武蔵伝説

前髪に乗せた飯粒を切る

小笠原家の家臣の島村十左衛門の邸で、武藏は饗応を受けていた。
そこに弟子の青木条右衛門が訪ねてきたので、どれくらい上達したか見てやろう、ということになった。
その技を見た武藏は「これなら、どこへ行っても指南ができる」と上機嫌だった。
青木条右衛門は大いに悦び、その場を退こうとしたところ、
武藏が条右衛門の木剣に付いていた赤い袋を見つけて「それは何か」と問うた。
条右衛門は「これは、仕合のときのお守りです」と答えた。
すると、それまで上機嫌だった武藏は急に怒り出し、条右衛門を怒鳴りつけた。
「先刻、どこへ行っても指南できると申したのは、幼年の者に教えるには良し、と言ったまでのこと。
仕合を望む者があれば、早々に立ち去るがよい。そのような未熟な腕では仕合なんぞすべきではない。」
そして、武藏は、島村十左衛門から小姓と飯粒を所望し、その飯粒を小姓の前髪の結び目につけ、
小姓に「あれに立っておられよ」と命じた。
武藏は太刀を抜くと上段から打ち込み飯粒を真っ二つにした。
武藏は三度まで同じことをやってみせ、条右衛門に「どうじゃ、これくらいの腕でも、敵には勝ちがたいものである。
汝らが仕合とは以っての他である。」と言った。


人の家で何すんねん。
島村十左衛門にしてみれば迷惑な話しである。
未熟者に対して、この諭し方は効果はないだろう。
これを見て「わぁ、すごい。」と思うだけだ。真似されたら危険である。