600万人、年金現況届なお必要
受給者2割…住基ネット不一致

住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)の活用で今後不要になる年金受給者の現況届(年1回提出)について、この恩恵を受けられない人が全受給者の2割にあたる約600万人に達することが31日、社会保険庁の調べで明らかになった。住基ネットが手続きの簡素化に十分対応できないことで、新たな批判を浴びそうだ。

現況届は受給者の生存を確認するもので、誕生月の前月に受給者に用紙のはがきが届く。受給者は50円切手を張り、返信しないと年金の支給が止まる場合もある。

社保庁は受給者の手間を省くと同時に、現況届の印刷や送付など年間約25億円の支出を減らせるとして、今年12月生まれの人から住基ネットを活用するための準備を進めてきた。

しかし、今年3月末現在の全受給者(約3180万人)の情報を住基ネットの個人情報(住所、氏名、年齢、性別)に照会したところ、約2580万人が住民票コードと合致しただけだった。

主な原因は、住所の字名などの表記違い、氏名の新字体と旧字体の違いなどにある。

また、年金の受給では実際に暮らしている「居所」を届けるため、住民票の住所と異なる老人ホームや子供の家などで暮らす人も、照合ではじかれた。

住基ネットで照合できなかった人は今後も現況届の提出が必要になるため、社保庁は現況届のはがきに「住民票コード」の記載欄を設け、受給者に記入を求めていく。

ただ、市町村が本人に伝えたコードを知らない受給者は、改めて問い合わせしなければならず、自治体によっては数百円の手数料を払って住民票の請求が必要になる。

ほかにも、住基ネット対象外の在日外国人や在外邦人、住基ネットに参加していない東京都杉並区や同国立市、福島県矢祭町の3自治体の住民は、今後も現況届を出し続ける必要がある。