直江のパスを受けて、千秋が速攻でシュートを決めると、すかさず蘭丸がすばやい動きでボールを捕らえる。
信長を封じる直江のガードは堅く、蘭丸は頼竜にパスを送った。
「景虎! ゴールに走れ!!」
千秋が叫んだ。
この位置からでは、頼竜はシュートできない。
蘭丸を千秋が、信長を直江がしっかりとガードしている今、頼竜は自分でゴールにいくはずだ。
シュートされても1点。こちらは残り3点入れたら終わりだ。
ならばいっそ、ゴールに先回りした方が決着は早い。
走る高耶の背中を、頼竜の食い入るようなまなざしが追った。
振り向け! 俺を見ろ、景虎!
今度こそ、俺の存在を無視できないようにしてやる。
おまえと戦っているのは、この俺だ。
今、おまえを追っているのは、この俺だ!
なのに…
いつもいつも…どうして俺を見ない?!
戦っても戦っても、戦い足りないのは、きっとそのせいに違いない。
勝てない相手だとは思わない。
だがいつも、追い詰めたと思った瞬間に、手の届かないところに行ってしまう。
シュートを決めたら…
ボールを取り合えば…
おまえは俺を見るか?
その獲物を狩る野生の虎の瞳で、俺と闘うか?
答えは、このシュートを決めればわかる。
高耶が振り向くのを待って、頼竜はゆっくりとシュート体勢に入った。
頼竜の手から放たれたボールが、ゴールに近づく。
そのとき、大きくジャンプした高耶の手が、ボールを掴んだ。
憤然と走り寄った頼竜の前で、背を向けた高耶は、ひとつドリブルしてシュートに飛んだ。
8点目のボールが、ゴールの真ん中を落ちていくのを、頼竜は息を止めて見ていた。
ボールが地面に落ちたとき、頼竜は狂ったように走り込んだ。
このボールは離さない。
これだけは、俺が決めてやる。
今ここで。このボールで。お前と俺しか今はいないこの場所で。
俺を見ろ! このシュートを見ろ! 景虎!!
渾身の思いを込めた頼竜のシュートは、雨のつぶを弾かせながら、ゴールの端に当たって跳ね返った。