| VS士郎(シロウ)第1話「……んっ、あぁ……う、あんっ……」
 深夜。
 ある屋敷のある一室。
 
 「はぁ……ん、ん、あっ……あ」
 
 薄暗い部屋の中で行われる、
 ひとつの秘め事。
 
 「あ……やぁ、もう……だ、め」
 
 抑えようとしても零れ落ちる鳴き声。
 きしむベッドの音。
 
 「はぁっ……し、士郎……」
 
 涙ながらに、
 愛しい者の名前を呼ぶ。
 
 「あぁっ……! 士郎、士郎……っ!!」
 
 最後にかん高い泣き声をあげて、
 少女は男の腕の中へ崩れ落ちた。
 
 「……はぁ……はぁ」
 
 男の胸に顔をうずめ、少女は荒い息を吐く。
 幸せな、本当に幸せな時間。
 心地良い疲れに体を痺れさせながら、そのまま――少女は深い闇に沈もうとした。
 
 「……え?」
 
 …………あれ。
 
 「あ、ちょっと、士郎……。や、あ、もう……あっ」
 
 …………えーと。
 
 「あうっ……や、駄目、士郎……」
 
 …………その。
 
 「ん、ああ、また……くる……士郎、士郎っ……ああっ!」
 
 …………
 
 「はあ……はあ、……え? や、ちょっと、うそでしょ?」
 
 …………あの。
 
 「あうっ……ん、ん、くっう」
 
 …………またですか。
 
 「士郎っ……もう、だめ……、ゆ、るして……」
 
 …………そういうわけで。
 その少女の夜は永遠かと思うほど果てしなく続いた。
 
 「ひあぁぁ…………っっ!!!」
 
 ご愁傷様です。
 
 
 
 
 
  衛宮邸の朝は早い。
とくに家主のシロウはこの家の家事のいっさいを取り仕切っているため、ほかの誰よりもその起床が早い。
 今日も今日とて彼は起きるやいなや早速キッチンへと飛び込んだ。彼が支度をする音と朝餉の良い香りがキッチンから漂ってくる。
 
 この家の居候である私はそういった一切合財を感じながら居間でゆっくりと待っていた。
 至福のときはもうすぐ。それを今か今かと待ちわびている。
 シロウの作る料理は美味しい。
 それは私にとってなによりも変えがたい好ましい事実。
 かつて――雑としか言いようのない料理を食べさせられ続けた私にとって、シロウの料理はまさに驚天動地の存在。彼はさまざまなバリエーションでもって常に私の舌を楽しませてくれる。彼の料理を食べるにつけ、昔の部下に対して暗い殺意が湧き上がってくるほどだ。
 
 まだでしょうか、まだでしょうか。
 そわそわする気持ちが抑えられない。
 でも、私は騎士。浮き立つ心をなんとか隠しながら、ぴんと背筋を伸ばしてそのときが来るのを待つのです
 
 と。
 そこへ、今の私のマスターが来た。
 遠坂凛。
 その少女は相変わらず朝に弱いらしい。幽鬼のような雰囲気を身にまとい、ふらふらと居間の中へ入ってきた。でも、いつにもまして彼女のその足取りが変だ。瞳の下にはうっすらと隈などまで浮かべている。
 
 「おはようございます、凛」
 「ん……おはよう」
 
 そう静かに返し、崩れるように彼女は席に着いた。
 
 「士郎は?」
 
 ぐでーっとテーブルに突っ伏しながら凛がたずねてきた。
 
 「朝食の準備をしています」
 
 女性としてそれはどうなのでしょう、と、凛のその姿を見て思わないでもなかったが、私はとりあえずかんたんにそう答えた。
 
 「なんか変わったところは無かった?」
 「シロウにですか?」
 「そう」
 
 凛がおかしなことを聞いてくる。
 
 「いいえ、なにも。いつも通りのシロウでした」
 「あ……そう」
 
 そう言ったあと、凛が小さく「なんであいつはあんなに元気なのよ」と呟いた。
 はて、なんでしょうか。
 ぶつぶつと小声で怨嗟の声を吐き出す凛はわがマスターながらなんか怖い。そして凛はなにかを決心したかのように、きっと顔を上げた。
 
 「セイバー」
 「は、はい、なんですか?」
 
 ちょっと驚いてしまう。
 凛の瞳にはなにかどろどろと濁ったものが漂っているような気がした。
 
 「あとで――ちょっとつきあってちょうだい」
 
 そう言ってくる凛に、私はただうなずくことしか出来なかった。
 
 
 
 
 「えっ……! 凛、あの、それはどういう……」
 朝食が終わったあとの居間。
 ここには私と凛の二人しかいない。くつろごうとしていたシロウを凛が無理やり追い出したのだ。なにやらあまりに無茶な魔術訓練の課題を出されて、シロウは泣きそうになりながら土蔵にこもってしまった。
 
 そして、私はふたりっきりになったここで凛からとんでもないことを訊かれていた。
 
 「だから、セイバーって士郎のやつにいつもどういうふうに抱かれてるの?」
 
 らんらんと瞳を輝かせて、我がマスターは私にそうたずねてきた。
 
 「そ、そのようなことは……」
 「なによ、いいでしょ別に、いまさら恥ずかしがらなくったって」
 
 そういう凛の顔もほんのりと赤く染まっている。なんだかんだ言いながら、彼女もやはり恥ずかしいようだ。
 
 実は――凛の言うとおり、私とシロウの間には、その、いろいろと複雑な関係がある。まあ、簡単にそれを説明するなら、つまり……私は定期的にシロウから魔力の供給を受けているということだ。
 マスターでもなんでもない彼から魔力を供給してもらう。そのためにすることはただひとつ。その……彼と、肉体的に――「つながる」ということだ。
 
 このことは凛も当然知っている。そもそも、そうするように提案してきたのは彼女なのだから。
 それでも普段はあえてこの話題にふれてくることは無かった。それが今日、突然、それもこんなにストレートに突っ込んでくるなんて……
 
 「あ、あの、凛。わ、私は、別に、その……」
 
 自分でもなにを言っているのかわからないぐらい混乱してしまう。思わずそのときのことを思い出し、顔がとにかく熱くなってきた。
 凛は自分の恋人がほかの女性を抱くということを――たとえそこにどんな理由があろうとも――こころの底では苦々しく思っているのだろう。それも当然だと思う。だから今日こうやって……
 
 「勘違いしないでよ、セイバー。わたしは別に貴方を責めようとしてこんなことを聞いてるんじゃないの。そりゃあ、ちょっとは――いえ、すごい複雑ではあるけど、これはわたしだって認めたことだし、文句を言うのもそれこそ今更って感じだし」
 「え……それじゃあ」
 
 何でこんなことを聞くのくのだろうか。
 
 「だから……ただ純粋に聞きたいの。士郎って、その……セイバーに対してはどうなのかなあって。……あっちのほうは……」
 
 最後のほうはぼそぼそっていう感じでよく聞こえなかった。でも、なんとなく言いたいことはわかった。それは私も気にしていたことだから。
 
 「あの、その……すごいです」
 
 だから私はそう言った。
 そのたった一言。この一言がすべてを物語る。
 そう――衛宮士郎は、魔術も剣術も半人前の衛宮士郎は、なぜか夜のことに関しては天才的な才能を誇っていた。
 
 「そう、やっぱり……」
 「はい……」
 
 それっきり、私たちは押し黙ってしまった。
 
 
 
 「実はね……」
 
 沈黙を破ったのは凛だった。疲れた表情でぽつぽつと話す。
 
 「この際だからはっきり言うけど、わたしのほうもちょっと困ってるのよ……」
 「困ってる?」
 「うん。あまりに士郎が、その、強すぎて……」
 
 わかります。よくわかります、凛。
 
 「あいつ、普段はあんなふうだから、からかいやすいし扱いやすいんだけど……夜になると急に人が変わったみたいに強気になって。おまけにあっちのほうはすごい上手いし、体力も馬鹿みたいにあるし……」
 
 ふうっとため息を吐く我がマスター。
 
 「昨夜なんてもう、何回――その、されたかわからないわ。最後には気絶までさせられちゃって……」
 「凛。それで今日はそんなに疲れた顔をしているのですか」
 
 納得です。
 
 「でもわかります。私も、シロウに抱かれたら毎回のように失神させられますから」
 「毎回っ!」
 
 驚いたように凛が言う。そして、敏感なのねえ、と感心したように……あるいは羨ましそうにそう呟いた。
 
 「でも、それじゃあ大変でしょう、セイバー」
 「それは……はい。しばらくは腰に痺れがのこって翌日のシロウの稽古が満足に出来なくなりますから……」
 
 あるいはそれが狙いでシロウは私のことをあんなにもいじめるのでしょうか?
 
 「はあ、セイバーも苦労してるのねえ……」
 「……はい」
 
 私たちはお互いに顔を見合わせ大きくため息をついた。
 
 
 
 「でね、このまま士郎のいいようにさせちゃいけないと思うのよ」
「はあ……それは良いのですが」
 
 私は周りを見わたす。
 
 「なぜシロウの部屋に来るのです?」
 
 あまりに質素な部屋。必要なもの意外――いや、それすらあるのか疑わしいシロウの部屋。
 
 「彼を知り、己を知ればなんとやら、って言うでしょう」
 
 む、それは確か孫武という武人が残した言葉であったでしょうか。それとも孫賓?
 いずれにせよ、私の生きていた世界よりさらに千年ほど昔の人物の言葉だ。妙なことに精通しているのですね、凛は。
 
 「その心得はわかりました、が、こうしてシロウの部屋を家捜しすることが、それに通じるものなのでしょうか?」
 「通じるのよ。ほら、セイバー、貴方もちゃんと探して」
 
 そう言った凛は再びがさごそとあたりを徘徊する。むう、この姿は他の人には見せられませんね。
 探して、と簡単に凛に言われたが、なにを探せばいいのか私にはいまいちわからない。
 
 凛曰く。
 年頃の男の子が必ず持っていて、自分の部屋にしっかりと隠されて、家族には絶対見られたくないけど、だからといって決して捨てようとはしない物……だそうだ。
 それはいったいなんなのですかと尋ねても、見つければわかる、としか凛は答えてくれない。これだけはっきりしない凛も珍しい。
 まったく理解不能だが、とはいえ彼女の手伝いをしないわけにはいかない。なにより、シロウのことに関してなら私も大いに興味がある。
 
 そういうわけで、私は背中を丸めて布団のしまわれた押入れの中へともぐりこんだ。これも凛の指令だ。
 押入れの中といってもそれほど窮屈ではない。布団がしまわれているとはいえ、お客が来たとき用の布団はすべて客間に置かれているので、ここに押し込まれているのはシロウのものとかつて私がここで使用していたもののふたつだけだ。
 その中を私は進む。凛が言うにはこういうところが一番怪しいのだそうだ。
 だったら凛が自分で入ればいいのに、と私は思うが、思うだけで口にはしない。私はマスターに忠実なサーヴァントなのだから。
 だから私は、この埃っぽい暗闇の中で小さくため息をつくだけ。
 
 「無いわねえ」
 
 そんな声が背後から聞こえてくる。
 
 「セイバー、そっちはどう?」
 「ここにはなにも……」
 
 無い、と言いかけて、私の手が不思議なものに当たった。なんでしょう。私はそれに手を近づける。
 それは大きな袋のようだった。中にはいろいろ入っているらしく、手が触れるとなにかが崩れるような音がした。
 
 「あ、見つかったの?」
 
 それが聞こえたのか、凛が息せき切って尋ねてくる。
 
 「はあ、これでしょうか」
 
 私はそれをずるずると引っ張り出す。その作業は思っていたよりも簡単だった。外からは絶対に見えない場所に置かれているのに、布団の微妙な配置によって通り道のようなものが出来ているのだ。あらかじめ取り出しやすいように、そうつくられているかのように。
 
 「ふう」
 
 暗闇の中から光の当たる場所へと出る。新鮮な空気を吸い込むようにゆっくりと息を吐いた。
 目の前にはいびつな形の大きな袋。
 
 「間違いないわね」
 
 凛がそう断言した。
 私にはなにがなんだかさっぱりなのだが、凛は確信の表情のままその袋の結び目を解いていく。
 結び目を解き、袋の口を持って、
 「行くわよ、セイバー」
 凛はギルガメッシュとの戦いに赴くかのような声で宣言した。
 
 
 
 「こ、これは……」
 袋の中にうず高く積まれた品々。それらを見て私の思考は停止してしまう。
 
 「お、思ってたよりも……すごいわね……」
 
 それは凛も同様のようだった。
 だが、彼女にとっては予想の範囲内であったらしく、袋の中からそれらの品をいくつか取り出した。その手がわずかに震えているように見えるのは私の目の錯覚……ではなさそうだ。
 
 「り、凛、あの、これは、まさか……」
 
 私の前に広がるのはあまりにも怪しげな品々。その形状、素材、どれもまちまちだが、それらのすべてにひとつの共通点がある。そのどれもこれもに裸の女性が所狭しと写し出されているのだ。
 こっちの雑誌の表紙には、黒い美しい髪をした女性が惜しげもなくその豊満な胸をさらし、その隣りには金髪の女性。それに、この四角い箱はビデオテープというものだろうか。あ、こっちの本には写真ではなく女性の絵が描かれている。妙に瞳が大きくキラキラしていてあまりリアルなものではないのですが……現実にはありえないほどのすごい格好をしています。
 
 「これを調べれば、士郎の性癖が、少しはわかるでしょ?」
 「……なるほど、それは、たしかに……」
 
 あるいはシロウの弱点などを見つけることが出来るかもしれないと、そういうわけですね、凛。わかりました。そういうことならば……
 
 「では、その……見てみましょうか」
 「そう……ね」
 
 私たちはごくりとのどを鳴らし、恐る恐るそれら異界の物体に手を伸ばした。
 
 
 「それじゃあ、まずはこれね」
 凛が一冊の雑誌を手に取る。金髪の女性がこちらを流し目で見やりながら微笑んでいた。
 
 「は、はい」
 
 覚悟を決め、ゆっくりとうなずく。
 凛がページをめくった。いきなり飛び込んでくる『それ』を目にし……
 
 「…………」
 「…………」
 
 私たちは揃って自分の胸に視線を落とした。
 現実にいきなり直面。
 
 「り、凛」
 「……だ、大丈夫、大丈夫よ、セイバー。こういうのはね、大きさよりも形が大事なの。士郎だってそのぐらいはわかってくれてるわよ……きっと……」
 「そ、そういうものなのですか」
 「そうよ……たぶん」
 
 そう言って、凛はさっさとページをめくる。はい、私もそれが賢明だと思う。精神衛生的に。
 でも、そのあとに続くのも似たような衝撃を私たちに与え続け、
 「……」
 「……」
 私たちは少しずつ暗闇に落ち始めていった。
 
 
 「……あっ」
 
 少し雰囲気が変わる。
 女性だけしか出てこなかったその本に、突然男性の姿が。そして、そこには……
 
 「こ、これは……」
 
 信じられない光景。
 裸の女性が、同じく裸の男性にひざまずき、その……男性自身ともいうべき物をその口に……
 
 「なんと、はしたないことを……」
 「…………」
 「こんなことをされて、男性は気持ち良いのでしょうか……」
 「…………」
 「あ、でも、そういえば……いや、しかし……」
 「…………」
 「……凛?」
 「…………」
 
 凛は顔を真っ赤にして黙っていた。
 
 「……え? あ、なに、セイバー?」
 
 あわてたようにしてさっと顔を上げる。
 む、なにかおかしいですね。
 
 「凛……貴方、まさかとは思いますが……」
 「え? な、なによ?」
 「もしや……凛もシロウにこのようなことをしたことが……」
 
 私の問いかけに凛がさらに顔を赤く染めた。
 
 「ば、馬鹿なこと言わないでよっ! そんなことっ、するはずないじゃない! ええ、無いわ! ほんとに、ほんとによ! 一度だってそんなこと、したことなんて無いわよ、ええ……」
 
 あからさまにうろたえている凛。なぜでしょう、すごく悔しい気持ちが……
 
 「こ、この本はもういいわ」
 
 ぽいっと捨てて再び別のものに手を伸ばす。
 とにかく凛を深く追求したい気もするが……そうですね、今はやめておきましょう。ただ、こういったことをもっと勉強しておこうと私は心の奥底でひそかに誓った。
 
 「ビデオは……やめておいたほうがいいわね……」
 「そうですね……」
 
 居間のほうに行かねばならないし、なにより危険すぎる。刺激の強いものはなるべく避けたほうが賢明だ。今更かもしれないが。
 凛が次に手にしたものはさっきの雑誌よりも少し厚めの本。背表紙に『成年コミック』と黄色いマークで書かれている。
 
 「……じゃあ、次はこれ」
 「はい……」
 
 もうある程度の免疫は出来た。なにが出てきても驚かないだろう。
 だが……
 
 「…………」
 「…………」
 
 その本は、とんでもなくハードだった。
 
 「凛……」
 
 自分の声がやけにうつろに聞こえる。
 その……男性と女性が絡み合っているのはわかる。そこまではわかる。だけど、すこし、なにかがずれているような気が……
 
 「これは……いったいどこに入っているのでしょうか?」
 「そんなこと言われたって、わ、わからないわよ……」
 
 でも小声で、『ほんとに入るのかしら?』とか、『最近の漫画は進んでるのね』とか、そんなことをぶつぶつ言っていた。
 なんとなくわかるようで、あまりわかりたくない不思議な感覚。男性をシロウに、責められている女性を自分に置き換えてみる。
 
 「……っ!!」
 
 無理です! 絶対に無理です! そんなところには入りません!!
 赤くなった顔をぶんぶんと横に振る。見れば凛のほうも同じような顔で同じようなことをやっていた。
 
 「り、凛。先を……先を見てみましょう」
 「ええ、そ、そうね……」
 
 想像に耐えられずにそう言ったが、その先にはさらにすさまじいものが待ち構えていた。
 
 「「うわっ……」」
 
 同時にそんな声を上げてしまう。
 今度のシーンはさらに過激。一人の女性を二人の男性が責めていた。男性は一人が下から、もう一人が上からのしかかり、女性は二人の男性のあいだにはさまれていた。それがなんとなく……
 
 「サンドイッチみたいですね」
 
 そんな食べ物を連想してしまう。
 
 「そ、そういうことを言わないでよセイバー」
 
 なぜか凛に怒られた。
 
 「しかし、これは参考にはなりませんね」
「そうね」
 
 私がそう言うと凛も同様にうなずいた。
 私も凛も、シロウ以外の男性に身体を許すなどありえない。二人がかりで責められることなど、考えただけで身の毛がよだつ。
 
 「なかなか、シロウの弱点になるようなものなどありませんね」
 「そうね。……はあ、一度ぐらい、ベッドの上でもあいつをぎゃふんと言わせてやりたいんだけどなあ」
 
 ため息混じりに凛が言った。
 いえ、私は別にそんなこと考えていませんが。シロウになら少しぐらい乱暴にされても、その、かまいませんし。まあでも、シロウを喜ばせてあげたいとは思いますし、もう少し手加減してくれると嬉しいと思いますが。
 そんな私の思いはよそに、に凛はぱらぱらと本のページをめくっている。そして、その視線があるひとつのページで止まった。私も気になってそれを覗き込む。
 
 「……あっ」
 
 そこには三人の人物が描かれていた。ただ、先ほどと違うのは男性と女性の比率。二人の女性が一人の男性を責めさいなんでいた。男性の顔は恍惚とした面持ちで、とっても気持ちよさそうで嬉しそう。シロウにもこういう顔をしてもらいたい。
 
 「「これよ(です)!!」」
 
 それぞれ考えていることは微妙に違うものの、私たちの声は見事なほど奇麗にハモッた。
 
 
 
 
 
 
 
  その夜、衛宮士郎の部屋からいくつもの嬌声が聞こえてくる。
 
 「はあ……はあ……ん、ん」
 
 「んっ、あ、あ、……シロウ」
 
 「ひあっ! んぅっ……やぁ、士郎、つ、よすぎる……」
 
 「あっ、あぅっ! シ、ロウ、だ、だめです……も、う」
 
 「ひあぁっ……!!」
 
 「くっぅぅんっ……!!」
 
 
 ―――遠坂凛&セイバー
 VS士郎(シロウ)―――
 
 ハンディキャップマッチ
 
 時間無制限<十本(ぐらい)>勝負
 
 遠坂凛&セイバー組
 やっぱり完敗
 
 
 
 「「ふあぁぁあぁっっっ…………!!!」」
 
 
 
 |Next あとがき 連載中の話がシリアスなので、突然書きたくなったバカ話。
普段はヘタレだけど夜は無敵。あるいみ男の理想?
 まあ、ギャップを楽しんでいるだけだけど。
 あ、それと、あえて士郎君の台詞なしで作ってみました。
 これはこれでやりやすいかな、と、思ってみたり。
 6月7日、微妙に修正。 
Copyright (C) Bluex3, All Rights Reserved.
 |