開かれた空間に出ると同時に千秋が放った閃光は、華々しい光と音こそ凄まじいが、実質的なダメージは殆ど与えないはずの魔法だった。
自分達がどんな場所に出るのか、高耶がどんな状態なのか、何ひとつ確かなもののない状況では、他に打つ手がなかったのだ。
この先に、高耶の魂がある。
そしておそらく魔王も、そこにいる。
いくら高耶がケンシンの加護を持つ身でも、魂のもとに肉体を呼び寄せるなどという、高等な技術が使えるとは思えない。
しかも、あれは魔王の庭だ。
となれば呼び寄せているのは、魔王ノブナガ…
考えたくもない状況だが、それでも千秋の胸に恐れはなかった。
守ってやる!
絶対に、おまえを魔王の手には渡さない!
千秋が渾身の力を込めて放った魔法は、稲妻よりも強い輝きで、魔王の寝室を満たした。
その音を上回る大きさで、オパールと銀星の雄叫びが轟く。
破壊力が無いはずの魔法が、空間から飛び出した飛竜の巨体のおかげで、まるで本物の爆弾を落としたような有様だ。
辺りに飛び散った羽毛や、木っ端微塵になった家具の欠片が舞う中、無傷で逃れた魔王とランマルの間で、遠く離れた星のような僅かな光が瞬いた。
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