店を出た直江は、そのまま高耶のもとに向かった。
ペアリングを贈ろうと思ったのは、自分達を繋ぐ証しが欲しかったからだ。
でもそれは、自分が欲しいと思うもので、高耶が欲しがりそうなものではない。
欲しいと思ってくれたなら、どんなに嬉しいだろう…
けれどやはり誕生日には、高耶が喜ぶものを贈りたい。
それに「何が欲しい?」と聞いた時の反応も、見てみたかった。
贈り物を、もうひとつ。
それだけで、今まで悩んでいたのが嘘のように、心の中に楽しみが広がる。
プレゼントを選ぶだけの事に、悩んだりウキウキしたりする自分が可笑しくて、
直江はいつしか箒を揺らしながら笑っていた。
「何が欲しい?…って…」
オウム返しに呟いて、高耶はニコニコ笑っている直江の顔を、唖然と見つめた。
真っ昼間の往来で、いきなり空から飛んで来て、何を聞くのか…この魔法使いは!
姿の消えるマントを身に付けて来たとはいえ、実体はあるのだ。
こんな街中を飛んで、事故ったらどうするんだ。
一体どんな緊急事態が…
とか心配しちまったじゃねぇか!
でも…
この笑顔は悪くない。
…というか、顔を見た瞬間に、嬉しいと思ってしまったのだけれど…
「ンな事、急に言われても思いつかねえよ。
これから家でゆっくり考えて」
ちょっと目を逸らして言いかけたとたん、直江の腕が腰に廻って、
高耶はあっという間に箒の上に抱き上げられていた。
「ばッ馬鹿!何やってんだ!!」
同時にフワッと広がったマントの下で、直江の唇が高耶の声を奪った。
「静かに…姿は見えなくても声は消せない」
耳に触れる吐息の甘さが、心地良い痺れを生んで、眩暈がしそうになる。
欲しいものなんて何もない。
おまえがいるなら、それだけで俺は充分なんだ。
心の声は、伝える術もなく言葉もないまま、高耶の胸に熱く渦巻いていた。
まだまだ続きます(^^; 拍手ログに戻る
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