□2004/6/17(Sat) Music
東京60WATTS 『初期の東京60WATTS』
いつの頃から「抗菌ボールペン」だとか「除菌○○」みたいな馬鹿げたものが流行り始めたのかなんて覚えてはいないけれど、
気づけば24時間開いてるコンビニで調理済みの出来合い惣菜を買い、制汗スプレーを使い、携帯やチャットでのヴァーチャルな関係性に安住し、
春夏秋冬同じ温度の部屋で過ごす僕らは「生活」を失ってしまっている。
自らが生きている証としてこの手を汚し、汗をかいては変な臭いを発し、泣いたり笑ったりを他者と共有し、暑かったり寒かったりを繰り返すことによって
僕らは日々を頭ではなく、この体に、心に、皮膚感覚として記憶する。
そういうものから縁遠くなり、いわば「生」の臭いが希薄になったような連中が好む文化ってのもこれまた
えらくこぎれいに品質管理された、当たり障りも面白みもないような「商品」なのではないか。
テレビからも、スクリーンからも、ステレオの中からも、強烈な異物感や異臭を放つ存在はずいぶんと減ってしまった。
それこそが「その人間」が生きているという抜き差しならぬ証左であるはずなのに。
そんな中で、この東京60WATTSは僕をずいぶんと安心させてくれたバンドのひとつだ。
ブルース、ファンク、生4つ打ち等を絶妙に掛け合わせたハイクオリティな音に乗せて描き出されるのは、
どうしようもないほどしみったれた、いなたい日々の風景。
その心象は決して「目白通り」「西武線」「椎名町」という、いかにもいなたい感じのモチーフ(住人の方々、申し訳ございません)だけのせいではなく、
Vo・大川の詩から、歌声から、あまりにもリアルに、生臭く脈打つ「生」の温度を感じずにはいられないのだ。時に疾走し、時に停滞し、大方はダラダラと続いていく日常の中で喚起される数々の想い。
それらがその内に孕む匂いを、BPMを、そして温度を、彼らは何ひとつ無駄にしない。
彼らの曲に冬の描写が多いことも、彼らのそういったものに対するスタンスが感じられる。
そして泥臭いほど忠実に、クリアに、それらを曲という形に変えてゆく。
現代に生きる我々が忘れがちな、見て見ぬふりをしがちな、「生きている」ということのどうしようもない薄汚さ、生臭さ。
そこから逃げるのでも大仰に構えるのでもなく、ただ日々の速度のままに、それらと共存すること。
流れる日々を本当の意味で自らのうちに刻み、その真の暖かさや美しさに気づくための方法を彼らは知っている。
□2004/6/1(Tue) Music
N.E.R.D. 『Fly Or Die』その類稀なるクリエイション能力でペリー・ファレルからノーダウトからパフダディからネリーファータドから果てはブリトニーまで、
なんでもかんでも高品位R&Bトラックに変えてしまう変態2人組であるネプチューンズ。
普段は専らラップトップの前で他人の音源と格闘してるであろう彼らが自らの表現の可能性を求めてか、
ただでさえがっぽり稼いでいるであろうギャラのほかに作詞作曲歌唱演奏等々の印税も欲しくなったのか、
とにかく旧知のシェイという男を誘って結成したユニットの2ndがこのアルバム。N.E.R.D.ってのは「No one Ever Really Dies」の略であり、すなわち三つ子の魂百まで、ってことではなく
人間の思念や思想といった、人が自らを人たらしめている所以のようなものは肉体が滅びようと消滅することはないということだと思われる。
そのことを体現するかのように、このアルバムの中には至極雑多な音が鳴っている。
ファンキーにうねるベースであったり、ニューウェーヴなギターであったり、モダナイズされたクラシックロックのような曲であったり。
様々な音楽的意匠(それはとりもなおさず、様々な先人たちの思念の結晶でもあるのだ)が絶妙のバランスを保ちつつ雑多に存在しているわけで、
そこには言わばボンゾの霊もイアン・カーティスの霊もフレディの霊もスティングの霊も、少しずつ降臨しているのだ。
あ、スティングはまだ生きてる。
ともかくも、このアルバムを聴いていると人の魂や思想や夢はそんな風に次の代へと託されていくのだろうと思わされる。
サウンドの端々にそんな偉大なる先人たちへのリスペクトを滲ませながら、トータルとしては全てがN.E.R.D.の音になってるあたりは
さすがに人様の音をいじって早10年以上の彼らである。当然プロデュースワークの単なる集大成ってことでもなく、そこには各人のパーソナリティに立脚した世界が構築されていて
非常に聴き応えのある素晴らしいアルバムに仕上がっております。
ジャケットがあまりにもダサい、とかそんなことはいいじゃないか。
ここには受け継がれてゆく魂たちがキラキラと鳴っている。確かな感触と質量を持って。
ちなみにジャケ写で一番左に写ってる人は、別に東南アジアあたりのアイドルとかではないです。