2003.11.26. by てるてる
1997年施行の臓器移植法では、法的脳死判定と臓器提供について、本人の事前の書面による同意があり、家族の拒否がない場合のみ、脳死後の臓器提供ができると定められている。しかし、附則で3年後を目途として見直されることが定められていたので、2000年には、厚生労働省研究班による改正案(通称町野案)を始め、民間の個人・団体による改正私案(森岡・杉本案、てるてる案、日本移植者協議会案)が発表された。
国会での法改正の審議は始まらなかったが、民間では議論が続き、2003年4月には、日本小児科学会の提言「小児脳死臓器移植はどうあるべきか」が発表された。さらに9月には、科学技術文明研究所のぬで島次郎による、「生きている提供者保護のための臓器移植法改正・試案」、11月には、自民党の河野太郎衆議院議員による臓器移植法改正私案が発表された。
以上の改正案は、臓器提供について、本人の意思表示原則を堅持する案と、おとなは本人の意思表示が必要だがこどもは親の同意だけで臓器提供できるようにする案と、おとなもこどもも家族の同意だけで臓器提供できるようにする案の、三つに分けることができる。
また、「脳死」の扱いについて、臨床的な脳死を法的な死としない案と、臨床的な脳死を法的な死とする案との、大きく二つに分けることができる。前述の、おとなは本人の意思表示が必要だがこどもは親の同意だけで臓器提供できるようにする案は、臨床的な脳死を法的な死とする案に含まれる。
すなわち、臓器提供について、本人の意思表示原則を堅持する案はすべて、「脳死」の扱いについて、臨床的な脳死を法的な死としない案である。
なお、日本小児科学会の提言「小児脳死臓器移植はどうあるべきか」は、
>>小児の人権を護る立場からは自己決定権を明示するチャイルド・ドナーカードの推進が望ましい.その前提には治験などでの小児自身への説明と承諾の明確化と同様に脳死と死に関する授業教育の実践と自己決定への意図的な誘導を避けるための中立的システムの構築が必要となる.また,民法の規定とは別に表示意思の有効年齢を15歳から引き下げることが求められる.と述べており、本人の意思表示原則を堅持している。
*参考:現行の臓器移植法(1997年7月公布、10月施行)
臓器の移植に関する法律 平成9年7月16日 法律第104号
http://www.medi-net.or.jp/tcnet/DATA/law.html
臓器提供について
本人の意思表示原則を堅持する案
- 森岡・杉本案
「子どもの意思表示を前提とする臓器移植法改正案の提言」- (森岡正博・大阪府立大学・倫理学、杉本健郎・関西医科大学・小児神経学、2001年2月14日)
- てるてる案
「脳死否定論に基づく臓器移植法改正案について」- (てるてる、『現代文明学研究』第3号、2000年10月19日)
- ぬで島案
「生きている提供者の保護のための法改正・試案」
- (ぬで島次郎、科学技術文明研究所、2003年9月30日)
おとなは本人の意思表示が必要だがこどもは親の同意だけで提供できるようにする案
おとなもこどもも家族の同意だけで臓器提供できるようにする案
- 町野案
「研究課題:臓器移植の法的事項に関する研究―特に『小児臓器移植』に向けての法改正のあり方―」- (町野朔・上智大学法学部、厚生労働省研究班、2000年8月22日)
- 臓移連案
「臓器の移植に関わる法律の見直しについて臓器移植推進連絡会案」- (「臓器移植推進連絡会」は新組織「臓器移植患者団体連絡会(臓移連)」に http://www.jtr.ne.jp/info3.html)
- 河野案
「臓器移植法改正河野私案」- (河野太郎・自民党・衆議院議員、2003年11月22日)
「脳死」の扱いについて
臨床的な脳死を法的な死としない案
- 森岡・杉本案
「子どもの意思表示を前提とする臓器移植法改正案の提言」- (森岡正博・大阪府立大学・倫理学、杉本健郎・関西医科大学・小児神経学、2001年2月14日)
- てるてる案
「脳死否定論に基づく臓器移植法改正案について」- (てるてる、『現代文明学研究』第3号、2000年10月19日)
- ぬで島案
「生きている提供者の保護のための法改正・試案」
- (ぬで島次郎、科学技術文明研究所、2003年9月30日)
臨床的な脳死を法的な死とする案
- 日本移植者協議会案
「『臓器の移植に関する法律』の改正にむけて / 『臓器の移植に関する法律(改正案)』」- 町野案
「研究課題:臓器移植の法的事項に関する研究―特に『小児臓器移植』に向けての法改正のあり方―」- (町野朔・上智大学法学部、厚生労働省研究班、2000年8月22日)
- 臓移連案
「臓器の移植に関わる法律の見直しについて臓器移植推進連絡会案」- (「臓器移植推進連絡会」は新組織「臓器移植患者団体連絡会(臓移連)」に http://www.jtr.ne.jp/info3.html)
- 河野案
「臓器移植法改正河野私案」- (河野太郎・自民党・衆議院議員、2003年11月22日)
臨床的脳死を法的な死としない | 臨床的脳死を法的な死とする | ||||||
臓器提供に本人の同意が必要 | 臓器提供におとなは本人の同意、 こどもは親の同意必要 | 臓器提供は家族の同意のみでよい | |||||
現行法 | 森岡・杉本案 | てるてる案 | ぬで島案* | 日本移植者協議会案 | 町野案 | 臓移連案 | 河野案* |
*註
*ぬで島案は、現行法の第10条に、生体移植の臓器提供者を保護する規定を追加している。
*河野案は、生前に明確に意思を表示することによって、脳死になった場合に、親族に優先的に臓器提供できるとしている。
町野案
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日本移植者協議会案
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森岡・杉本案
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てるてる案
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脳死判定の承諾
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必要なし
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必要なし
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本人と家族
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必要なし
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臓器提供の承諾 |
成人は家族のみでもよい。 未成年は親の承諾 |
15歳以上は本人と家族、 15歳未満は親の承諾 |
15歳以上は本人と家族、 15歳未満は本人と親 |
成人は本人のみ、 未成年は本人と親 |
臓器提供できる年齢の下限 |
下限なし |
下限なし |
12歳以上または6歳以上 |
3歳以上 |
心臓死後移植 |
経過措置は廃止* 家族の同意だけでよい |
経過措置はそのまま* 家族の同意だけでよい |
経過措置は廃止* 本人の同意が必要 |
経過措置は廃止* 本人の同意が必要 |
生体移植 |
法の必要性を指摘* |
規定なし |
現行法に追加* 本人の健康を害しない 自由意思を尊重 |
現行法に追加* 本人の健康を害しない 自由意思を尊重 |
組織移植 |
法の必要性を指摘* |
ガイドラインで、 遺族の同意が必要と規定 |
現行法に追加* 臓器移植と同様の規定 |
現行法に追加* 臓器移植と同様の規定 |
その他 |
臓器・組織の斡旋は現行のシステムでよいか、指摘 |
異状死体は、検視が終わる前でも臓器を摘出できる |
15歳未満のこどもの臓器提供意思表示は、ドナーカードと、第三者の審理も必要 |
脳死・臓器移植に関する知識を確認するチェックカード、保証人の署名が必要 臓器提供拒否権者を指名できる |
*註
*心臓死後移植
1997年施行の臓器移植法には、附則に経過措置の規定がある。
附 則
(経過措置)
第四条 医師は、当分の間、第六条第一項に規定する場合のほか、死亡した者が生存中に眼球又は腎臓を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合及び当該意思がないことを表示している場合以外の場合であって、遺族が当該眼球又は腎臓の摘出について書面により承諾しているときにおいても、移植術に使用されるための眼球又は腎臓を、同条第二項の脳死した者の身体以外の死体から摘出することができる。
*生体移植、組織移植
町野案では、「A 研究の目的 1.検討を要する点」で、a[包括的移植法の可能性]として、生体移植、組織移植についての法規定の必要性について問題提起している。
森岡・杉本案では、「1 改正案の概要」で、[3]生体からの臓器摘出、[4]ヒト組織の採取の項目を挙げている。
てるてる案では、改正試案の第1条(目的)、第5条(定義)で、生体移植、組織移植に言及している。
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