『魔法使いのピクニック‐2』

 

あれから直江は結界を強化すると同時に、エリアの存在を隠さなくなった。

もちろん高耶のことは隠したままだ。
知らないものにまで、わざわざ知らせる必要は無い。

ただ、自分の力を誇示するだけでも、
『安易に近づくな』という意思表示になることを、
直江は1月の一件で、ようやく思い出したのである。

 

その結果、直江の仕事が増えたのは、全くの誤算だった。

魔法使いにも仕事はある。

魔法使いだからと言って、魔法で何でも出来るわけではないし、
自分に出来ないことは、誰かに頼むしかない。
そのとき、誰に頼めば良いか、何を支払えば良いかが、わからなければ困ってしまう。

だから魔法使い達は、ギルドを作った。
ギブ&テイクが基本の世界で、ギルドは現在いくつかの種類に分かれて、それなりに機能している。

だが、どんな世界にも、トラブルは起こるのだ。
そのトラブルを処理するのが、直江の仕事だった。

もちろん何人もいる内の1人なので、特に忙しくも無く、今までは、気楽にやっていたのだが…

強さが知れてしまった為に、すっかり名指しの依頼が増えてしまった。
しかもそのトラブルの解決が、間接的に高耶を守ることに繋がるとなれば、
「嫌だ!」と断ってしまうことも出来ない。

今日も溜息をつきながら街に向かった直江は、
結界のすぐ近くで、馴染みのない力を感じて顔を上げた。

「高耶さん?」

すぐに届かない遠くに消えたそれが、何かわからないまま、
直江は胸に浮かんだ不安を、振り払うように空に舞い上がった。

     2007.6.27

背景の壁紙は、こちらからお借りしました。→

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