わたしも街道をゆく/1993年/北海道へ
わたしも街道をゆく 1993年 北海道へ


1993年7月12日 ウトロから羅臼へ 本日の走行距離82Km

どんより知床半島

 朝、キャンプ場はに囲まれている。すぐ隣の墓地も見えないくらいだ。ということは昨日予約した、ネイチャーウオッチングボートは出るんだろうか。不安ではあるがともかく朝食を食べてから集合場所でもあるボンズホームに行ってみると…欠航。がっくりである。けど天気のことではしかたがない。この天気で出航して何も見えなくて帰ってくるよりはいいもんね。

 キャンプ場に戻り、テントの中でしばしぐったり、ごろごろする。前にここでキャンプをした時もこんな風にしていたような気がする。まあ、あの時はその日に行く予定の方面に台風が来ていて動けなかったのだが。

 でもいつまでもこうしていてもしかたがない。カムイワッカ湯の滝に行こう。途中からずっとダートだというので、私のバイクでタンデムで行く(ちなみに当然私は後ろだ)。私がダートを走ると、非常に時間がかかる上に、何度コケるかわからないからである。
 R334から道道に入りしばらくすると、道はダートになる。湯の滝まで10キロ以上、それが続くのである。それほどきびしいダートではないが、自分で乗って来なくてよかったと思う。

 それにしてもこの道は、キタキツネ街道とでも名付けたい程キタキツネが多い。例によって道に出てきては観光客に餌をねだっている。驚くことに、車の両側、つまり人に近いところにまわっておねだりするのだ。正面にいてももらえないのがわかっているのだろうか。腹の立つヤツだ。
 生態観察のためなのだろうが、どのキツネも耳に鑑札のようなものを付けられている、発信機なのだろう。中には両耳そして首輪と、3つも付けているのもいる。重そうだし痛々しい。夏毛で貧弱でもあり余計にそう感じる。

キタキツネキタキツネ親子

 でもかわいいキタキツネも見たのだ。親子連れである。ふかふかの毛まんまるいお目々の子どもはあっちへうろうろこっちへうろうろ。おいでよと、手を叩くとその音にこっちに寄ってくる。その様子を親(母親かな)はじっと座って、それこそキツネ目をして見るともなく見ているといった感じ。多分私たちが子供に手を出したりさえしなければ、かまわないのだろう。親も冬毛のようにふわふわときれいな毛で、絵になる親子のキツネだった。

なんで温泉入るのに登山

 湯の滝の入り口には、車もバイクもたくさん停まっている。出店まで出ていてびっくりである。もっとひっそりしたところだと思っていたのに。
 さてSはジーパンを脱いで(下に履いていた)短パンに、私もジャージになり(さすがにジーパンはトイレの中で脱いだが)、いざ湯の滝へ。
滝のぼり  カムイワッカ湯の滝というのはつまり、お湯の滝である。流れ落ちる滝は川となり、海に注いでいるのだ。滝壷まで、川を遡ることになる。ずっと登り坂で、時折手をつかなければ登れないようなハードな岩場や、熱湯が流れている場所もある。足を滑らせ、お湯につかっちゃった人もいるので、気をつけなくてはいけない。

 途中で滝壷があらわれるが、そこを通り過ぎてもうひと頑張りすると、そこが終点だ。若者と中年の間くらいの男性が2人と、オバチャンがひとり、すでに入浴中だ。男性はどうやらいわゆる、スッポンポン、らしい。私を見て、ヤバイ、というような顔をした。でオバチャンは? 肩がお湯から出ているけど、水着の紐は見えない。肩紐のない水着を着ているのだろうか。まさかスッポンポンってことはないよね…。と、オバチャンが、さばっとお湯から出た。私たちの目に飛び込んできたのは豊満なオッパイ、そして、え? 下、履いてないの?…肌色の下着をつけていたので一瞬、なにも履いていないように見え、驚いてしまった。でも肌色ってのは透けるのだ、Sは見てしまったらしい。
 いやぁそれにしてもオバチャン、大胆である。まだまだ私には修行が足りない。あれは出来ないな。

 男性2人もそろそろ出たいのではないかとなるべく私は違う方を見ているようにしてあげる。でも結局、お尻は見てしまったのだが。
 そしてSもタオル1本のスッポンポンになり、湯につかる。オトコ(とオバチャン)はいいよなあ。前にSがここに来た時の写真を見せてもらったことがあるが、10人くらいの男が全員オールヌードで、写ってはいけないもモノまで写ってた。楽しそう…。
 そこへ水着を着た10代くらいの女の子が2人来て、湯に入っていった。あ〜あ、オヤジ…スッポンポンでギャルと一緒のお風呂入って、嬉しそうだねぇ。だがさすがにSも圧倒され、どんどん端の方に寄ってきてしまった。女の子達がいなくなってから湯から上がったが、大自然の下で生まれたままの姿でいるというのは、さぞかし気持ちのいいものだろうなあ。霧さえ出ていなければ、ここからも海が見えるのだもの。
 私は残念ながらジャージの裾をまくり上げて足だけ入る。今度はちゃんと水着着て入ろうっと。
 2度ほど足を滑らせながらもバイクを停めている場所まで降りてくる。ここには駐車場というようなものはなく、路上駐車である。狭い道なのに車はどんどん来る上に観光バスまで来てしまい大混雑だ。まあ駐車場が出来てしまったら、今のよさはなくなってしまうのだろうが。

 帰り道にもキタキツネはたくさんいる。さっき見た親子もまたいたし、別の親子キツネもいた。こちらは子供の目つきも悪く、かわいくなかった。結局往復の約20kmで15匹以上のキツネを見たことになる。

 国道に入るとすぐに知床自然センターがあり、自然教室のようなものと、お土産コーナー、レストランなどが入っている。お土産コーナーが充実しているのであれこれ買い込んでしまう。やまね工房のぬいぐるみも並んでいた。「しれとこで夢を買いませんか!」というパンフレットが置いてあるのでもらって来た。知床国立公園の中の土地を100平方メートル8、000円で買って森を保全していくのだという。う〜ん、8、000円なら買っちゃおうかな。

知床横断、羅臼へ

 キャンプ場に戻り荷物をまとめて出発する。いやな雲行きだなあ。
 R334知床横断道路は、ところどころ岩肌には雪が残っている。なにしろ夜には(夕方6時から朝8時まで)通行止めになる道だ。ここの夏はまだ先のようだ。羅臼岳の山頂には厚い雲がかかっている。
 知床峠に着いた。修学旅行と団体ツアーのバスもちょうど今着いたところ。峠は人だらけだ。修学旅行は男子校、男子トイレであんなに並んだのは初めてだと言いながらSがトイレから戻ってきたが、その間にトウキビとジャガバターを買うのに出店に並んでいた私も、修学旅行生のおかげでまだ、買えないでいた。出発時間が来ると、あっという間に団体さんたちはいなくなり、やっと買い物が出来る。が、ジャガバター屋のアンチャン、熱々にしてくれるのは嬉しいいのだがすごく時間がかかるのだ。Sがトウキビを食べ終わってもまだ出来ない。やっと食べるとあんなに一所懸命暖めてくれたのにあまり熱くなく、なんだか悲しかった

 ここからは羅臼町になる。幾つものカーブを降りながら、はるか海の向こうの国後島が見える筈だったのだが、霧はどんどんひどくなり国後島どころかすぐ下の道も見えない。こちら側も雪がそこここに残っている。
 羅臼の町に入る手前、国道から高台に少し登ったところが国設野営場、今日のキャンプ地だ。駐車場、水道ときちんと整備してあるのだがテントを張る場所まで決まっている。1〜2張り分毎に区切られているのだ。もうすでにたくさんのテントが張られているが、トイレから近からず遠からず、といった一角を選ぶ。隣のテントの人は無線が趣味らしく、ずうっと音が聞こえている。人にはいろいろな趣味があるのであまり文句をいってはいけないが、けっこううるさい。「うるさいんですけど」などとは言わなかったが。

 街まで降り、コインランドリーで洗濯物を洗っている間に買い出しをする。今日のテーマは「羅臼でウニ」である。道行く人に魚屋さんの場所を聞き、2軒のお店を教わる。魚屋ではなくてスーパーのようなところだ。こちらの方が安い、と言われた1軒目ではウニは売り切れ、2軒目の杉本商店で、ウニと巡り会う。
 買ったのはウニ、イカ、オヒョウに朝食用のサケである。オヒョウというと蒲鉾などに加工されるといった印象しかないのだが、なんと刺身。おいしいのだろうか。
 スーパーのお刺身についているような小さい袋に入っているワサビをもらおうとすると、ないと言い、奥からチューブ入りのワサビを「まだ残ってるから使いな」と持ってきてくれたのだ。保冷用に氷ももらい、その上半端な金額はおまけしてくれた。ありがとうございます! ちなみにウニは、1皿2、000円だった。あんまり安くはないか。

 その後Sはキャンプ場の前の羅臼川に釣りをしに戻り、私は乾燥機が回っている間、街中をうろうろする。電話ボックスに入ると手帳が置き忘れられていた。どうしようか、そうだすぐ近くの雑貨屋に預けて電話ボックスには「預けてあります」とメモを残しておこう、と雑貨屋に入るが誰も出てこない。ま、いいか、こういう事は地元の皆さんにお任せしようと、また電話ボックスの中に戻す。よかったのか悪かったのかよくわからないが。

 羅臼の街にはどんよりとしたこの天気のせいなのか、物悲しさを感じてしまった。

 キャンプ場から国道に降りて道を渡ると羅臼川、橋を渡るとそこは熊の湯温泉だ。ちょっとボロっちい小屋が脱衣室、その横が露天の岩風呂になっている。もちろん男女別だ。男湯の方は衝立もなにもない、まったくの露天だそうだがこちらは一応簡単な壁は出来ている。羅臼川のせせらぎも聞こえ、極楽極楽。

 もっと極楽だったのは、キャンプ場に戻るとすでに刺身も出来上がり、準備万端整っていたこと。先に温泉からでたSがセッティングしていたのだ、ご苦労ご苦労。
 ウニは勿論、イカもおいしい。オヒョウは歯ごたえがあってこれまたなかなかのものだ。ウニはご飯に乗せてウニ丼にもする。温泉入ってウニ食べて、ビールもうまいし、もう、最高っす夕ご飯
 どうも私はキャンプだと眠くなるのが早い。まだ10時前だったと思うが、先に寝るね…と寝てしまう。Sは隣のテントの人たち(無線の人ではない)と一緒にしばらく飲んでいたようだった。この頃、奥尻島沖でひどい地震が起き、たくさんの方が津波に飲み込まれていたことなど、まるで知らずに。