千秋の話によれば、モノには波動という固有の波長があるのだそうで、
そのパターンがわかれば、椅子を探すのも難しくないらしい。
「で、椅子の波動を調べるのが、その機械ってわけか?」
高耶は珍しそうに、千秋が集めた部品で組み立てている、ガイガーカウンターによく似た機械を覗き込んだ。
「いや、調べるのは俺。
これは俺の指示に従って、余分なノイズをカットした後、微細な波動を拾って増幅するんだ。
そのほうが効率的だからな。」
千秋は喋りながら片方の耳にヘッドホンを当てると、幾つものダイヤルやボタンを触って、なにやら調整し始めた。
「家の中は探したんだよな?」
眉をひそめて険しい表情になった千秋が、片耳に神経を集中したまま問いかける。
「ああ。押し入れや倉庫も見たが、どこにも無い。
それに、この家には鍵も掛かっていなかった。
大事な椅子を置くにしては、あまりに不用心だと思わないか?」
直江の答えに、千秋はチラッと目を上げると、
「椅子は別の場所にあると言うのか? …まあそれも有り得るが…」
そんな単純なものじゃなさそうだぞ。と言おうとして、千秋は言葉を飲み込んだ。
とにかく椅子を見つけてからだ。
千秋は目に見えない障壁が、迷路のように張り巡らされた家と、高耶の顔を見比べて、静かに立ち上がった。
自分で大賢者と名乗ったのは、もちろんちょっとしたジョークだが、
千秋の本職である魔法のアイテムを造る仕事は、幅広く深い知識が無ければ出来ない。
加えて千秋には、波動を読み取る天性の才能があった。
その千秋でも、増幅器がなければ気付かないほど、障壁は巧みに出来ている。
この障壁を作ったのは、やはり椅子を作った爺さんだろうか?
それとも、元々あった障壁を利用して、椅子を隠したのか?
どちらにしろ普通の爺さんではない。
「椅子の材質は樫の木だな? ンじゃ基本パターンは、これで良し…っと…。
後はおまえが近づいた時の反応で、椅子の在処がわかるはずだ。
さあ始めるぞ!」
そして千秋は、高耶に前を歩かせて、家の中から庭の隅々まで、鬼のような捜索を開始した。
なにやら不思議な爺ちゃんの家(笑)椅子は見つかるのでしょうか? 拍手ログに戻る
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