行殺(はぁと)新選組 りふれっしゅ

土方大作戦7 『出張サービス大作戦☆』


 その日、新選組副長 土方歳江は夜遅くまで算盤そろばんはじいていた。何をどう計算しても大赤字なのである。新選組が商人から無理やりお金を借りる押し借りを行ってるのは有名だが、それではキンノーとやってる事は変わらない。そこで芹沢さん(新選組局長 カモミール芹沢)が会津藩に直談判して(芹沢さんは会津藩主 松平けーこちゃん様と親友ダチなのだ)、会津藩から活動資金がもらえるようになったものの、それは来月からの話である。しかも支給された活動費は当分の間、借金の返済に当てねばならない。そしてその間にも支出が減らないのでやっぱり大赤字なのだ。一人で無駄な出費を続けてるのは芹沢さんなのだが、その芹沢さんが会津藩からお金をもらう段取りを決めて来たので粛正するわけにもいかないし・・・。
「そうだ

 突如、天啓のようにグッドアイデアがひらめいた。

“新選組には様々な個性を持った美女や美少女がいるんだからそれを売ればいいじゃないか!”

 名案である。とりあえず当座の方針は決まったので、皆には明日話すことにする。今夜は枕を高くして眠れるというものだ。



 翌日の朝礼。

「我が新選組には幸いにして美女や美少女が多い」

 土方歳江は、いきなりこう切り出した。この言葉に皆がまんざらでもない表情をする。

「そこで、その新選組の特性を生かし、優れた人材を売りに出そうと思うのだが、どうだろうか?」

「ちょ、ちょっとトシちゃん!?」

「歳江ちゃんが壊れた?」

 上座に座る近藤・芹沢が驚いて声を上げる。居並ぶ副長助勤の連中も同じだ。島田は鼻血を吹き、斎藤はおなかを押さえてうずくまった。

「沙乃はお子様だから売れ残るんじゃないかなあ?」

 が、そんな中、永倉アラタがのんきな事を言う。

「なんですって!」

 沙乃が目を三角、顔を真っ赤にして怒る。・・・が、そこは怒る所なのだろうか?

「大丈夫だよ、沙乃ちゃん」

 藤堂たいらが笑顔で答える。

「世の中、色んな趣味の人がいるし、今は規制が厳しいから沙乃ちゃんは高く売れるよ」

「なんか、それ、うれしくない・・・・」

「そーちゃんは高く売れそうだよね。メガネ・病弱・お兄ちゃんの三種の神器があるもの」

「けほけほ、そんな事ないです。あたし人気ないですし。
 へーちゃんこそツインテール萌えの人が多いから高値で売れると思いますよ」

「そうかなあ」 相変わらず笑顔の藤堂。

「そこ喜ぶトコと違うと思う」 小声でつっこむ沙乃。

「でも一番高く売れるのはアタシよね。一番美人で一番ナイスバディなんだから☆」

「あ、でもでもあたしは黒髪ロングストレートの日本美人だから異人さんに高く売れるよ」

「いや、知的な美人という点では私が新選組一だと思うのだが」

「だって歳江ちゃん性格が悪いじゃない」

「顔はいいぞ。それに芹沢さんには負けるが、近藤には勝ってる」

「でも小さい方が好きっていう人多いんですよ」

つぼみ萌え〜」

「それだと沙乃がトップだな」

「うれしくない〜」

 なんか会話が暴走を始めた。



「人を売るというのはどうだろうか? 貴重な隊士が減ってしまうぞ」

 副長 山南敬助の言葉に一同が正気に戻る。

「そ、そうね。山南さんの言うとおり。みんな仲間なんだから」

「ふむ。売るという言い方がまずかったな。
 貸し出すだけにしよう。レンタルだな」

「は〜い。アタシ一晩100両ぽっきりでレンタルされて来ま〜す」

「え”〜、沙乃は、やだな〜」

「任務だぞ」 と土方。

「そっか、任務なら、しかたない、しかたないよね」

「へーは、あきらめるのが早すぎ」

「こほこほ。あたしも病弱だから・・・」

「そこがいいんじゃないの!」 芹沢が力説する。「お兄ちゃんにたっぷり看病してもらうのよ!」

「けほけほけほっ。なんかレンタルされるのって物みたいであたしはイヤです」

「では人材派遣だ。これなら文句はなかろう」



「あの・・・土方さん」

「何だ、島田?」

「その、道義的な問題はどうなるのでしょうか?」

「道義的?」

「そうよ! 武士が商売しちゃいけないのよ!」 芹沢が思い出したようにそう言う。

「武士の人材派遣は、傭兵や用心棒と同じようなものではないですか、芹沢さん」

「そ、それはそうだけど・・・」

 今日の土方は冴えている。芹沢が言い負かされている。

「しかしですね、そういういかがわしい目的でウチの人間を出張させるのはどうかと思うのですが?」

「いかがわしい? どういうことだ?」

「つ、つまり、お布団の中であんなことやこんなことをですね」

 島田の言葉に全員が顔を赤らめる。

「ば、バカ、島田、何て事を言うのよ!」

「だって、そういう事だろ!」

「剣術や槍の稽古がいかがわしいのか?」

「は?」

「うちには刀、槍、銃に大砲。様々な武器の免許皆伝者がいるではないか」

「ちょ、ちょっと待って下さい! それでは出稽古に出ると!?」

「そうそう。その出稽古だ。その単語がなかなか出なくてな。度忘れしてたようだ。
 今の世は政情不安で武道を習おうとする町人や商人が数多い。市場しじょうは拡大傾向にある」

「じゃあ、美女や美少女とか、胸の大きさが何の関係があるんです!?」

「世の中じじいやおっさんの師範は数多いが美少女の師範は圧倒的に少ない。
 よって我々が市場しじょうを席巻できるはずだ」

「だったら道場を作った方が早いのでは!?」

「そんな金があったら人材派遣などしないぞ」

「うっ、それは、確かに・・・・」

「ところで、島田、今の我々の会話から、何かいかがわしい事を想像したのではあるまいな?」

「だ、だって、行殺は18禁ゲームじゃないですか!」

「島田、さいてー」

「お兄ちゃん、不潔です」

「島田くんってそんな人だったんだ」

 皆の冷ややかな視線が島田に浴びせられるが、絶対みんな勘違いしてたに相違ない。

「というわけで、明日から非番の者は出稽古にでるよーに」

 なんだかうやむやの内に朝礼は終わってしまった。



 この出稽古、意外なことに一番稼いで来たのは予想に反し、永倉アラタだった。

「ちょっと、アラタが一番ってどういう事よ?」

 芹沢は性格は問題ありだが、神道無念流の免許皆伝だし、近藤は元々天然理心流の道場主、しかも2人とも美人でナイスバディなので結構注文が多かった。そーじは顔はかわいいのに稽古の時に容赦なく相手を叩きのめすので敬遠されていた。沙乃は見た目がお子様なので信用されなかった。割とまともに出稽古商売が成り立ったのは、近藤・芹沢・藤堂ぐらいのものである。あと山南敬助。彼は教え方がうまかったので、美女とかに関係なくまともに勝負をしていた。ちなみに土方歳江は免許を持ってないので教える事ができなかった(教員免許みたいだ)。
 だが、それらを圧倒的に引き離して永倉がトップなのだ。

「アタイが道場に行って稽古をつけてやると、たくさんお金をくれるんだ」

「?」

「看板娘になってくれって言われて遊びに行くとお小遣いをもらえるし」

 それは看板娘ではないなと沙乃は直感する。

「アラタ、それ道場破りと間違われてるわよ・・・・」



 いろいろあったが、とりあえず会津藩から活動費が支給されるまでの1カ月はこれで乗り切れたのである。

(おしまい)


(あとがき)
 かわぴょんです。アイデアの神様というのは、どこにでも転がっていて、作者が気付くのを待ってます。閃いたらパパパーっと作品になります。今回のアイデアの元は近衛様の書かれた『仕置人山崎雀』の第1話です。この中に土方歳江49両というのがあるのですが(必殺仕置人なので49両で土方殺しを請け負うのですね)、この作品のおまけをいつものよーに私が書いたのですが、このおまけSSを膨らませて、SSを1本書けるんじゃないかと気付いたので、書いてみました。
 今回、18禁ではないエロい作品を目指しました。どうでしょうか?


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