光のかけら-40.5

部屋に入ると、直江はドアの鍵を閉めた。
無機質な音が耳に残って心臓が跳ねる。

怖いなんて、思わないと思っていた。
なのに…直江の腕の中で、俺は震えているのか?

「だから言ったのに」
小さく震える体を抱きしめて、直江は服のまま高耶をベッドに寝かせた。

「でも止めてあげない。知りたがったのはあなただ。だからあなたは俺を感じて下さい。
俺に教えて。あなたを…」
高耶の前髪を掬い上げて、堅く閉じた瞼にくちづけると、直江は甘く囁きながら、
頬に、耳に、首筋に、熱いキスを落としていく。
「んっ…」
キスのたびに胸が大きく上下する。
不思議な感覚が這い上がってきて、呼吸がどんどん荒くなっていた。

舌を絡めて吸い上げられた胸に、甘い痺れが走って、高耶は思わず声を上げた。
「…直江! やめっ…あっ…」
震えが止まらなくて、直江の腕をぎゅっと掴んだ。
顔を上げた直江は、高耶の瞳を見つめて微笑むと、腕を掴んでいた手に指を絡めてしっかり繋いだ。

「離さないで。怖かったら爪を立ててもいいんですよ。」
そういうと、今までとは比べものにならない熱で、高耶の全身にくちづけ始めた。
「いやだ!…だめだ…なおえ…なお…」

体が作り変えられていく。
蕩けるような官能に、体が勝手に反応している。
おまえを感じて
おまえだけのために、俺の体が変わっていく。

涙がぽろぽろこぼれていた。
嫌なんじゃない。
怖いのでもない。
ただ愛しくて…おまえが愛しくて…
涙が止まらないんだ。

高耶の涙を吸い取って、
「手を…離してもいいですか?」
直江が少し困った顔で言った。
「…あ…うん、もう大丈夫だ…」
頷くと、直江はクスッといたずらっぽく笑った。

「大丈夫じゃなくなっても、離しません。」
「?」
直江の言った意味は、すぐにわかった。
けれどもう、そのときには何も考えられなくて、
俺たちはただ、ふたりだけの世界を全身で感じていた。

 

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