飛び立った直江が向かったのは、千秋の家ではなく色部の邸だった。
「ご無沙汰しております。
このたびは丁寧な賀状をありがとうございました。」
新年の挨拶には遅い時間だったにも関わらず、
色部はとっておきの酒とおせちを出し、喜んで直江を迎えた。
今は魔法界の重鎮とも呼ばれている色部だが、
昔の魔導士との戦いでパーティーを組んだ直江にとっては、
意外と茶目っ気のある面白い友人でもある。
「よく来たね。千秋なら間違いなく君に届けてくれると思ったんだ。」
直江は勧められた酒をひとくち呑んで、
空になった色部の杯に、その極上の冷酒を注いだ。
酒もおせちも、高耶がいたら喜ぶに違いない。
連れて来てあげたい。
自然にそう思って、直江は小さく微笑んだ。
高耶に見せたいもの、教えたいものが、まだまだいっぱいある。
それなのに、自分は高耶を隠すことしか考えなかった。
腕の中でじっと抱きかかえていれば、安全だと思い込もうとしていた。
本当はそれでも不安だったのだ。
色部の年賀状ひとつで、高耶まで不安にさせるほどに…
大丈夫。
何があっても、俺はあなたを離さない。
本当に守る方法は、存在を隠すことではなくて、
あなたを守り通すという意志を、内外に示すことから始まる。
どこの誰にも渡さない。
あなたが呼んでいるのは、他の誰でもない。
俺なのだから…