『ヒートアップ! 第3戦』−6

 

「相変わらず甘いな、景虎。これがただの試合で終わると思っているのか?」
すっと近づいた頼竜が、ニッと意味ありげに笑いかけた。
それを無視し、高耶はまっすぐゴール下を目指して走り出した。
「な…貴様、俺を無視する気か!」
真っ赤になって追いかける頼竜をそのままに、千秋と蘭丸はボールを挟んで対峙していた。

「さあ、どこにパスする? このままゴールなんてさせないよ。」
綺麗な顔をしていても、蘭丸の運動能力は侮れない。
彼の霊力は相当なものだが、体も信長を守る武将としてしっかり鍛え上げている。
換生するときに、宿体を選び抜いたのは間違いないだろう。
全く抜かりのない男だ。
「けどなあ、大事なのは中身なんだよっ!」
千秋が手首のスナップを利かせて放ったボールは、ちゃんと胸で捉えたはずの
蘭丸の腕でギュルギュルっと回転すると、肩を超えて後ろに飛んだ。

あっと思うまもなく、直江がそのボールを掴んで走る。
蘭丸は呆然と自分の腕を見つめたまま動かない。
速さのあるドリブルで、一気にゴール下まで行った直江を待ち受けていたのは信長だった。
「なんだ、今のは? お蘭の球をどうやって獲った。力か?」
信長の声で我に返った蘭丸は、次の瞬間ギリッと唇を噛んで千秋を睨んだ。

それは、蘭丸がこの試合で初めて見せた真剣な眼だった。
「へぇ。やるじゃないか、安田長秀。」
「あんなもんで言われたくねえな。まだまだ! ここからが本番だ!」
凍りつくような蘭丸の視線を、眼の端で受けとめると、千秋はニヤリと笑って
ゴール前に走った。

「直江! さっさと入れちまえっ!」

ひきだしてやるぜ。こいつらの本気を!
小細工なんかできねぇくらい、バスケに熱くしてやる!

「そうはさせぬわ!」
シュートに飛んだ直江を、信長がジャンプで遮る。
信長の体が邪魔でゴールが見えない。
僅かに見えたゴールを狙って放たれたシュートは、信長の腕を掠めてリングに当たった。
ゴンと鈍い音を響かせて、ボールが跳ね返る。
入らなかった。と思った瞬間、ザシュッとネットを擦って、ボールが地面に落ちてきた。

頼竜の体当たりジャンプを振りきって、高耶がリバウンドをゴールに押し込んだのだ。
「すげぇ…すげぇよ、仰木!」
潮が興奮して叫ぶ。
熱狂的な声援が巻き起こる中、弾んだボールをダッシュで捕らえたのは、最後に来た蘭丸だった。

「頼竜!! ワンバウンドで殿にパスだ!!」
バシッと受けた頼竜は、蘭丸の凄まじい気迫に息を呑んで、即座に信長にパスを送った。
「直江! とめろ!!」
高耶と千秋の声が重なった。

試合はこれからどんどん熱くなる予定です。
広いお心で軽〜く読んでやって下さいね〜(^^)

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