河井寛次郎語録 Ⅱ
もの買つて来る 自分買つて来る

みにくいもの見えないめくら
美しいものしか見えない眼

美しいものしかない
みにくいものはまよい

美はすべての人を愛してゐる
美はすべての人に愛されたがつてゐる
美はすべての人のものになりたがつてゐる

追えば逃げる美
追はねば追う美

美を追はない仕事
仕事の後から追つて来る美

おどろいてゐる自分に
おどろいてゐる自分

何といふ大きな眼
この景色入れてゐる眼

石が歩いて来る
石が笑つて来る

自分でない自分
河原の石の中の石ひとりの仕事でありながら
ひとりの仕事でない仕事

誰ものほんとのものが
彼を借りてゐる彼

暮しが仕事 仕事が暮し

雲は空がすきだ 浮かんでゐられる處だからだ
雨は土地がすきだ 降つて落ちられる處だからだ
自分はひとがすきだ ひとであればある程自分だからだ

自分であればある程
自分はひとだ


なにもかもこの一つにかける
生き甲斐

何といふ今だ 今こそ永遠

自分は過去を無限の過去を生きて来た
自分は未来を無限の未来を見るものだ

自分に生きてゐる先祖
自分に生きてゐる子孫

時にゐない人 處にゐない人
時と處にゐない人

ない時にない處にゐない自分
ない自分を摑まえてゐない自分

助からないと思つても助かつてゐる

道を歩かない人
歩いたあとが道になる人

はてしない土地
新しい世界
               ――身體

この世このまゝ大調和





花を見てゐる
花も見てゐる
後編 いのちの窓

すべてのものは 自分の表現

何もない 見ればある

ないものはない 見るだけしかない

見つくせぬものの中にゐる
見つくせず

見られないものばかりだ―見る
されないものばかりだ―する
きめられたものはない―きめる

限りなのい高さ―人間の登れる高さ
果てしのない遠さ―人間の行ける遠さ
何といふ深さか―人間ののぞける深さ

高きに灯ともす
人間の高さにともす

持たないものはない―さがすと出て来る
知らないものはない―知つたものがゐる
出来ないものはない―出来るものがゐる 
                     ―身體

見えないのに見てゐる
持たないのに持つてゐる
行かないのに行つてゐる

見えないもの 見える眼
聞こえないもの 聞こえる耳
知らないもの 知つてゐる
                    ―身體

自分で作つてゐる自分
自分が選んでゐる自分

向うの自分が呼んでゐる自分
知らない自分がまつてゐる自分
何處かにゐるのだ未だ見ぬ自分

この世は自分をさがしに来たところ
この世は自分を見に来たところ

どんな自分が見付かるか自分

どこかに自分がゐるのだ―出て歩く

新しい自分がみたいのだ―仕事する


仕事が仕事をしてゐます
仕事は毎日元気です
出来ない事のない仕事
どんな事でも仕事はします
いやな事でも進んでします
進む事しか知らない仕事
びつくりする程力出す
知らない事のない仕事
聞けば何でも教へます
頼めば何でもはたします
仕事の一番すきなのは
苦しむ事がすきなのだ
苦しい事は仕事にまかせ
さあさ我等は楽しみませう
仕事が仕事をしてゐる仕事


私はあなた
私以外に見えないあなた


あなた    わたし
    の蕾は    の中に咲く
わたし    あなた


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