3.ブロントサウルスたちの末裔達
【カミナリ竜の歴史】
カミナリ竜(竜脚類)はその巨大さから恐竜らしい恐竜と言われる。
簡単にここで彼らの歴史を俯瞰してみよう。
彼らの歴史は以外と古い。タイで三畳紀の地層からイサノサウルスという竜脚類が見つかっている。三畳紀と言えば恐竜が生まれた黎明の時代であり、イサノサウルスはこれまで竜脚類の先祖と考えられたプラテオサウルスなどの古竜脚類と同じ時代に生息しており、竜脚類が恐竜誕生の初期からいたグループであるということをうかがわせる。次のジュラ紀に入ると竜脚類は地球上で主要な草食動物としての地位をかため、ジュラ紀後期には第一回目の巨大化のピークを迎える。アパトサウルス、ディプロドクス、マメンキサウルス、カマラサウルス、ブラキオサウルスなど我々がよく知っている竜脚類が生息したのがこの時代であり、最大の恐竜候補として挙げられるセイスモサウルスが生息したのもこの時代の北米に生息していた。白亜紀に入ると北半球ででディプロドクスの仲間などいくつかの系統は衰退する。代わってイグアノドンのような鳥脚類が北半球を中心に繁栄したためや俗説としてカミナリ竜がジュラ紀に絶滅したと言われる。しかし、それはウソである。ジュラ紀から引き続きブラキオサウルスの仲間は白亜紀前期にヨーロッパのペペロサウルス、北米のサウロポセイドンといった最大級の種を生み出し、またカマラサウルスの仲間もアジア最大級恐竜のヌロサウルスを生み出している。また生き残ったディプロドクスの仲間では小型ながらアマルガサウルスのような特異な形態の種も生まれている。カミナリ竜は白亜紀に入っても主要な草食恐竜であったのだ。特に白亜紀に勃興したタイタノサウルス類は白亜紀後期に南半球(南米、アフリカ、インド)で主要な草食恐竜であり、北米のアラモサウルスのように北半球に逆進出したもの、アルゼンチノサウルスのようにジュラ紀の竜脚類に負けず劣らず巨大化したもの、南米のサルタサウルス、ヨーロッパのアンベロサウルスなど装甲を発達させたグループを生み出した。また、議論の余地がある話ではあるがヨーロッパに生息したヒプセロサウルスはKT境界線(白亜紀の終わり)
より200万年のちの暁新世の地層からも卵を含む化石が見つかっているといわれ、最期の恐竜の一つといわれている。
とにかく、カミナリ竜たちは恐竜時代の黎明から最期まで繁栄し続けた種族である。
当然、恐竜が絶滅しなければ彼らの末裔は今でもこの地球上で繁栄しているに違いない。
これから、その彼らの末裔を紹介していこう。
【1.社会性を発達させたカミナリ竜】
”ラジャファント”はインドの草原に生息するカミナリ竜である。我々の世界の象に該当する動物と考えて差し支えないだろう。彼らは外見上、新生代以降に出現した草原という環境に適応するため口の形が草を刈り取るような形になっている以外、彼らの祖先であるタイタノサウルスとの違いはない。
彼らが発達させたものは群れで行動する高度な社会性である。中生代のカミナリ竜にも群れで行動する社会性は足跡化石から指摘されているが、どうやら歩幅の計測から中生代のカミナリ竜は群れというより複数の個体が同時に同じ方向に向かって移動しただけだったらしい。
しかし、ラジャファントの場合は違う。彼らはリーダー(年長の雄の個体)を中心に厳密な社会構造を有している。彼らが雨季に草原を移動するときにはリーダが群れの先頭に立ち、子供を群れの中心に集めその外側を雌が、さらにその外側を若い雄が囲む輸送船団のような陣形を組む。
【2.やっぱり巨大なカミナリ竜】
”ランバー”はアルゼンチのパンパに生息し、体長25m、体重70トンに及ぶ、ジュラ紀のセイスモサウルス、白亜紀のアルゼンチノサウルスには及ばないものの中生代の巨大竜脚類に引けをとらない巨体である。もともと南米には草原に適応した華奢な”走行竜脚類”が新生代に繁栄していたが、北半球からのより俊足な肉食恐竜が侵入したため絶滅してしまった。ランバーはその巨体と分厚い皮膚を武器に生き残った種である。あまりにも巨大なため彼らを襲う肉食恐竜はまずいない。一方、巨大化した彼らは、巨大であるがゆえにそれを維持するため省エネ型の生物となった。彼らはジュラ紀に中国に生息したマメンキサウルスと同様首が肩から上に上がらず、長い首で体をあまり動かさずに広範囲の草を食べる生活をしている。彼らの象のような鼻は広範囲の草をむしりとるための適応である。
【3.装甲竜脚類の末裔】
”タートノサウルス”はランバーと同じくアルゼンチのパンパに生息している。彼らは、白亜紀のサルタサウルス、アンベロサウルスといった装甲を発達させたタイタノサウルス類の直系の子孫である。
彼らは、北半球からの俊足な肉食恐竜の侵入という危機に装甲を極端に発達させることで対応した。同様の例は白亜紀のアンキロサウル類、我々の世界のグリプトドンなどに見られる。
【4.島嶼性の超小型カミナリ竜】
”コビトタイタノサウルス”はインド洋の島に住む超小型のカミナリ竜である。彼らの先祖はマダガスカル島に生息する大型のカミナリ竜だが、島という食料が限られた環境で生きるためその体は先祖の1/5程度の大きさしかない。同様の例は白亜紀後期、群島であった現在の東欧に生息していたカミナリ竜のマジャーロサウルス、
ハドロサウルス類のテルマトサウルス、我々の世界でシチリア島に生息していたエレファス・ファルコネリという象のものがある。
ちなみにコビトタイタノサウルスがいる島には先に紹介したメガロサウルスの小型種コビトメガロサウルスが捕食動物として生息している。