映画「下妻物語」を観た。
茨城県下妻市に暮らす二人の少女のお話。
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「関東平野って本当に平らなのね」
と、ストーリー外のことにまず感動。
長野&山梨という山に囲まれた土地でしか生活したことのない私にとって、とめどなく続く田圃の風景は、気が遠のくようだった。
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視界に稜線などの境界を捉えない開かれた環境は、本来「伸びやか」と表現すべきだろうが、私にとっては逆に頼るものがないような息苦しい風景。
帰るべきなのに、その帰るべき場所が判らない迷子の心境とでも云うのか。無重力空間にいるような不安定な感じさえ覚えた。
育った景色はアイデンティティの一部、ところ変われば品変わりと云うが、また人の気質もそうなのだろう。
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さておき。
作品は主人公の少女の語りを芯に、幾つものエピソードが絡められていく。そのテンポは軽妙で心地よい。少女はロココ文化に憧れ、フリルフルなロリータファッションにはまっている。その熱の入れ方が細部までコミカルかつ豊かに描きだされる。
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もう一人の原付暴走族の少女。思い込みのベクトルは高い、だが主人公の反面的なキャラクターは、あくまでロココ少女を際立たせるための役どころなのだろう(図式的な存在も物語には必須……)
舞台である下妻という北関東の田園風景も主人公の存在にエッヂを利かせる素敵な設定だと思った。
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10代後半に陥ってしまう強烈な思い込み、誰もが経験することだと思う。私にもあった。そして、嗜好を同じくする友を見つけ、語り、友情を深めたりしたものだが、ロココの彼女は群れず友を欲しない。
自分が大切にしているものこそが大切、だからそこに他人なんて必要ない、と云う。
まるでハードボイルドじゃないか。
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自分の中の核を自身で切磋琢磨する孤高な姿に共感を覚えた。
私も日々に流されることなく、道楽に励んでいきたいな、と思う次第。
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