『誕生日の贈り物』

「電車なんて久々だ。おまえは?」
平日の昼間、ラッシュアワーを過ぎた各駅停車は、客もまばらだ。
ボックス席に向かいあって座ると、高耶は屈託のない笑顔で、直江に話しかけた。

直江が微笑んで頷くと、高耶は窓の外を眺めながら、
「お!見ろよ。あんなとこで野球やってるぜ。リトルリーグかな?」
と楽しそうな声をあげた。

照りつける夏の太陽よりも眩しい笑顔が、目の前にある。
直江は心の中で、この旅を勧めてくれた千秋に感謝していた。

 

千秋とは、魔法学校からの友人で、飄々とした風貌からは想像できないが、
巷では賢者と呼ばれるほど、卓越した力を持つ魔法使いだ。

手を借りるつもりはなかったのだが、たまたま遊びに来た千秋と話しているうちに、
千秋が自分も探してやると言い出したのだ。
きっと面白そうだと思ったに違いない。

だが実際のところ、捜索に行き詰まっていた直江にとって、
千秋の参加はありがたかった。
なんといっても、モノ探しは千秋の専門分野みたいなものである。
もう誕生日も近い。 もはや自分だけで探したいなどと、贅沢なことを言える状態ではない。

「地域が特定できてんなら、そいつと一緒に列車で行ってみろ。  もしかしたら子供の頃のこと、思い出すかもしれない。」

地図を指で辿りながら、そう言った千秋は、何かを思いついたらしかった。

その効果は不明だが、少なくとも楽しい旅なのは間違いない。
初めての電車で慌てないように、事前調査をしておいてよかったと、
途中の駅で弁当をふたつ買いながら、直江は楽しそうに微笑んだ。

 

まだ終わってないという…(滝汗)ごめんなさい。まだ続きます〜(><)

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