『朝顔』-3

 

本当は、いつだって求めてる。
おまえの唇を、手を、眼差しを…
だからこそ、流されたくないんだ。

際限のなくなる自分が怖い。
どこまでも欲しくなって、もっと先まで望んで…

そんな自分を、知られたくない。知りたくない。

本当はきっと、おまえよりずっと、俺は欲深い獣なんだ。

だから…

 

言葉の通り、その後の直江は紳士だった。
というか、不埒なことをする隙も無かったのだ。

見に行った映画は、頭が弾けるようなアクション冒険巨編で、
笑ってハラハラして喝采を贈って、
すっかりペコペコになった腹を満たしに行ったのが、
美味いと評判のラーメン屋。

これが誕生日のデートとは…ムードも何も、あったものじゃない。
けれど、それが高耶らしくて、そして楽しかった。

そんな風に過ごしている内に、あっという間に日が沈み、車は直江の部屋へと向かっていた。

 

**************

マンションに近づくにつれ、高耶は目に見えて無口になっていった。
行き先を告げた時には、わずかに瞳を揺らしたものの、コクンと頷いてくれた。
今も、帰りますか?と訪ねると、横に首を振って、行くとは言ってくれるのだが…

運転しながら気遣わしげに見ていた直江は、路肩に車を寄せると、高耶の瞳を覗き込んだ。

「高耶さん。もし気が進まないなら、どうぞ気にしないで言って下さい。
 ケーキもワインも、今日でなくても味わえる。
 でも、あなたの笑顔は、今日の分を明日というわけにはいきません。
 せっかくの誕生日を、曇った顔で終わらせたくない。だから…」

そう言って、ちょっと言葉を切った直江は、

「お願いですから、そんなに身構えないで下さい。
 美弥さんが、ああ言ってくれたのは、ただ私に時間を与えようとしてくれただけで、
 それにあなたが囚われる必要はないんです。」

困った顔で微笑むと、返事を待たずに車を再び発進させた。

車は次の交差点を左に曲がり、暫く進んでまた左に曲がると、今度は右に曲がって進んでいく。
方向が違うことに気付いて、高耶は思わず直江の腕を掴んだ。

「直江! どうして…」

車は、高耶の家に向かっていた。

 

2008年9月23日

 

このお話、少しずつしか進まなくて、こうれんさんに携帯からメールを送ってるんです。
そしたら、連ドラみたいに楽しんでます。と仰って下さって…(笑)
ホントの連ドラのように、毎日お送りできたらいいな〜♪←遅れてばかりですみません(^^;
明日には、甘い夜に突入できますように…(滝汗)

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