武蔵伝説

岩尾の身

ある日、新藩主の光尚から武藏に「兵法三十五箇条にある巌(岩尾)の身とは、どういうことか」と下問があった。
武藏は、高弟の寺尾求馬助を呼びつけると、いきなり、「只今、御前からそのほうに対して、
切腹を仰せ付けられたゆえ、支度をするように」と命じた。
すると、求馬助は平素と変わった様子もなく、「畏まりまして、ござりまする」と平伏し退出した。
「これが、巌の身にござりまする」と武藏は光尚に答えた。


兵法三十五箇条では、「巌の身」のほかに「いとかね(規範)ということ」「小櫛(おぐし)のおしえ」があるが、
これらを訊かれたらどのように表現したのだろう。