連載小説
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失われた影
人を連れて移動しているはずなのにそんな気がしない。
箒にまたがった魔理沙は静かにそんなことを考えながら風を切って目的地に急ぐのであった。
何時もと変わらないようにやれば良いのだ、今まで考えていたことを頭から消し去ってただひたすら目的地に向かうのみ。
眼下には森が広がっていてぽっかりと開けた場所が見えてきた、我ながら早い物だ。
滑空状態に入ってゆっくりと着地していく、何時も通りの見慣れた光景だ。
着地した側には古ぼけた家のような物が立っている。
少し色あせていて何十年かの長い月日が経っているのが目に見えて分かる。
全く人の気配が無く、深い森の中と言う事もあって人が住んでいるとは思えないような場所である。
「着いたぜ?」
「・・・あら?魔理沙?・・・・!?」
魔理沙はスタッと神社の時と同じように降りたって下を向くように正面にある自分の影に対して話しかけるのであった。
家の中に居た者は来客が来たのに気づいたのか、扉が古めかしい音を立ててゆっくりと開くのであった。
扉から出てきたのは金髪で肌の色は薄く、一見すると人形のような姿をしている女性であった。
服装は先ほど言ったとおり人形っぽく、青いワンピースに白いケープ、頭には赤いカチューシャをつけていた。
出てきた女性は離れた場所に居る客が誰かを確認できたのか静かに言葉を呟くように言うのであった。
そして青年は自分に呼びかける声が聞こえたので、術を解いて魔理沙の影から離れるのであったが、端から見た感じでは、いきなり現れた黒ずくめの男が魔理沙を襲おうとしている様にしか見えないだろう。
まあ、運悪くその様に見えたのか家から現れた女性は絶句したのであった。
「魔理沙から離れなさい!」
「え?」
「おいおい、アリス、コイツは・・・」
家から出てきた少女は高い声を上げて青年に対して呼びかけるのであったが、青年は呆けたような感じで首を傾げて後ろを向くのであった。
呆けていられるのも束の間で家から何やら可愛らしい人形が1体、出てくれば、少女の前で何やら力を溜めているように見えた。
何となく不味い予感がすると思っていた束の間、人形の中心に光が集まれば青年に向かって綺麗なピンク色の光線が発射されるのであった。
青年は慌てながらも横に飛び退くような形で地面に向かってダイブして難を逃れるのであったが、魔理沙の方は青年の所為で前が見えてなかったのか、モロに光線を受けて後ろに吹き飛んで後ろにあった木に叩き付けられてズルズルと地面に座り込むように倒れた。
「よくも魔理沙を!」
「それはお前が・・・」
「五月蠅い、【魔符[アーティフルサクリファイス]】!」
「影!・・・・!?」
青年は地面に伏せながらも相手の方を見るのであったが、家の入り口、近くにいる少女は怒りに震えているようで、青年に対して怒りの言葉を言うのであったが何処か間違っているような気がするのは気のせいだろうか。
青年は気づいているのか、ゆっくりと立ち上がりながら冷静に相手に対してフウと息をつきながら呆れたような感じで突っ込みを入れるのであった。
しかし、少女の方は無視して青年に対して怒りをぶつけてくるのであった。
話しても聞きそうにないし、どうすれば良いのか、このまま倒れたまま両手を挙げて降参のポーズを取るべきなのかと青年は思いながらも、少女は何かを此方に投げてくるのであった。
そしてぽふっと何か軽い物が目の前に落ちる音がするのであった。
人形?青年はそれを見て居るだけで動かなかったが、本能的に察知したのか、何かの術を行使しようとするのであったが、発動しなかったのか青年は慌てて自らの足下を見るのであった。
だが、それと同時に人形が思いっきり派手な音を立てて爆発するのであった。
青年は勿論、まともに吹き飛ばされて、魔理沙と同じように後ろに吹き飛んで頭から木にぶつかり、そのまま木にもたれ掛かるようにして倒れてしまうのであった。
自身の影がない・・・どういうことだ。
「魔理沙〜!」
青年が聞いた声はそれが最後であった、意識が薄れていく・・・
すると真っ黒の空間の中の正面に自分が居た。
鏡で全身を見たことがあるから確かなことだ。
しかし、これは鏡を見ているわけではなく、自分は自分と違う動きをしている。
目の前にいる自分は不気味に笑い声を上げながら此方に近づいてくる・・・
逃げようとしたが、金縛りに遭っているのか、指1本ピクリとも動かずそのまま直立したまま動くことができなかった。
そして目の前の自分はローブの中に手を突っ込んで1本のナイフを取りだし、青年の喉元に突き刺そうとした。
「おい、起きるんだぜ!」
「な!?」
「痛てててて、酷いぜ・・・」
「ああああ、痛ててててて・・・」
そう思った矢先に身体が乱暴に揺り動かされるのを感じた、反射的に上半身を起こせばゴンという嫌な音が響いて閃光を感じるのであった。
痛い、青年は寝転がったまま額を抑えるのであったが、のぞき込むようにして青年の身体を揺り動かしていた魔理沙も額を抑えているのであった。
ムーンと魔理沙はお互いに額を抑えたまま動かないで居たが、ムーンは言葉を言いながらも状況を素早く判断しているようであった。
ベッドに寝ているのだろうか、背中に柔らかな感触がある、上には木目のある木が見えて此処が家の中だと言うことが分かった、吹き飛ばされて気絶した後に家の中に入れてくれたのだろうか。
そんな記憶が錯綜しながらも大切な事を思い出すのであった。
自らの影が無いためにあの術が発動できなかったことだ。
影は何処に行ったのだろうか、青年はそんなことを心の中で考えて居るのであったが・・・
「おーい、アリス、ムーンが、気がついたぜ!」
「・・・ごめんなさい、私、てっきり・・・私、アリス・マーガトロイド」
「シャドウ・ムーンだ。良いんだ、分かってくれれば・・・あ、」
魔理沙は大分、痛みが治まったのか、部屋の外に聞こえるような声で呼びかけるのであった。
そうすれば先ほどまで戦っていた女性が少し恥ずかしげに部屋の中に入ってきて自己紹介と同時に青年に対して謝罪の言葉を言うのであった。
青年は普通に形式的な言葉を返すのであったが、最後にタイミング良く腹が鳴ってしまうのであった。
「まあ、お詫びの印として何か食わせてやれよ」
「分かってるわよ・・・」
少しの沈黙の後に魔理沙は軽く笑いながら、アリスに対して命令するような言葉を言うのであった。
アリスの方は命令されるのが不服なのか少しムスッとしたような感じで言葉を言いながらも指をパチンと鳴らすのであった。
指を鳴らせば、戦った時と同じような人形が3体、部屋の中に入ってくるのであった。
人形2体は共同で皿を持ち、もう1体はスプーンを持ってきた。
人形は青年の膝まで移動して青年は人形から皿とスプーンを受け取るのであった。
皿には美味しそうなキノコの入ったリゾットが盛られているのであった。
「おお、美味そうだな。頂こう・・・美味いな。」
「そう行って貰えると嬉しいわ。」
「私にも一口!」
「アンタは毎日、食べに来てるでしょ?」
青年はアリスの料理に感嘆の声を上げながらも、そのまますぐに食べることはせずに手を合わせてから料理に手をつけるのであった。
人形が部屋から去っていくのと同時だろうか、青年は一口、料理を食べた後に更なる感嘆の声を上げて、隣にいるアリスに対して料理の感想を言うのであった。
アリスの方は褒められて嬉しいのか軽く微笑んで青年の食べている様子を見るのであった。
魔理沙の方は美味しそうに食べている青年を見て少し不平の言葉を言うのであったが、アリスにツッコミを入れられて撃沈してしまうのであった。

『魔符「アーティフルサクリファイス」』
爆弾を抱えた人形を投げつけるアリスの技。
ちなみに魔法で爆発させているのではなく、火薬を使っており、威力は手榴弾と同等?
手榴弾と違うのは破片が飛ばず、殺傷能力がやや低いこと。

http://dic.nicovideo.jp/a/アリス・マーガトロイド
「アリス・マーガトロイド」
能力:魔法を扱う程度の能力、人形を操る程度の能力。
魔法の森に住む生粋の魔法使い。
性格はツンデレではあるものの面倒見が良い。
魔理沙のことが好きだったりする。
11/09/12 14:41更新 / シャドウ
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■作者メッセージ
画像をそのまま確かに著作権の問題があるかもしれませんのでURLに変更しましたorz
ちなみに自キャラの画像はありませんorz
自分は画力どころか絵心すらありませんので、書けませんorz
誰か書いてくれないかなーなんて・・・

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まろやか投稿小説 Ver1.50