【ガンダム正月〜ジオン＝大日本帝国説〜】
お正月の様子をすこし。今年は大晦日に母が入院してしまったのでたいしてめでたい状況ではないものですから。
そんな感じで初詣も近所のお寺ですませて、家で寝正月を決め込むことに。正月は完全に引きこもりです。

そんな寝正月の友はテレビ。しかも、今年はMXテレビでSFアニメ傑作選として「ガンダム」をやっています。
サイド７からア・バオア・クーまでのホワイトベースとジオン軍の死闘を一気に見せるという他局ではできない企画です。
で、久々にガンダムの一気にみました。
やっぱりいい。まさに決め台詞のオンパレード。とにかく歌舞伎と一緒で筋は分かっているのに見ずにはいられないと言う感じです。また、アムロをはじめとしたホワイトベースのクルー達の言動、行動には思春期の危うさ、それこそ「自分の若さゆえの過ち」を見るようで、１０代〜２０代前半の自分に照らし合わせてみて妙に共感してしまいます。誰もが妙に共感できるようなダメな性格のキャラクター設定がガンダムが支持される理由なのかなぁ。また、いろいろと突っ込めそうなところで、突っ込みをいれさせないようにフォローする描写があったりと、物語と世界観の整合性を取ろうとしている丁寧なつくりをしているところに、改めて関心してしまいました。（これをおろそかにすると、白けて次から見ないって事になっちゃうんだよなぁ）

でここからが今日の本題。
もう一つ、改めて思うのはジオン公国は大日本帝国、戦中の日本に似ているなぁと言うことです。
「大日本帝国万歳！！」とかやっている記録映像とガルマの国葬で「ジーク・ジオン」を叫ぶ民衆はオーバーラップしますしねぇ。すべてが戦争のためと言う雰囲気は、８月によくやる戦争ドラマと同じにおいがするじゃないですか。
「ガンダムと第二次世界大戦」と言う本があって、これははジオンのモビルスーツの進化をドイツの戦車と比較しています。また「００８０」のようにジオン軍をドイツ軍と重ねる動きもあります。ジオン＝ナチス・ドイツと言う認識のほうが一般的な見方です。
でも、改めて本家「ガンダム」を見れば、私にはジオン軍がドイツ軍ではなく日本軍に見えます。
以前、中学生に太平洋戦史を教えたときに「ガンダムみたいだ」と言われたこともあります。

SF大会でも発言したのですが、私は間違いなくジオン公国のモデルは大日本帝国、つまり戦中の日本だと思っています。
以降その論を検証するため、ジオン公国と大日本帝国を比較してみましょう。

まずジオンの支配者ザビ家を大日本帝国に当てはめてみると

となります。例えばデギンは戦争の終盤でジオン本国を戦火から守るため和平の道を模索します。これは昭和天皇が陸軍の反対を押し切って終戦の聖断を下したのと同じ動きです。またドズル配下のランバ・ラルがキシリア配下のマ・クベから補給を受けられないなど、軍内部が二系統に別れ仲が悪いのは帝国陸海軍にそっくりです。

次に1年戦争と太平洋戦争の戦史を比較してみましょう。

恐ろしいまでにジオン軍の敗北の軌跡は日本軍に一致します。それだけではありません。モビルスーツと日本軍の兵器（主に航空機）もまた一致するのです。

ザクはガンダム登場以前は連邦の宇宙戦闘機や戦車に対して圧倒的に優位だったのに、ガンダム登場以降に雑魚に転落し、やがては連邦の物量を背景にした大量のＧＭの前にすりつぶされていいきます。これはグラマンＦ６ＦやＰ−３９登場後に零戦がたどった運命とダブります。またザクではしんどい局地専用にグフやズコックなどが開発されたように、日本軍も戦線の拡大にあわせて局地戦闘機や水上戦闘機を開発していきます。また、戦争の経過にあわせて主力機が、ジオン軍はザク→ドム、日本軍では隼→飛燕/疾風、零戦２１型→零戦５２型となる所も似ています。（それに「疾風のごとき死神の列」ってドムのことも歌われていますしね。えっ、関係ないって。）またジオンのゲルグクはあと数ヶ月早く量産化できれば戦局が変わったといわれる名機ですが、同じように日本軍にも大戦末期に五式戦闘機、紫電改といった遅すぎた名機が存在しました。
また大日本帝国海軍は当時世界最大の戦艦「大和」と「武蔵」を持っていましたが、「武蔵」がレイテ海戦、「大和」が沖縄戦と特攻同然の作戦で戦没しました。ジオン軍もまた巨大モビルアーマー：ビグザムを宇宙要塞ソロモンが陥落する際、兵を逃がす為、司令官ドズル・ザビ自らが特攻作戦で使用しています。戦艦「大和」「武蔵」とビグザムの最期は見事にオーバーラップします。このほか、ガンダムに次々撃沈されていったムサイ巡洋艦はソロモンの海で散っていった水雷戦隊の駆逐艦が当てはまります。また兵器開発の姿勢ついても、戦況が悪化してくると資源が少ないのに次々と新型を開発してくるところもそっくりです。

さらに、ジオン軍の宇宙要塞ソロモンは日本軍の最大の拠点であったラバウルがあったソロモン群島から名がつけられいるに違いありません。もう一つ、ジオン軍はコロニーへの毒ガス注入など非人道的な作戦を平気でやる一方で、個人レベルではランバ・ラルやアナベル・ガトーなどサムライ魂にあふれた軍人も多いのが特長です。この辺も、何気なく日本軍に似ています。

その上、ジオンの戦争目的はスペースノイドの独立で、これは植民地支配からのアジア開放が目的だった日本にそっくりです。そして、その目的とは裏腹にジオンはザビ家の独裁、日本は日本によるアジアの支配に本音だったというところまでそっくりです。また、ギレン総帥はガルマの国葬で「ジオンの国力は連邦の1/３０」と語っています。これは太平洋戦争当時の日米間の国力差とほぼ一致します。一年戦争とはもてざるスペースコロニー国家ジオンが公国が連邦に挑んだ戦いであり、太平洋戦争はもてざる国：日本がアメリカに挑んだ戦いです。戦争の構図もそっくりです。

ここまでジオンと大日本帝国の共通点について述べてきました。では、ジオンとナチス・ドイツはなにが違うのでしょう。
相違点は2点あります。
�@ギレンがヒトラーほどの独裁者ではなかった。
ザビ家の長男ギレン・ザビは父：デギンから「ヒトラーの尻尾」と評されていますが、実際は父：デギンだけではなく軍を率いる妹：キシリア、場合によっては弟：ドズルの意向を尊重しなければなりませんでした。これは、デギンがダルシア首相に和平工作を命じたことや、デギン自身が連邦との和平交渉に乗り出したことからも伺えます。また、彼が父を殺し完全な独裁者として振舞おうとした時に、彼はキシリアに殺されます。彼はヒトラー型の独裁者というわけではないようです。
ですから、ジオン公国はヒトラーの意向が優先したドイツよりも日本のほうに似ているといえます。
�A戦争の目的がジオン公国とナチス・ドイツの戦争目的が違う。
ナチス・ドイツはドイツ民族の生存権拡大と言うことでポーランド侵攻をはじめ英仏との先端を開きます。第一次大戦のリベンジという目的もありましたが、今ひとつ戦争の大義名分がはっきりしないところがあります。ジオンの場合は、スペースノイドの自治権確立という大義名分がはっきりしています。これはむしろ「植民地支配からのアジアの開放」を大義名分にした日本に近いと考えます。
ナチス・ドイツとの相違点は、そのまま大日本帝国との相同点になります。そのようなところからジオン公国はナチス・ドイツよりも大日本帝国に近いと言えるでしょう。

たぶん、これは推測ですがガンダムの原作者の富野監督とサンライズのスタッフは敵役として独裁国家を設定するのに、1978年当時割と近い過去で、経験者も多い独裁国家である大日本帝国を想定し、同じような理由で舞台となる戦争も太平洋戦争をモデルにすることでリアリティを強めようとしたのではないでしょうか。
で、皮肉なことだが敵役ジオンのモデルを過去の日本にもとめたことによって「ガンダム」は成功したのでしょう。
戦争を知らない世代にとっては太平洋戦争もアニメの一年戦争も情報と言うことでは一緒です。
しかし、太平洋戦争に関して言えば２０代後半〜３０代の世代にとって見れば自分の祖父母が戦争を経験した世代であり、中には兵士として生き残った人間の話を聞くこともあったでしょう。それも情報でしかないが、心への訴え方は生の情報である祖父母の戦争体験は各段に違い、感情移入を容易にすることができたはずです。
その感情移入できる過去をもとに作られた架空の国ジオン公国。その国が他のアニメの仇役よりも断然支持されたのは当然のことと思います。そう、私たちははザクで連邦と戦ったジオン兵の子孫でもあるのです。

てなことで

敢えて言おう！！！

ギレンは東条の尻尾であると！！

ところで、ジオンにも靖国神社はあるんだろうか？会ったらザビ家やハマーン、シャアの扱いでもめってんだろうなぁ。きっと。

(不定期徒然草２００４年１月２４日号より転載）

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