12月15日(木) “サンパウロ総領事館と厚労省に質問と要請をするが、すべて否定され…”

 日本は本格的な冬、大雪が降っているようですがいかがですか。
 こちらもサンパウロは何年振りかの寒さで昨日までは冬でしたが、今日は初夏らしくなってきています。

 11月30日から在外の被爆者が大使館、領事館で諸手当の申請手続が出来るようになりました。
 しかし蓋を開けてみれば、日本に行けない被爆者は今回も差別を受けています。
 勿論韓国や米国では取扱が違いますが、ほとんどの日本の報道機関は実情を知らないと思います。
 下記を読んでみてください。

@ 12月6日 サンパウロ総領事館に質問(要請を含む) ⇒ 8日 総領事館から回答

 在ブラジル原爆被爆者協会では戦後60年たった今年、11月30日から在外の被爆者手帳のある被爆者に対し「日本国外にお住まいの被爆者の皆様へ」と、各種手当が海外から申請出来ると書類が郵送されて来ました。
 しかしその内容について不明な事があり、今月6日、サンパウロの総領事館に行き質問を致しました。

≪質問内容≫

 1 被爆者健康手帳を持っていながら、老齢で、あるいは病弱で日本に行けない被爆者が健康管理手当の申請に当り、事前に健診を行う場合その費用支給について、今回国別の医療機関リストに記載されています病院に行けば、健康管理手当申請の為の健診は無料で受けられますか?(日本では被爆者手帳があれば無料)

 2 被爆確認証を受け取っている被爆者は、このままでは何の役にも立たないので、ブラジルに来年1月、長崎あるいは広島から各種手続の指導に係官が総領事館に派遣されると聞いていますが、その時手帳発行の事務を行っている係官を派遣してもらい、確認証を持っている被爆者に面接していただき、日本に帰ってから被爆者手帳を発行し郵送して頂けないでしょうか?

 3 ブラジルでの被爆者健診を、今までの2年に一度日本から来られる健診団だけの健診でなく、日本国内で行われている年3回の被爆者健診と癌検診をして頂けないでしょうか?

  4 各種書類の申請に当り、領事館で在留証明書を発行していただかなければなりません。しかし原爆被爆者が在留証明書を取る時はR$32,00の手数料を取られます。厚生年金、軍人恩給などを支給されている人には、在留証明書は無料で発行されています。何故被爆者だけは手数料を支払わなければならないのでしょうか?

 上記質問を担当領事に話し、8日、電話で厚生労働省からの回答を頂きました。
 1〜4項まで全部否定されました。

1項  自費で健診費用を支払うように。
2項  日本に来なければ被爆者手帖は発行できない。
3項  2年に一度しか健診は出来ない
4項  領事館では費用は頂きます。費用を払いたくない人は、ブラジルの他の機関が発行した書類で間に合わせて下さい。

 1項の事ですが、例えば渡日治療を許されたまあまあ元気な被爆者は、往復の航空運賃約80万円、それに日本の病院に入院し、検診を受け、健康管理手当の申請をされてブラジルに帰国されますが、その費用は全部国から支払われます。また、渡日治療に毎年毎年2度も3度も国の費用で行くことができる被爆者がいる一方で、渡日治療の申請書を出しながら断られた(老齢、病弱の為)被爆者がいる、この矛盾した実施方法。
 渡日治療の申請をしながら老齢の為、日本の関係機関から危険を冒さないように、渡日治療は引き受けられないとの通知を受けた方々がいます。この方達、病気でもう絶対日本に行けない方、この方たちに国は何をしたのでしょうか。在外の被爆者援護がようやく始まりだしましたが、此の方達は未だに何の援護も受けておられません。そして今度は自分で検診の費用を支払わなければなりません。日本にただで何度も行き手続をしてきた方々に比べて、この矛盾。
 国は「被爆者は何処にいても被爆者」と言い、人道支援事業として在外の被爆者援護を行っていますが。一番最初に此の方達が援護を受けるべきで、私達はその事を何度も何度も、一日も早く解決してくださるよう御願いいたしています。しかし未だに何の支援も受けられずに、差別を受けている弱い被爆者の事を行政官はよく知りながら何の手も打っていません。これが厚生労働省が言うところの人道支援ですか?

 2項、日本に行けないから被爆確認証を発行したはずです。しかし確認証では健康管理手当の申請は出来ません。日本から来られる係官に本人に面接して頂き、日本に帰って手帳の発行を望んでいるのですが、日本に行けない、国が被爆したと認めている被爆者に、国は手帳を発行せずこの方達に一生援護をしない方針なのでしょうか?

 3項、完全な在外被爆者に対する差別です。ブラジルの場合ほとんどの被爆者が日本国籍を持っています。憲法でも国民の権利は平等のはずです。人権無視です。

 4項、 まったくの差別です。理由を聞かして頂きたい。

 私達ブラジルの被爆者は今度の日本国外からの手当の申請に期待していました。
 戦後60年たった今年、厚生労働省もこれで在外の被爆者援護はすべて解決するような事を言い、そして日本の報道でもすべてが解決したような感じを受けますが、実際蓋を開けてみれば在外被爆者に負担を強いる状態で、2003年から始まった人道支援での援助開始から、日本に行けない被爆者は今日まで何の支援も受けていないのが現状で、今も何一つ問題は解決されていません。
 私達は原爆被爆者援護法が海外在住の被爆者に適用されるまで先の短い命を削られても働く覚悟です。そして今まで何も援護を受けられず亡くなられた被爆者に何らかの賠償を求めて行きたいと考えています。
 今まで裁判で勝つてきたことに対し、厚生労働省は最低の援護策しか認めない態度を崩していません。日本に行けない被爆者はこのまま死を待つだけでしょうか?

………………

 12月9日健康管理手当申請のために、サンパウロ総領事館に書類を支給してもらうために訪れた被爆者で、
「日本からまだ書類が来ていないのでまた来てください」
と帰された方がいました。まったく何をしているのでしょうか? 11月30日からこの事業は受け付けを開始しているはずですが??

A 12月15日 厚生労働省に質問(要請を含む) ⇒ 同日 厚労省から回答

 やむにやまれず15日、森田会長が厚生労働省の担当者様宛てに以下のメールを送られました。

 在外被爆者がお世話になります、先日サンバウロ総領事館にて被爆者担当〇〇領事と話し合いを持ち、

一 健康管理手当て申請の健診費用について・・(日本では全ての費用は国もちです)
二 確認証を持つ被爆者に対して、来年一月各種手続きの指導に係員が派遣されると聞きますがその時、被爆者手帳が発行出来る人に来て頂きたい。
三 ブラジルでの被爆者検診を今までの二年に一度でなく、せめて日本と同じく毎年精密検査をさせて欲しい
四 在留証明を領事館でとる場合、年金、恩給のときは無料、被爆者は有料なのは納得できない。

 以上に対して、後日領事より電話にて回答を頂き、すべてを否定されました。
 厚生労働省より正式な回答があるよし受けたまわっておりますが未だ返事が参りません、在外被爆者に対しての福音といいながら、あけてみれば検診費用は個人もち、当地では多大な検診費用が掛かります。以上のこと、早急なる回答を待っています。

被爆者協会   森田 隆

 同15日、厚生労働省の担当者様からは、
「メールの件については、過日、外務省から担当者に照会があり、ルールに沿ったお答えをしたと聞いております」
「厚生労働省から、別途、正式な回答が必要だという理解には至っていないと思います」
とした上で、
「これらのご要望については、その多くが、極めて実現が難しい」
旨の返事が戻ってきました。

 気がめいって、やりきれません。
 1人の被爆者が帰国治療で日本に行く費用で、援護を受けていないこちらの残された健康管理手当を貰っていない全員の健診が出来るのですが。

(盆子原 国彦)

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