杉並区議会の総務財政委員会・区民生活委員会連合審査会が、2008年7月16日、午前10時から午後2時過ぎまでおこなわました。
杉並区から最高裁決定と訴訟費用の説明のあと、今後の対応が以下のように表明されました。
2 今後の対応
区は一貫して「法の範囲内で、できる限り個人情報保護を図る」という姿勢を貫いてきた。こうしたことから、このたびの最高裁の決定に従い、住基ネットへの参加準備を開始する。
(1)参加するにあたり講ずる措置
1)健全なIT社会実現に向けた自治体の研究提言機構の創設
これまでの住基ネットへの取組をふまえ、健全なIT社会の実現に向けて、最も住民サービスに直結した自治体の現場から、国に先立ち様々な提言を行う自治体相互の研究提言機構を創設する。
2)区における運用を監視する第三者機関の設置
区における住基ネットの運用状況を監視し、その結果を公表し、区民からの苦情・要望を処理するとともに、必要な改善の勧告等を行う第三者機関を設置する。
3)緊急時対応策の構築
住基ネットにおいて、区民の本人確認情報の漏えい又は不適切な利用が明らかとなった場合などにおいて、住基ネットからの切断等を含め、取るべき対応策を明確に定めておく。
(2)参加時期等
今後、国、東京都、LASDEC(地方自治情報センター)等との連絡調整を行い、平成21年1月参加に向けて準備を始める。
1)住基カード・電子証明書の発行、広域交付等の業務開始
平成21年1月(予定)
2)本人確認情報の行政機関等(パスポート、年金の現況届等)の利用時期
パスポート 平成21年1月からの見込み
年金等の現況届 平成21年3月分からの見込み
3 その他
平成20年7月21日(月) 区広報掲載
7月24日(木) 個人情報保護審議会報告
8月 1日(金) 区広報、区HPに掲載
委員からは、次のような質問や意見が出されましたが、今日は報告の場ということで終わりました。
質疑の中では、こんな説明がありました。
もっとも年金についての意見は、大部分、現況届がきたが住民票コードをどう記入すればいいか、の問い合わせで、説明するとたいてい納得してもらえるということで、要するに、区民からの「接続しろ」という苦情は、ほとんどない、ということのようです。
区の対応を支持してきた会派からも、区民の意見を聞く場をつくれ、とか、非通知希望者には個別に説明して理解を得る努力を、とか求める意見が出されていました。
いままで、あれだけ住基ネットを問題にしてきたのに、区長の「政治家としての考えは変わらないが、行政官としては法にしたがう」ということで、最高裁決定の法的拘束力の説明も曖昧なまま、ひたすら事務的に参加手続きを進めていくことに、腹立たしい思いがします。
区の対応策についてはあまり論議されませんでしたが、「1)健全なIT社会実現に向けた自治体の研究提言機構の創設」については、これから区内部で検討会を立ちあげ、他の市区町村と共同で参加を呼びかけ、自治体の立場から年次レポートやシンポなどで提言したい、としていました。
「3)緊急時対応策の構築」については、自治体裁量での切断は高裁判決で否定されたのでは、と質問されて、裁量が否定されたのは「段階的参加」についてで、事故の際の切断は国の基準にもあるので不可能ではない、という説明。
「法の範囲内」でできることでも、どんどん後退しています。
当初1)は「自治体共同設置による住基ネット監視の第三者機関の設置」と説明されていたのが、「健全なIT社会実現に向けた研究提言機構」になってしまいました。
3)は、国の技術的基準で定められた緊急時対応措置のレベルの話なら、それを講じておくのは、接続自治体の当然の義務であり、それをわざわざ書いているのは、どういうつもりでしょうか。区の裁量での切断ができるのなら、不参加継続すればいいではないか、と言いたいところです。
横浜市のように、住基ネットの「安全性が確認された」という立場ではなく、いぜんセキュリティ上の問題や個人情報保護の問題はあるとの認識が示され、利便性が実現できていないことも認めています。社会保障カードへの心配も表明されていました。それならば、もっと真剣に対応措置を検討してから、参加を提案すべきではないか、と情けない思いがしました。