二つの詩

2003.10.14. てるてる

臓器移植を、「再生」ととらえる考え方は、移植医療を進めるうえで、しばしば主張されます。USAの移植コーディネーターなどは積極的にこの考え方を支持するようです。ドナー家族は、「ドナーキルト」を作ったり、ウェブ墓地を作ったりして、ドナーを偲ぶよすがにしています。

移植医療には、臓器・組織・細胞などの、人体の医療資源化、商品化、という側面もあります。臓器移植は自然の生態的循環と並ぶ「再生」ではなくて産業上の再利用なのだ、という指摘もあります。

臓器移植を「再生」ととらえる考え方では、生体移植や、事故・事件・災害・テロなどで、遺体が激しく損傷され、臓器提供できなかった人々は、再生に参加できません。また、ひとのからだを医療資源とし、商品化するよのなかのしくみに、抵抗を覚える人々もいます。

臓器移植を「再生」ととらえる美しい詩と、臓器移植によらずに、死を自然に回帰するととらえる美しい詩と、二つの詩を一緒に掲げます。


(1) 「はあとネット兵庫」設立記念講演で、USAで心臓移植手術を受けたこどものおとうさんが紹介した詩

"To Remember Me"

by Robert N. Test

生と死が忙しく入り交じる病院で、私の身体がマットの4つのコーナーに

きれいに折り込まれた白いシーツの上に横たわる日がいつかやってくる。

そして、医者はもう私の脳が機能を停止したと判断するだろう。

すべての意味において、私の生は、止まったと、判断するだろう。

そうなった時、機械を使って私の身体に人工の生を入れ込もうなどと考えないでほしい。

そして、これを私の死の床と呼ばないでほしい。

命の床と呼んで、他の誰かがもっと満ち足りた人生を送れるように、

そこから私の体を運んでほしい。

私の視力は日の出を、赤ん坊の顔を、そして彼女の瞳の奥の愛を、

まだ一度も見たことのない人にあげてほしい。

私の心臓は、終わりのない苦痛以外なにものも引き起こさない、

そんな心臓しかもたない人にあげてほしい。

私の血は、壊れはてた車から引きづり出された十代の若者にあげてほしい。そうしたら、

彼は自分の孫が遊ぶのを見るまで生きられるかもしれなから。

私の腎臓は、一週一週を生き延びるために機械に頼っている人にあげてほしい。

私の骨を、すべての筋肉を、すべての繊維を、そして、体中の神経を取り出して、

不具の子どもが歩ける方法を見つけてほしい。

私の脳のすみずみまで調べてほしい。必要があるなら細胞を取り出して、

培養してみてほしい。

そうしたら、いつかしゃべれない少年がバットの折れた瞬間叫べるようになり、

耳の聞こえない少女が窓をたたく雨の音を聞けるようになるだろう。

残った部分は焼いて、灰は花が成長するよう風に蒔いてほしい。

もし、何か埋めなければならないのならば、それは、私の犯した失敗、

私の弱さ、そして私の仲間に向けたすべての偏見である。

私の犯した罪は、悪魔にくれてやれ。

私の魂は、神に捧げておくれ。

もし、私のことを覚えていたいと思ってくれるなら、やさしい行為と言葉を、

それを必要としている誰かに与えながら覚えていておくれ。

私が望むこのすべてのことをしてくれたなら、私は永遠に生きることができるだろう。


(2) 森岡正博さんのメイン掲示板で紹介された詩「千の風」

私はもうそこにはいない(千の風)

私の墓の前に立って泣かないで。
私はもうそこにはいないのだから。
眠ってなんかいないのだから。

私は吹き過ぎる千の風。
私は雪にきらめくダイヤモンド。
私は実った穀物に降り注ぐ陽の光。
私はやわらかに降る秋の雨。

あなたが朝の静寂に目覚めるとき、
私は輪を描いて飛ぶ鳥たちのすばやく舞い上がる流れ。
私は夜空のやわらかな星の輝き。

私の墓の前に立って泣かないで。
私はもうそこにはいないのだから。
眠ってなんかいないのだから。

(森岡正博訳)

Do not stand at my grave and weep,
I am not there, I do not sleep.

I am a thousand winds that blow.
I am the diamond glint on snow.
I am the sunlight on ripened grain.
I am the gentle autumn rain.

When you wake in the morning hush,
I am the swift, uplifting rush
Of quiet birds in circling flight.
I am the soft starlight at night.

Do not stand at my grave and weep.
I am not there, I do not sleep.

Mary Frye


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