『魔法使いのピクニック‐3』

 

千秋の後に付いて、直江のエリアを出ると、そこはいつもの見慣れた通りでは無かった。

「どうなってんだ? ここは…」

どう見ても日本じゃない風景が、目の前に広がっている。

起伏のある赤茶けた大地には、丈の低い灌木が所々に生えているだけで、
それも緑というより薄茶の印象が強い。

しかも、だだっ広い荒野の真ん中、自分達が立っている足元を見下ろすと、
思わず息を呑むほど深い谷が、ほんの1m先に果てしない裂け目を造っているのだ。

これで驚かないほうがおかしい。

「ここはどこだ?…って顔だな。」

千秋がニヤニヤ笑いながら、高耶を試すように見た。

(このやろう…面白がってんな…)

「竜の谷」

知らないと言うのが悔しくて、思い浮かんだ名前を言ってやる。
すると、千秋の目がまん丸になった。

「残念。飛竜の谷だ。
ヘェ〜…お前ちゃんと覚えてたんだ。意外だったな。」

(いや、俺のほうが意外だ…)
とは口に出さず、高耶は曖昧な笑顔で胸を張った。

「じゃ、飛竜の事も知ってるな? まず俺が呼ぶから、よく見て真似ろ。」

そう言うと千秋は、高耶が知ったかぶりを悔やむ暇もないうちに、
「ピィーッ!」
と高らかに口笛を吹いた。

谷の底から、風を斬る音が聞こえた。

 

背景の壁紙は、こちらからお借りしました。→

 

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