったが、相手をのさばらせる気など無かった。即座にムーンライトを振りかざし、タイラントの背後から一気に斬り付ける。ほぼ密着状態から繰り出された剣戟はコア後方を容易く吹き飛ばし、一撃で機体の殆どを破壊、その次の一撃でコアはほぼ全壊状態となり、軋みながら地面へと倒れた。
 本懐を遂げたはずのアストライアーだが、喜ぶのはまだ早いとばかりにカイザーへと向いた。
 カイザーはスマトラとクールヘッドにより、既に蜂の巣の様な状態になり、全身から火花が散っている。機体各所が大きなダメージを追っている事は明らかだった。おそらく一矢報いんと、黄金の甲冑を思わせるACで旋回を続け、ショットガンや拡散投擲銃、あるいは両肩のミサイルを直撃させて逆襲を狙っているのだろう。
 だが、いくら高い攻撃力を持っていても、ブースターを2機とも破壊・損傷させられ、脚部の関節もやられてしまった今となってはどうしようもない。時速80キロにまで速力を低下させられたカイザーは、成す術もなくスマトラの繰り出す赤紫色のレーザーブレードで両腕を斬られ、クールヘッドからは執拗なまでの火炎放射とマシンガン攻撃を受け続けていた。
 爆発炎上は時間の問題であろう。
 改めてアストライアーはタイラントの残骸に眼をやる。既にズタボロのコアから、驚いた事に人が這い出して来ている。だがその様子を見て、アストライアーは憤慨した。
 そして、即座にヴィエルジュのコックピットを開放、怒りに任せて飛び出した。
「ふざけた真似を……!」
 男はアストライアーの姿に気付いて逃げようとしたが、すぐに取り押さえられた。そのまま顔面を押さえられる。
「どう言うつもりだ、BB!!」
 アストライアーの記憶にあるBBは、マホガニー色の肌を持つスキンヘッドの巨漢だった。この男も同じ特徴を有していたが、その顔面は熱か何かで捲くれ上がり、白い本来の肌が露出していた。
 捲くれ、破れた顔面をアストライアーは強引に引っ剥がした。その下に現れたのは、BBとは似ても似つかない、白いスキンヘッドの男だった。
「この粗悪品のそっくりさんを差し向けるとは!!」
 怒りで握り締められたアストライアーの拳がバキバキと鳴る。
「ま、待て! 俺はBBじゃない!」
「そんな事はガキでも分かる!」
 アストライアーは偽BBの襟首を掴み、タイラントだった残骸に力任せに押し当て、黒百合を抜刀して首筋に押し当てた。
「貴様の様な偽者に手間を掛けてられん!」
「待ってくれ……殺さないでくれ……!」
「なら話せ! 貴様のオリジナルはどこだ!!」
 眉間に皺を寄せ、歯を剥き出しにしてアストライアーが迫った。鬼気を放つ女剣豪を前に影武者は完全な恐慌状態となり、恐怖で全身を震わせた。余程アストライアーが恐ろしかったのか、マトモに声を発する事が出来なくなるほどだった。
「たったたたたた頼むあああアキラに殺されかけた上にこんなこここここ……もっももももびっびびびいっびいいには、ぶかががががががが……」
 ろれつの回らぬ言葉を発し、影武者は糸の切れたマリオネットの如く崩れた。
 だが、アキラが相当凄まじい事をやらかして、BBとロイヤルミスト以外は本当に全滅状態にした事が、ここでようやく、アストライアーの目にも明らかになった。そして、今度こそBB本人が動かざるを得ない状態になるだろうなとも、彼女は見た。
 いずれにしても、所詮偽者ごときに負けてなどいられない。あからさまに質の劣る部類であれば尚更だった。
 失神した影武者をタイラントの残骸近くへと遺棄し、アストライアーはヴィエルジュへと戻った。


 さしたる損害の無いヴィエルジュを丘から下ろした時、カイザーは既にブラスとグローライトの手により、ズタボロの残骸に成り果てていた。爆発こそしなかったものの、両手足が無残に千切れ飛び、仰向けで地面に転がされたカイザーには、かつての威厳など微塵も見られない。
「何にしても助かった……」
 アストライアーがぽつりと呟いた。
「いや、オレ達の方こそ助かった。あのままだったらホスタイルにやられてたかも知れなかった」
「何か礼をしないとな」
 グローライトとブラスはそう言ったが、アストライアーはいらぬ気遣いだと流した。
 直後、近くに転がっていたピンク色の残骸が軋んだ。反射的に振り向いた先で、ハッチが開かれ、汗まみれでぐったりした様子のカリンが、湯気を立てながら這い出して来た。
「あの攻撃の中で生き延びたとは何と悪運の強い奴なんだ!」
 嫌悪感も露わにアストライアーが叫んだ。
「まあ、そういう事もあるだろうな」
 ブラスは感情を抑えたかのように低く言い放つと、手元の通信モニターに向けて言った。
「ロイヤルミストからの依頼は虚偽だった。今から戻る。輸送ヘリは手配しなくていい」
「依頼?」
 疑問を抱いたアストライアーに、グローライトが横から説明する。
「ロイヤルミストから内通者を消せと言われ、厄介だなと思ってブラスを雇った上で、いざ来たら陣営に加われと恐喝して来やがった。そしてそれを拒否したらホスタイルを差し向けて来た」
 そしてアトミックポッドから逃げて来た先でアストライアーに出会い、こうして運良く助かったと言うのが、グローライトの話だった。
「兎に角私は戻る。こんな所に長居などする気はない」
「同意見だ」
 ブラスも頷いた。
「で、この元メイドはどうするんだ?」
 グローライトが、ハウスキーパーの残骸の上に伸びているカリンを、愛機の左腕で指し示した。その左腕に接続されていた軽量レーザーブレードMLB-LS/003が、煤けて火花を散らしている。
「しょうがないな」
 ブラスが溜息をついた。そして、クールヘッドを近くまで持って行くと、コックピットハッチを開き、クールヘッドからハウスキーパーの残骸を伝う。そしてバールをあてがってハッチを開き、引きずり出したカリンを背負ってコックピットへと戻った。
「トレーネシティまではそんなに距離がある訳でもないし、見殺しにしてオタクどもに文句言われるのも気持ちが悪いし、とりあえず助けてやるか」
 カリンを乗せ、ブラスはクールヘッドを再び動かす。流石に人間二人が乗っていると、ACのコックピットは窮屈極まりなかったが、かと言って見殺しにすると、カリンのファンである大量の与太者からボロカス言われるのは必定。我慢するより他なかった。
 しかし、他のレイヴンはその事に何も言わない。ただ、付かず離れずと言った間合いで、セクション間連絡通路へと愛機を飛ばす。他人と距離を置きたがるアストライアーですら、他の2人を置いて一足先に行ってしまう事はなかった。
 戦いが終わったと言うのに、インスタントのACチームは解散しようとせず、3機ともBBから送られてくるかもしれない新たな襲撃者や、管理者実働部隊の来襲を警戒しながら、セクション間連絡通路を抜けた。彼らは、ホームタウンであるトレーネシティやその周辺都市に戻るまで、本能的に周囲を警戒し、互いに離れ過ぎない様に戻っていった。


 その戦いの翌日。
 冥界の王を模った石像にも負けぬ体躯のBBが、アストライアーとロイヤルミストらの戦いを、無言で見詰めていた。その顔は嫌悪感と怒り、そして背後に感じる人間的な寒気に震え、硬く握られていた手を覆う皮製のグローブが、締め付けられるような音を上げる。
「たかが小娘一人殺す事も出来んのか、貴様は!」
 視線に当てられ、ロイヤルミストは無言で肩をすくめた。
 影武者を使ったくせにこの体たらくは何だと、彼は静かに憤っていた。もう自身の戦力は限られていると言うのに、この男は何を考えているのかと。
 だからこうして、部下をわざわざ叱責する羽目になっていたのである。
 そんな彼は静かに立ち上がり、カーテンの隙間から外界を見た。相当の怒りを買ったかとロイヤルミストは察した。本当に失望している時の彼は、手下を殴る事すらしない事が分かっていたからだ。
「俺の出番が……来るとはな……」
 これまでBBは何度も、アストライアーの活躍とその戦いぶりを、苦々しい思いで見つめていた。本来の計画上、彼はこの取るに足らない存在であった筈の小娘を葬る事など、造作もなかったはずだ。
 実際、デビュー当時二十歳を迎えてすらいなかった、しかも実戦経験皆無の娘など、自分が握っていた強大な権力と資金力を以ってすれば、簡単に握りつぶせる筈だった。彼女の父親がそうやって、自分の謀殺の手に倒れたのだから。
 だが彼の目論みは、突如アリーナに介入して来たアキラとその仲間達によって悉く外れ、それを蹴落とす事に力の大部分を注ぎ過ぎてしまった。遂にはミラージュに介入して彼をイレギュラー認定し、企業による大々的な粛正を行わせるまでに持ち込む事は出来たが、それも挙句実働部隊の出現などで、傘下のレイヴンを悉く失う事で失敗に終わってしまう。
 そして今――BBは認めたくなかったが、暴帝が築き上げて来た王国は崩壊の時を迎えつつあった。
 最早傘下のレイヴンに目ぼしい者は残っておらず、それもあの女剣士によって悉く返り討ちにされている。かくなる上は自分が動くしかないが、しかし彼は追い詰められた人間の臭いを全く漂わせない、異様な自信に満ちていた。
 ベッドの上で死んだように動かなくなっている幼女が、その根拠だった。確実に女剣士を葬るための切り札を見下ろし、暴君はディスプレイの中のアストライアーへと向けて言い放った。
「俺を怒らせた事を、あの世で後悔させてやるぞ小娘!!」
 彼は確信していた。この少女を矢面に出せば、あの女剣豪を殺す事が出来ると。
 怒りと狂気の入り混じった顔を、ロイヤルミストは無言で見ていた。その彼が何を考えているか、目先の事に気をとられていたBBは知らなかった。
 彼が今回繰り出した影武者は、本来はアストライアーに向けるべき存在ではなかった。あの影武者たちは、本来ならもっと温存しておきたいと彼は思っていたのだ。
 BBに刃を向けるべき時まで。
 しかし、アキラによって影武者を全滅させられたBBが、手を打てとあまりに殺気立てていた為、やむを得ず投入することになってしまった。
 あの時で見限るべきだったと自省したロイヤルミストだったが、後の祭りである。
 そろそろ潮時か。アストライアー抹殺を誓うBBを前に、ロイヤルミストは無言のまま、己の決意を固めた。
 その上で、BBに提案する。
「俺がアストライアーを誘き出す。偽の依頼でな」
12/07/28 13:05更新 / ラインガイスト
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■作者メッセージ
 まず一言。

 BBとの決戦を期待してた方々、

 土下座でごめんなさいorz

 確かに私自身も、本来ならここでBBとの決着かと行きたい所でしたが、ロイヤルミストの存在があった事を思い出し、「第1の部下と戦ってないってのは何事か」と言う罪悪感があったので、急遽彼との対決を執筆しました。
 そして、大物ならばやるであろう「影武者」も使うはずだ、それが今までなかったというのもちょっと味気ないかなと思い、ここで登場させています。
 ただBBはともかくロイヤルミストの影武者、と言うのがヒネクレているかと思います(笑)

 また、以前の第3アリーナ情勢について、ブラスの知っている事と言う形で補筆を入れています。
 以前が上位ランカーとその周辺に限っていた事ばかりだったのですが、今回は死亡・負傷・行方不明者を挙げ、ラストレイヴンの如き荒れ様(ぇ)を見せる本作における、原作キャラ達の行方を記しました。
 名前のなかった原作ランカーの面々は、「何かしらの形で健在」だと思って下さい。

 兎も角、BBとの決戦と称しておきながらあっさり撤回する形に……正直スミマセンでした(平謝)。

 次回では、今度こそ本当に、正真正銘の決戦になります。

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まろやか投稿小説 Ver1.50