旧制第一高等学校寮歌解説

日は眠る

大正6年第27回紀念祭寮歌 中寮

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1、日は眠る
  暗の足音地にあまねし
  (うま)しの(たね)微睡(まどろ)
  黒きつちの其の下に
  日は眠るよ
  日は静か。

                                      3、日は輝く   
  光の波は地にあまねし
  緑の若葉萠え出づる
  霞みわたれる春の野に
  日は歌ふよ
  日は踊る。
*各番歌詞末の句読点「。」は大正14年寮歌集で削除。
現譜は、この原譜と全く同じで変りはない。


語句の説明・解釈

本寮歌の特色は韻律面から見て明らかで、『五・七』や『七・五』の定型詩の約束を破り、ほとんど自由詩と称していい表現形式を寮歌において恐らく初めて創始したと言えるであろう(一高同窓会「一高寮歌解説書」)

語句 箇所 説明・解釈
日は眠る
暗の足音地にあまねし
(うま)しの(たね)微睡(まどろ)
黒きつちの其の下に
日は眠るよ
日は静か。
1番歌詞 西の空に日は没して、日は眠る。闇が足音を立てずに地上余すところなく蔽ってゆく。美しい草花の種も、春の芽吹きにそなえ黒い土の下で眠る。日は眠って、日は暗く、静かである。

「日は眠る」
 日が西に沈んで、翌朝、東の空に昇るまで、「日が眠る」と表現。当然に、辺りは暗い夜である。

「暗の足音地にあまねし」
 闇が足音を立てずに地上余すところなく蔽ってゆく。「暗の足音」には、音はない。「あまねし」は、余すところなく及んでいる。一帯に・・・・している。

「美しの種も微睡む」
 美しい草花の種も今は芽吹きに備え地中で眠っている。

「日は眠るよ 日は静か」
 「日は静か」とは、辺りは暗く静かであることをいうか。
水色の
星屑散れる夜の空
月は涼しげ中天に
時の駒はかけりゆく
二十七の
誕生日。 
2番歌詞 夜の空を横切って流れる天の川に水色の星屑が散らばって輝き、月は天心に澄んだ光りで輝いている。時を進める駒が駆け行くように時は過ぎてゆく。一高寄宿寮は、今年開寮27周年を迎えた。

「水色の 星屑散れる夜の空」
 「水色の」は、天の川をイメージしてか。

「月は涼しげ中天に」
 「中天」は天の中心、中空。天の川のほとり中空には満月が涼しげに。「凉しげに」は、天の川のほとりで川風に涼んでいるとでもいうか、すっきりと澄んだ光に照っている。

「時の駒はかけりゆく」
 年月は経過していく。「時の駒」は時計の針を駒にたとえる。

「二十七の誕生日」
 寄宿寮の開寮27周年記念日のこと。
日は輝く
光の波は地にあまねし
緑の若葉萠え出づる
霞わたれる春の野に
日は歌ふよ
日は踊る。
3番歌詞 日は輝く。日の光は地上にあまねく降り注ぐ。緑の若葉が芽を出し、霞のかかった春の野に、日は光り輝き、大空を東から西に回る。

「光の波は地にあまねし」
 日の光は地上あまねく照らす。

「日は歌ふよ 日は踊る」
 「歌ふ」は光輝くこと。「踊る」は東から西へ大空を巡ること。 
 「大空舞ひて舞ひ落つる」(大正3年「大空舞ひて」1番)
                       

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