千秋の飛行機は、上空で綺麗に翼を畳むと、広い庭園の一角に音も立てず着陸した。
高耶が降りたのを確認して、千秋は慣れた仕草で、小さくした機体をポケットに収める。
鮮やかな手並みに、思わず責めるような声が出た。
「なんか…違い過ぎなんじゃねえの?」
納得いかない表情の高耶に、千秋は軽く肩をすくめた。
「そう尖んなよ。言ったろ?あれはちょっと計算を間違えたんだって」
直江の家は、千秋もはっきり知っていたわけではない。
以前探すのを手伝った椅子の波動を手掛かりに、見当をつけて飛んでいたら、
千秋の目でも見通せない場所があったので、試しに突っ込んだら大当たりだった。
…までは良かったが、ちょっとスピードが出過ぎて止まれなかったのだ。
という千秋の話を聞いて、高耶は首を傾げた。
「椅子を手掛かりに?…って、どうやって?
つかそれって直江の家が見えなかったって事だよな。あいつ、どうして…」
俺たちの事は、そこまでして隠すようなことなのか…
俺といることで、あいつはどれほど多くの負担を、抱え込んだのだろう。
高耶の瞳が翳りを帯びて沈んでゆく。
思わず肩を抱いてやりたくなって、千秋は上げかけた手を寸前で止めた。
「ま、そこんとこも含めて、この俺がじっくり説明してやっから。
さあメシ食おうぜ。腹減った。」
どこまでも軽い調子の千秋に、高耶の顔がふっと緩む。
「まさかお前が作るんじゃねえだろうな。ヘンなもん食わせんなよ」
「口の減らねえ奴だな。わかった。とびきりのご馳走してやっから、美味かったら千秋サマと呼べよ!」
プッと吹き出して、爆笑する高耶を招き入れ、千秋はさりげなく家に結界を張った。