流木や枯れた枝を集めて火をおこし、舟に積んであった毛布を広げると、即席の寝床が出来上がった。
布団代わりにバスタオルを掛け、並んで横たわる。
空には満天の星が輝き、波の音が耳に優しく響いていた。
「綺麗だな」
星を見上げて高耶が呟いた。その横顔をじっと見つめ、
「ええ…本当に綺麗だ…」
直江が耳元で囁くと、高耶は笑って目を閉じた。
そっと唇が重なる。
優しいキスは、やがて深いくちづけに変わり、
直江は高耶の甘い喘ぎを聴きながら、ゆっくりと唇を離した。
「声を殺さないで…あなたの声をもっと聴きたい…」
首筋から肩、そして腕へとキスを落としていく。
手の甲から指の先に舌を這わせた直江は、微かに混じった血の味に、ハッと顔をあげた。
「どうしたんです! この傷は?」
厳しい声に目を開けたものの、高耶は何でもなさそうに肩を竦めた。
「平気だ。あいつらとやりあった時に、ちょっと擦っただけ…」
言いかけて、
「ッ…ハァ…なお…やめっ…ア…」
激しい愛撫に言葉が途切れた。
嵐のような熱い波に、どうしようもなく流される。
「あぁ―――ッ!!!」
甘い悲鳴が上がった。
高耶を咥えたまま、コクリと喉を鳴らして嚥下した直江は、
顔を上げて高耶の手を取り、傷口をゆっくりと吸った。
「こんな傷を幾つ作ったんです?」
荒く息を弾ませながら直江を見上げた高耶は、ようやく直江が怒っていることに気付いた。
「まだあるんでしょう?」
そういいながら、高耶をうつ伏せにして背に舌を這わせる。
「ン…っあ…」
堪えきれずに喘ぎが洩れる。
こんな直江は知らない
知らない…こんな俺は…
甘い疼きが体を走る。
頭の芯まで蕩けそうな快感に、高耶は何をどう叫んでいるのかもわからなかった。
この激しさがおまえなら、今までどれほど抑えていたのだろう
俺の知らない感情が、おまえの中に隠れている
もっと知りたい
おまえを
欲しいだけじゃなくて
求められるだけでもなくて
抱きしめたい…おまえを…
抱きしめられたい…おまえに…
心の波は、夜のしじまに飛沫をあげて、熱く激しく打ち寄せていた。
2006年7月19日
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