『魔法使いの年始-11』

飛び立った直江が向かったのは、千秋の家ではなく色部の邸だった。

「ご無沙汰しております。
 このたびは丁寧な賀状をありがとうございました。」

新年の挨拶には遅い時間だったにも関わらず、
色部はとっておきの酒とおせちを出し、喜んで直江を迎えた。

今は魔法界の重鎮とも呼ばれている色部だが、
昔の魔導士との戦いでパーティーを組んだ直江にとっては、
意外と茶目っ気のある面白い友人でもある。

「よく来たね。千秋なら間違いなく君に届けてくれると思ったんだ。」

直江は勧められた酒をひとくち呑んで、
空になった色部の杯に、その極上の冷酒を注いだ。
酒もおせちも、高耶がいたら喜ぶに違いない。

連れて来てあげたい。
自然にそう思って、直江は小さく微笑んだ。

高耶に見せたいもの、教えたいものが、まだまだいっぱいある。
それなのに、自分は高耶を隠すことしか考えなかった。
腕の中でじっと抱きかかえていれば、安全だと思い込もうとしていた。
本当はそれでも不安だったのだ。
色部の年賀状ひとつで、高耶まで不安にさせるほどに…

大丈夫。
何があっても、俺はあなたを離さない。
本当に守る方法は、存在を隠すことではなくて、
あなたを守り通すという意志を、内外に示すことから始まる。

どこの誰にも渡さない。
あなたが呼んでいるのは、他の誰でもない。
俺なのだから…

 

さて、直江と高耶さん、それぞれの不安は拭えるのでしょうか?
続きは拍手に… 引き伸ばすつもりじゃないんだけど、拍手の方が更新が楽なのよ〜(^^;

 

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