<4−番外、FF車等で激しく旋回すると後内輪が浮き上がってしまう現象について>

これは余談になりますが、サーキットなどを走行している車両、特にFF車が、コーナリング中に後ろの内輪が浮き上がってしまうのを見たことはないでしょうか。これをもって「あの車は非常に高い旋回加速度で旋回をしている」と思うのはいささか早計かもしれません。「後内輪が浮いた=高い旋回加速度で旋回している」とは言えないのです。

 特にFF車においては、前述のようにどうしてもフロントヘビーのため潜在的にアンダーステアの傾向をもっています。これをうち消すため(特にレースに出るような車はより曲がりやすくしようとして)前述のメカニズムに従って極端にリアのロール剛性配分を上げたりすると、ただでさえ少なかった後輪の初期荷重が、旋回により非常に大きく左右荷重移動し、あっけなく後内輪の荷重が0まで抜けてしまうことが往々にして起こるということです。つまりロール剛性前後配分を極端にリアに振った車と、そうでない車(ベースは同じとして)とを比較すれば、前者は後者に対して低い旋回加速度から後内輪浮きが発生し始めることになります。

 ところで後内輪が浮いたあとはいったいどうなるのでしょうか。後輪はこれ以上左右荷重移動できないわけですから、旋回加速度の増加に伴う左右荷重移動は、このあとは全て前輪が受け持つことになります。そうなるとこれ以降は前輪の左右荷重移動が急激に増え、後輪はこれ以上変化しないわけですから、途中からアンダーステア傾向が増大すると思われます。また、前輪の左右荷重移動が急増することから必然的にロール角がこれ以降急増し、更には次章のジャッキアップ現象との絡みもあり、旋回加速度を増やし続ければ(続けられれば)横転の危険性も出てきます。(ただしアンダーステアが強くなり前輪のコーナリングフォースがサチュレートしてくるので定常的にここまで旋回加速度を上げることはできないかもしれませんが。)


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