放とうとした魔法を弾かれて、ランマルの体が床に吹っ飛ぶ。
「殿?なぜ…」
クッと見上げたランマルに答えず、ノブナガは揺れる高耶の幻を見つめている。
「面白い。魂だけでこの力か。」
呟いて、白い炎を乗せた掌を、ギュッと握った。
ジュウゥと肉の焼ける音がした。
「ああっ!お止めください。殿の御手が!」
ランマルが悲鳴を上げる。
だが、ノブナガは高耶を離さなかった。
「これでも呼ばぬか! ならばわしが呼んでやろう。」
見る見る弱っていく炎を眺めて、苦々しげに呟くと、
ノブナガは高耶の魂を高く掲げて睨みすえた。
「この魂の肉よ、ここに来い!
魂と体が揃ってこそ、我が僕にふさわしい。
さあ、来るがよい!
魂は我が手の中にあるぞ!」
呼ぶ?
何を…呼んでる…?
魔王が何を言っているのか、わからなかった。
苦しくて、頭がちゃんと働かない。
それでも高耶は、魂の力を振り絞って、ノブナガの魔法を必死に拒んだ。
来るな!
何も来るな!
俺は呼ばない。
呼んだりしない。
誰も…何も…
俺の為に苦しめたくない…
高耶の炎が消えかけ、ノブナガの魔法が、異空間への扉を開けてゆく。
天井に出来た真っ黒な渦の奥で、何かが光った。
「チビ虎!」
千秋の声が聞こえた瞬間、眩い閃光と雄叫びが渦をつんざいて、魔王の寝室に轟き渡った。
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