Urban Architecture Planning Partnership
       

















 好評連載 「もうすぐ生れる!」 模型の残骸で綴る思考の軌跡 TWS−大和町の住宅」編
ファーストコンタクト
2009-05-30
 2008年の展覧会に来ていただいたお客さんより連絡をいただき、敷地にお邪魔した。
 雑誌で見聞きしたり展覧会でのわたしの説明などで、私たちの仕事を理解していただいているようで、「先ずはプレゼンテーションをさせてください」とお願いすると、「基本的にお願いするつもりでご連絡しましたけど……」と仰る。

 すごくありがたい話だが、今までプレゼンテーションもせず契約をしていただいたことはないので、ともかく、一度こちらで案を考えプレゼンテーションさせていただくことにした。
敷地
 仙台市の北側に位置するベッドタウンの、その新しく造成した住宅地での新築計画です。南側と西側に6mの道路に接道し、北側と東側で隣地に接している。
 地形は北から南への緩やかな斜面で、南側道路から敷地へと、敷地から北側隣地へは、それぞれ1m弱ほど、段差がついている。
 まだ、周辺には空き地が多いせいもあって、今のところ南東方向遠くに「七つ森」の山並みが見える。
 ちょうど視線の途中に建設中の庁舎があり、その眺望に頼るべきかどうか、悩ましいところもあるが、とにかくひとつの手掛かりにしてみたいという要望をいただいた。

 40代の旦那さんと奥さん、小学校一年生の男の子の三人家族である。



敷地模型
スタディ+第1回プレゼンテーション
2009-06月-
 敷地周囲にはまだ空き地のほうが多く、街並みを手掛かりに住宅を構想することは難しかった。
 計画の手掛かりにと、先ず
考えたのが、敷地内に確保できるであろう『庭と建物の関係』である。

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先ずは、オーソドックスに中央配置。庭に大きな役割を持たせず、内部空間を豊かにしようという案。
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敷地北側に建物を配置し、南側に庭を確保する案。この案の最大の欠点はプライバシーを確保する方法を建物の構成の中に盛り込めていないことだと思う。

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敷地周囲に隣地との距離をとり、「塔」状の住宅にする案。眺望は良く、1階の庭にオープンな構成をとる必要がないため、セキュリティは取り易い。

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さらに高くしてみる。4階建てくらいの高さ。

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2階にリビングなどメインの部屋を持ち上げ、1階は出来るだけ庭を広く取ろうとする案。建物四周にピロティが設けられ庭が利用しやすいようになっている。

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もう一層追加し、2階にテラスを大きく取ったリビングを持ってこようとする案。
上のようなスタディを展開してきたが、どうにも良い案に展開しようがない、と思えてきた。スタッフと相談した結果、『庭と建物の関係』といったテーマにとらわれず、もう少し考えを広げてみようということになった。

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あまり深く考えず、敷地いっぱいにボリュームをとり、そこに穴を開けてみる。

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その展開

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もっとあけてみる。

……が、このシリーズはこれ以上面白く展開しようがない、とあきらめる。

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今度は、敷地に対して、住宅を低く、低く、作ってみる。

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低く、敷地と一体化した建築的基壇をつくり、その上にもう一層上屋が載っている案。敷地全体を建築化するつもり。

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具体的にプランをイメージしながら、その案をさらに、作りこんでみる。地面にあけた二つの穴は(今になるとはっきりと覚えていないが)『外からのアプローチ路』と『光と風を呼び込む口』を想定していたと思う。

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平屋で囲い庭を抱き込んだ案。現在建っている東の隣家や将来立つであろう北の隣家の視線を避けるように、南西側に寄せて囲い庭を確保している。低く伸びる水平のラインは美しいかもしれない、と思う。

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具体的なプランを当てはめてみて、作ってみる。が、即ボツ。

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「南東囲い庭案」は、筋としては成立しているので、それに眺望を加える。

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「南東囲い庭案」を基にして、リビングを2階にもってくる。
 郊外の敷地であり、敷地面積も広い、ということを考えると、『庭と建物の関係』という筋道をたどって進んでもうまくまとまりが得られないのではないか、と思うようになった。少なくとも、「敷地を建築に取り込む」ことや、「敷地を出来るだけ建築化する」ことは不合理なことに思えてきた。
 しかしながら、住宅に安定した外部空間を持ち込むことは、環境構成上重要だと考え、「建築の中にどう上手く外部空間を取り込むか」というテーマに次第にシフトしていったように思う。

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住宅のコアとなる中央部からアームを伸ばし、敷地を特色持った幾つかの庭に分割しようという案。アームの上は、バルコニーとして活用する。

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2階にリビングを配置し、その前にルーフバルコニーを設置する案。2階のボリュームの下は駐車場にする予定。

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2階リビング案の展開。ルーフバルコニーによってそのリビングの室内環境を良好に保つ。

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2階リビング案の展開。

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更に、2階リビング案の展開。

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上のものにプランをはめ込んでみる。

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ついでに、上の2案にもプランをはめ込んでみた。こうして再度、ボリュームのチェック。どうも良い案になってきている気がせず、どう仕切り直そうか、どう切り口を設定し直そうか、と考える。

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丸くしてみたり……

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……楕円に穴を開けてみたり……、

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 やはり、大きな塊としてボリュームを構成しているやり方が上手くないのではないかと思えてきていた。スタッフとの打ち合わせで、「今度は小さなボリュームに分割する方法で試してみようか?」と話をする。そんな風にボリュームを分割してゆく中で、外部空間と内部空間がより密接に交わる場所が出来るといい、と思う。

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先ずは、分散配置案を試してみる。面白いかどうかあまり深く考えず、やってもらった。

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波打つような壁を立てて、その中に中庭や室内を配置する案

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それに更に角度を与えたもの。

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上のコンセプト模型を元に、プランをはめ込んだもの。

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薄いボリュームを積層させた案。

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それを整理したもの。

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そのバリエーション

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それに具体的なプランを入れたもの。

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このあたりのスタディ模型から、再度わたしが手を入れ始める。上下二つのボリュームをずらしたような形。四角ボリュームが重なった部分は吹き抜けのリビング。上のボリュームの飛び出した下(ピロティ)は、駐車場(道路に面した部分)と、庭を使いやすくするためのテラス。1階のみの部分の一部には囲い庭などを考えている。

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内部プランを想定しながら、もう一度ボリュームを調整しなおす。これくらいであれば構造的にも無理なくやれそうな感じだと考えた。

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プランを入れながら再検討。
この時点では、大きなワンルーム空間の中に家族がそれぞれの気配を察しながら一緒に住んでいるイメージが強かった。

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第一回目のプレゼンテーション案に最も近いスタディ模型。基本的にはこれを「1/50模型」に作り直してプレゼンテーションを行った
プレゼンテーション
 構造は「RCラーメン構造(鉄筋コンクリートの柱梁の構造)」を想定し、大きなコンクリートの壁面だけが見えてくるデザインをイメージしていた。そのコンクリートのズレた隙間から光や緑などの生活感があふれ出してくるイメージ。
 屋上にも出ることが出来、そこから七ッ森を遠景に臨む。
 内部空間はこんな感じ。
 大きなワンルーム空間をイメージしていた。
 プレゼンテーションをした結果、次回打ち合わせ時に、設計契約を交わしていただくことになった。
 帰り際、クライアントから次のようなお話をいただいた。
「基本的には気に入ったけど、何となく、『北側に寄せた配置で、2階がリビング、その下のピロティになった部分が駐車場』といったイメージだったので、その案でひとつ作ってみてくれないだろうか?」
その後のスタディ
 先ずは、お話をいただいたとおりにあまり深く考えずに作ってみようと打ち合わせをし、作業を行った。一番上のものが、先ずはその通りに組み立ててみたもの。
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2階にリビングダイニングキッチンを配置し、その下のピロティ部に駐車場を配置した案。1階の南庭に面する部分には、寝室子供室、予備室が入る。
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基本的に上の模型と同じ構成だが、部屋の配置を多少変えたもの。
西向きの、すぐに道路に面したバルコニーの使い勝手が良くない、という気がして、その部分を再検討してみようということになる。
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1階のボリュームを東側に振り、その上をルーフバルコニーとする案。このあたりのものは要望からはズレルが、試してみる。
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これも要望からはズレルが、試してみた案。
上の案ではルーフバルコニーに庇がかかっておらず、街路に晒され過ぎているのではないかと思い、その点を改善した案を作ってみる。これでも安心感の薄いバルコニーだと思うが、上の案よりは改善されている。
 上の模型を元に再度打ち合わせを行った。
 結果としては、「上の四つの中では、上から三番目の案が一番イメージに近い感じ」とのこと。また、「でも、これだと一番最初にもらった案のほうが良いなぁ」とのことだったと思う。

 しかし、最初にプレゼンテーションした時点では、こちらとしてもすごく気に入った案だったのだが、幾度か話をするうちに、もしかすると、「良い案だけど、このクライアントの生活には合っていないんじゃないか」という気がしていたので、その旨を素直に伝え、「こちらとしては、もう少し、いろいろな案を時間を割いて、試してみたいのですが……」との話をした。

 クライアントの同意も得て、もう一度、案を組み立てなおしてみることにした。

その際に、「もし可能であれば、敷地全体に家が広がったようなものも試してみてもらえないか」との話をいただいたように思う。


その方向性で幾つかの案を試してみた。

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これも先ずは、いただいた話からイメージしたとおりにやってみる。平屋の住宅の中に、中庭と室内が入り組んでいる感じ。
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上の案をもう少し発展させたもの。こうした案は『一回目のプレゼンに向けた作業の中で検討をしていたもの』を元に再構成している。
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上の検討で行っており内容をもう少し整理してみたもの。これも室内と中庭が入り乱れ、(明るく開放的な)楽しい内部空間が出現することを想定している。
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上の検討等は別に、塔の案ももう一度再検討し、クライアントに見せてみようということになり、作成し直したもの。

 上の模型を元にプレゼンテーションを行ったが、今ひとつピンとこない様子だった。
「デザインとしては最初の案が一番良かったんだけどなぁ」とのお話をいただくが、今となっては、あの案はどうにもクライアントの生活スタイルに合わない気がしていた。
 あれ以降の話の中で、「かなり親密な家族関係であるが、その反面、個人生活も重要視し、はっきりと仕切られた個室も重要だということ」や「将来にわたって、家族の人数の変動にかなりフレキシブルに対応しなければならないこと」がはっきりしてきた。

 あの第一案では、内部空間を個室で明確に仕切ってしまうと、どうしても良好な外部空間を全部屋に面させることが出来ない。

 つまり、外観のデザインは良いけれど、内部空間は魅力に乏しい感じになってうことが危惧された。
その後の展開
 今までお付き合いして得た情報を振り返ると、基本的には、
『中庭と室内空間が交互に挟まれ、それぞれの室内空間に確固たるプライバシーと通風採光が確保されている住宅』
 が最もふさわしいのではないかと考えた。

 このアイデアを元に、幾つかの模型と図面を作成して検討を行った。
 (この時点の模型で現在手元に残っている模型は下のものだけ)


 先ず考えたのは『幾つかの中庭があり、それによって、各部屋はプライバシーを守りつつも良好な採光と通風を得ている』住宅であり、『各部屋のフロア構成は、リビングに向けてなだらかに登る地形を形成し、この住宅自体が自然を模したひとつの環境を形成しているような』住宅であった。その上、この地形となるコンクリート造の基礎部分は、大きな蓄熱体として冬場の温熱環境のコントロールに役立てる、ことを想定した。

 こういったアイデアは、昨年『新建築住宅特集2009年10月号』誌上にて行った『メールディスカッション』の中でも述べているアイデアである。
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こうした、『地形』をどうフロア構成として形成するかは、このようなフロアだけの模型を散々つくり検討しました。
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各室と中庭の構成だけを分かりやすくまとめた1/50の模型。これでプレゼンテーションを行った。
 上の模型を元にプレゼンテーションを行った結果、基本的には、この方針が良いとの話になった。しかし、平面計画が今ひとつまとまりまりがない。また、デザインも今ヒトツ。
 この方向性で、プランは再度検討することになった。
 (このあたりの模型は、クライアントに持ち帰ってもらっていた模型を、この「もうすぐ生まれる!」作成用に戻してもらったものです。)
 上の写真の左端の開口がビルトイン駐車場の入口。後になってはっきりとするが、ビルトイン駐車場を組み込んだことがプログラムを煩雑にし、うまくまとまらなかった。
 内部空間は、階段状に折り重なった内部空間を空想していた。バリアフリーではないが、空間と空間の接合が楽しくなるようにと考えていた。
 『リビングと中庭』の周りを幾重にもその他の細長い空間が取り囲んでいる住宅を構想していた。『リビング』にたどり着くためにはその『細長い空間』を幾つか経由していかなくてはならない。『細長い空間』はそれぞれが独自の素材と完結したプロポーションを持ち、簡潔に空いた開口部からは緑や光が覗いている。
 やたらと高い位置に開いた窓のむこうに木々がざわめいていたり……、中庭を様々な角度から眺めるようにと、空間の配列を考えていた。リビングは一番安定した角度から、庭と正対している。
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南側の道路から半地下状のビルトイン駐車場にアプローチする案。
今ではこの模型ひとつしか残っていないが、このあたりの図面と模型は、さんざんスタディした。
この頃は、まだ駐車場を、ビルトインにしようと考えていた。

この頃に何度か重ねた打合せで、駐車場を住宅内に組み込むと、どうしてもうまく行かないことが判明し、ビルトイン駐車場については断念してもらうこととなった。
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当初は、このように『完全な囲い庭の形式』で、構想していた。
しかし、今回の計画は、その構想当初から
『地形や植物と一体となった住宅』というイメージがあったため、この点に関しては改善したいと思っていた。
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もう一度考え直して、ボリューム模型を作る。
このように、半は『分棟形式』のようで、それぞれの棟同士のスキマから植物や生命感があふれ出てくるような、それでいて、プライバシーが守られているようなものをイメージしていた。
そのイメージを確認するためのボリューム模型。
 今思い返してみれば、
 少し俗な言い方をすると、
この時点で頭にあったイメージは、『宮崎駿のアニメ』に出てくるような、『ゴツゴツした岩や廃墟の間から顔を出す生命力溢れる植物や、そうした空間』だったかもしれない。例えば、「ラピュタ」の風景といった感じの……。
 そうした植物や量感の間で、生活する感じ。

 宮崎駿お得意の空間ですが、分かってしていただけるかどうか ……

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この基本路線を選択した当初は、『幾つかの棟』は、それぞれ高さも大きさも違えようと考えていた。そういた構成が、生き生きとした躍動感を生み、楽しくなるだろうと考えていた。

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それぞれの空間に入ると、それに対応した『中庭』が用意されており、「『それぞれの空間が、植物や光と、幸せな関係を構築している』、そんな空間の連なりが、結果として一軒の住宅になっている」ようなものを考えていた。

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このあたりのスタディは「迷いながら」さんざんやったが、あるときに(多分ここらへんの頃だったと思うが)、『何か、カタチが,何かを守っている感じになりすぎてはしませんか?』とクライアントに指摘され、ドキリとした。


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ラフな図面を描いては模型を作り、それを壊しては、又図面、模型、と延々と繰り返していました……。

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又、この頃作っていたスタディ模型の特色として、リビングから、南東側の『七つ森』への眺望を意識して、リビングが頭ひとつ、飛び出しているカッコウを取っていたことが挙げられる。
最初は、私も気に入っていたのだが、次第に、「何かこのリビングが、世間から特権的な場所を与えられている気がして、良くない」と思うようになった。この感じは分かってもらえるかどうか不安だが、(簡単に言うと)『威張っている感じ』に見えてしまうのではないかと感じたのだと思う。

こういった『建築の佇まい』というか、雰囲気に対しては、本当に気を遣っている。
カッコいい住宅は良いが、カッコよく見られようとして一歩踏み出している住宅はカッコ悪い。

あ、それは人間も同じですね……。

結局、住宅がカッコ良くあるためには、『カッコよく見られようとして一歩踏み出している』のではなくて、『内面的に何かが溢れており、その自然に溢れ出るもので自然に一歩踏み出してしまっている』ことが大切だと思います。

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上のように口で言うのはすごく簡単なのだが、それを「住宅の佇まい」として表現するのはほんとうに難しく……、「魅力溢れる内面を目指して」平面計画の調整をし、模型を作ってみて、……それを壊し……、の繰り返し……、何がどううまく行かないのかもよく分からない状態で、

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どうしてもうまく納得するものが出来ないので、中庭を片側に寄せて、お! 良いのが出来そう!!」
と意気込んで模型を作ってみると、
「連続し寄り添う、ハコ/ニワ」
にそっくりで、
『即、却下』
だったり、マンガのような、結構アホなことを繰り返していました。

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しかし徐々に、こんな平面計画が良い、と自分でも確信が持てるようになり……、


 確かこの模型のあたりで、クライアントにプレゼンテーションしたころ、しばらく模型を眺めた後で、クライアントが「あ、この案でいいです」と急に口にされた。
 またしばらく模型を眺め、向かいに座った奥さんに急に、「これでいいよねぇ」と顔を上げ、奥さんも即答で「うん」と仰る。

 そんな言葉をきいて、すごくうれしく思いました。

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しかし、大きな構成は、ほぼ決まったとは言え、デザイン的な調整がもう少し残っており、その作業に取り掛かる。

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リビングの雰囲気と全体デザインの調整。
リビングに向かい合う棟の屋根に傾斜をつけ、リビングに開放感を与えようと考えていた。リビングは(中庭の緑に開かれると共に)空に開かれ、より良い空間になるのではないかと考えた。

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その筋でもうひとつ作った模型。

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さらにもうひとつ。
これは、南側と西側、二方向の屋根に傾斜をつけた案。これは西日を避けるために西側に『中庭』を配置してみた。クライアントもすごく気に入ってくれた案だったが、懸念される不安がふたつ。
ひとつは、冬の積雪時に屋根の傾斜に沿って雪がリビングの窓に押し付けられ、その風景が美しくないであろうこと。そしてその際の雨漏りの可能性。
もうひとつは、夏の、屋根面の日射の照り返し。
併せて考えると、リビングの居住性はあまり良くならないのではないかと考え、クライアントに話をした。

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そうして結局、このあと1/50スケールの模型もさんざんいじりながら、どうにか、このあたりのカタチに落ち着いていった。

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最終案 1/30模型
写真UPしました!!
……細かい説明は省くことにします……。気になる方はどうぞオープンハウスにいらっしゃってください。