坪尻
土讃本線 昭和25年開業(昭和4年信号場として開設):現存
四国のスイッチバック2つは、すべて土讃本線上にある。
どちらも、山越えの信号場をルーツに持つ駅で、
スイッチバックという特殊な形態とともに、近代化の恩恵(?)を
受けずに古い駅舎が残っていることもあり、
なかなかの人気駅である。
そのうちのひとつ、坪尻は、讃岐山脈を越えるために作られた
猪鼻トンネル(3845m:開通時は全国2位の長大トンネル)
近くの山中にひっそりと佇んでいる。
当初は、本線と発着・引き上げ線の分岐点に、本格的な
シザースクロスポイントが使用されていたが、近年の“改良”に伴って、
片分岐機×2個に変更されてしまったのは残念である。
さらに、発着線の向かいを走る本線にも、セメントによる護岸工事的な処理がされて、
やや違和感を感じるが、いずれ周囲にも馴染むようになるであろう。
土砂崩れなどの被害が多発する、土讃線であるから、逆にもっと仰々しい
改良工事が行われたって不思議ではない(最悪は、ルート変更、スイッチバック廃止!)
。
その意味では、信号場時代から、ほとんど変わらぬ姿を見せてくれている
四国の2スイッチバックは、ある種の奇跡的な存在だろう。
駅舎含めて、いつまでも、その姿でいて欲しいものである。
*上段写真3枚は、香川県在住の大塚昭男(平成12年3月20日撮影)氏より
提供いただいたもの。氏は、自らを称して
「特に鉄道の愛好者というわけでもないのですが、
なんとなく列車や鉄路を眺めるのが好きな、中年おじさんです」
とおっしゃるが、当駅に関しても、駅周囲を含めた、非常に丁寧なルポをされており、
「鉄道愛好家」である筆者も、1駅1駅現地に出向いて、愛情を持った
取材をする必要性を痛感する次第である。
*中段写真4枚は、神奈川県在住の山口健三郎氏より提供いただいたもの。
撮影は、平成3年8月16日、特急運用には、昭和47年の「南風」「しおかぜ」
登場以来の老兵・キハ181系と、
JR四国の新鋭・2000系が混在していた時期である。
本線脇の補強もまだ石積みの状態で、
本線とスイッチバック線の分岐部分には、
シザースクロスポイントが健在なのが分かっていただけるであろう。
そのために、2000系も自慢の振子機構が使えず
(当時の制限時速は55kmとのことである)、
宝の持ち腐れであったと推測される。
また、これらの写真から、新改と同様に、本線上に通票授受のための短いホームがあったことや、
そこに渡るための、構内踏みきりの存在も見て取ることが出来る。
*下段5枚は、兵庫県の協力者の方より寄せられた、昭和54年頃撮影のもの。
国鉄色のキハ181系「南風」、ヘッドマーク付きのキハ58系急行「あしずり」、
そしてDF50牽引の旧型客車
(最下段・写真左から、箸蔵方面から坪尻駅進入〜引き上げ線へ後退〜
讃岐財田方面へと出発:国道32号線より俯瞰撮影)
……筆者にとっては、このあたりの光景が、四国の鉄道風景としては最も
シックリくるものである。
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