武藏伝説

武藏は名人でしょう

小笠原源信斎が人から武蔵の強さについて訊ねられて「彼は名人でしょう。」と答えると、
弟子の一人が「恐れながらただいまのお言葉は合点がいきかねます。
門人の暗いのを明るくしてやるのを名人といい、導いて上達せしめるのを上手というと承知しておりましたが
武蔵はそうでなく、手頃のものをうちくじき、投げたおし、言いたおし、自分の力の剛強を恃むところがあります。
これは名人上手という者のなすところではありますまい。」と言った。
小笠原源信斎はこの言葉を非常に賞美して、「よくぞ申した。それこそ武道の本領をいい得た言葉である」と
その弟子に極意印可を与えた。


「実は自分も同じことを考えておりました」と言って極意印可を期待した弟子が二、三人はいたであろう。