ギュッと唇を閉じて拒みながら、高耶の胸は喘ぐように大きく上下している。
「ばかやろ…昼間っからこんな…ンなとこで何すん…だよッ!」
怒気を孕んでいながら、掠れて途切れがちになる声が、甘くて一層そそられる。
赤くなった耳元に、そっと唇を寄せた直江は、
「大丈夫ですよ。サンシェードをした車の中なんて、誰も見ない。
ほら、この窓も外からは殆ど見えないのは、あなたも知っているでしょう?」
囁いて、柔らかな耳たぶを軽く咬んだ。
高耶がヒクリと息を詰める。
そのまま耳の後ろに舌を這わせ、緊張している首筋から鎖骨へと、ゆっくりキスを落としていく。
「…ッ直江!」
堪えきれず小さな悲鳴を上げた高耶に、直江はハッと体を起こした。
「すみません。あなたを泣かせてしまった…」
やるせない溜め息をついて、直江は高耶の頬に手をやると、
目尻に溜まった涙を親指の先でそっと拭った。
「…騙されてる。」
ボソッと高耶が呟いた。
「え?」
そんな…騙すなんて、そんなつもりは…
うろたえる直江を憮然と見上げ、
「これのどこが『優しくて紳士みたいな人』だ。
美弥も、おまえの会社の女たちも、全然わかってねえ。騙されてる。」
高耶は整わない息をごまかすように、一気に言い放って横を向いた。
目を丸くした直江が、ふっと微笑んで、
「あなただから…ですよ。あなたの前では、紳士でなんかいられない。」
背中を向けてしまった高耶を、熱く見つめて呟いた。
「でも、もう少し我慢します。
今なら映画も良いし、どこでもお望みのままに、お連れしますよ。」
明るく笑った直江に、
「紳士でな。」
すかさず高耶の声が飛ぶ。
二人が乗った車は、シェードを外して、軽快に走り出した。
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