武蔵随想
武蔵と田原家との関係


『真説 宮本武蔵』(原田夢果史 葦書房/1984)以来、武蔵を田原家出自とする説がもてはやされるようになった。
かなり以前から田原家出自説はあったが、この本で市民権を得たようなものだ。
近年、佐々木小次郎は豊前佐々木一族の者で勢力が増してきたので細川藩に暗殺され、宮本武蔵は利用されたとする説が
主流になったいるが、これもこの本からだ。
巌流島決闘ジグソーパズルの最後のピースを小説的発想で埋めたものだから、吉川版と違う面白さになっている。
吉川版では、武蔵と巌流の決闘の経緯は、それほど語られていないので小説の溝を埋めたようなものである。
しかし、武蔵の田原家出自に関する説明は不十分である。
武蔵と田原家は伊織を通せば親族である。武蔵と田原久光は義兄弟のようなものだ。
武蔵を田原家出自にするなら、両者の関係を伊織を養子にする以前で論じなければならない。
宮本家系図も武蔵に関する記述だけが、他の箇所を矛盾するなら、武蔵関連資料としては価値が下がるだろう。
伊織の出自と出世物語なら宮本家系図で十分かもしれないが。

