わたしも街道をゆく/1993年/北海道へ
わたしも街道をゆく 1993年 北海道へ


1993年7月6日 札幌から羽幌へ 本日の走行距離389Km

北へ向かう(←芸のない見出し)

 どうやら今日もお天気がいいようだ。
 チェックアウトし、大きなツーリングバッグを肩に掛け、デイパックタンクバッグヘルメットを手にして狭いエスカレーターを下りていると、お掃除をしていたオバチャンに「すごいねぇ」と言われてしまった。すごいでしょ

 函館本線の線路を越えて北へ、R231を走る。
 札幌の街は整然と区画され、交差点の町名表示を見上げると、北24西2などとなっていてわかりやすい。だが、味気なくてあまりこういう町名は好きではない。その町の持つ背景や、いろんなにおいが伝わってくるような名前が私は好きなのだ。湊町は魚のにおいだし、箪笥町は箪笥職人が住んでいたのだ。
 大都市以外ではアイヌ語に由来した地名が多い。例えば「別」は川のこと。この名前はどういう意味なんだろうなどと考えてみるのも楽しいが、単純な付け方ゆえにあちこちで同じ地名を見かける。礼文島にも知床があったりする。

 札幌から小樽へのR5は市街地で、走っていてもちっとも面白くない。特に小樽に入るとぎっしりと込み合い、暑さが倍増される。あとでまたこの道を通らなくてはいけないのかと思うと嫌になってきた。
 余市を過ぎるとR229は右手に海。風もひんやりと涼しくなった。切り立った断崖や変わった形の岩が点々と海の中に並んでいる。このあたりはソーラン節発祥の地といわれているそうだ。ヘルメットの中でソーラン節を口ずさみ、青い海を眺めながら走る。気持ちがいいなぁ。

北海道は夏祭り

お祭り  美国という小さな町に入ると、おや、なにかの行列が並んでいる。法被を着た子供達、裃を着けた町の役員といった雰囲気のオジサン達、神主さん。今日はこの町の美国神社のお祭りのようだ。行列の中央あたりには赤い袴に緋色の着物を着た天狗さんがいる。歯が1枚の下駄を履いているが下駄の前部は地面に着けて休憩中だ。丁度出発の時間が来たようだ。天狗さんが1枚歯の下駄で立ち上がった。

 やはり北海道は今が一番いい時期なのだろう。やっと来た夏の青い空の下で神社の幟がはためいていた。

わら  道は内陸に入る。今度は左手に、山頂近くに雪を残す積丹岳が見えて来た。麓には赤い屋根のサイロに牛たち。道端に停まってぼーっと見ていると、時折バイクがピースサインを残して通り過ぎていく。

 しばらくするとまた、眼の前に海。いくつかのトンネルを越える度に海岸線がいろいろな表情に変化しながら眼の前に延びている。間もなく、神威岬への入り口へ。お土産物屋さんの奥の砂利敷き駐車場へバイクを停める。地図によると神威岬へは少し歩かなくてはいけないはずだ。どこが入り口なのだろうと見回すと、簡単な地図が。…え?徒歩40分? どうしようか。
 ジュースを飲みながら行こうか止めようか考える。写真によればかなりいいところのようだ。40分、歩いて行こうかな。いや、でもその分先に進んだ方がいいだろうか。平坦な道でもなさそうだし、やぁめた。
 神威岬。次に北海道に来る楽しみが一つ増えた。ということにしておこう。

 半島一周道路がまだついていない積丹半島。神威岬(の入り口)を背に同じ道を戻る。

 さっき通った時にはまだ出ていなかったが、美国ではお祭りの露店が並んでいた。ちょうど時間も12時、焼きそば買って、神社の境内で食べようかな…と露店を見ながら歩くが、焼きそばのようなしっかりした食べ物はないようだ。氷とかあんずあめ、射的や型抜きの店ばかりである。まぁいいか、と露店を後にする。

 余市を経て小樽へ。市街地に入ったとたんにもわっとした熱い空気だ。小樽といえば北一ガラスなのだが、寄ろうかどうしようか。行けば絶対、必要のないものまで買ってしまうに違いない。それは前回でわかっていることなのだ。それに今回は前回と違ってあまりお小遣いを持っていない。そうだ小樽には今度、普通の旅行で来よう。それも季節は冬。運河の倉庫街も冬の方が絶対いいに決まっている。今は街中になんていたくはない。
 という訳で小樽の街を通り抜ける。お腹もだいぶ空いたのでお店を探しながら走るが、こういう時に限ってないものなのだ。北海道に来てまでモスバーガーというのも芸のない話しだが、まぁいいか。
 本当は街の食堂が好きだ。レストラン、ではない。ラーメンやカレー、定食ものに丼ものの並ぶ食堂で、2ケ月くらい前の週刊誌でも読みながら料理が出来るのを待っているのが好きなのだ。混んでいない時間だったらもっといい。店のオジチャンオバチャンと、なじみのお客さんとのなんでもない会話は、もう最高のBGMだ。
 東京と同じ味のモスバーガーを食べ、今日の宿を予約することにする。距離と時間を考えると留萌あたりまでは行けそうだ。留萌まで行けるのなら羽幌まで行っちゃおうか。3年前羽幌の吉里吉里という民宿に泊まった。ライダーズ名鑑というのをマスターが作っていて、バイクで来た客の写真を撮ってくれるのだ。3年前の自分に会うってのもいいかもしれない。今日のゴールは羽幌に決定。

 R331からR231、ゆるいカーブを曲がると急勾配の道の前方、眼下に日本海が広がっている。穏やかな海、海に迫った丘はまぶしいばかりの緑。思わずアクセルを握る手が緩んでいく。シールドを開けて潮のにおいを吸い込む。ああ、シアワセ。

3年前の自分に再会してみる

 昼間の太陽が夕方の太陽に変わっていく頃、羽幌の街へ入る。宿に到着。
 千葉から来た女の子が同部屋、他には大阪の男2人組と、若いご夫婦が1組。みんなバイクで来ている。
 近くに夕日のよく見える場所があるけど行く? というので夕食の途中だったがマスターの奥さんの車で連れていってもらう。草をかき分け、砂浜に面した丘の上、空は一面薄い茜色。だが水平線には雲がかかり、沈む夕日を見る事は出来なかった。残念。
 帰りは徒歩である。一緒に行った大阪の男の子たちに仕事を聞くと、郵便局員だという。私は大爆笑。なぜかというと、新冠YHで一緒だったHさんが、この時期に北海道に来ている人は、プータローと郵便局員しかいない、と言っていたのを思い出したからである。なんでも郵便局員の人と会い、その人がそう言っていたのだという。うそだぁ、と私はその時笑っていたのだが、本物が眼の前に出現してしまい、失礼ながら、わぁほんとだ、と笑ってしまったのだった。あながち冗談でもなく郵便局員さんは7月はけっこう休みが取り易いらしい。8月はお盆で休みたい人が集中するので7月に休んでくれるに越したことはない、ということなのだそうだ。ひとつ勉強になった。

 さて宿に戻って夕食の続きをし、お風呂に入って缶ビール買ってみんなのいる場所(食堂というか喫茶室というか)に戻ってくると、みんなはコーヒーを飲んでいる。ま、ここはひとまず私もおとなしく缶ビールは1本にとどめ(ちなみに350MLである)、コーヒーをいただく事にする。
 それからその場所で11時半まで、部屋に戻ってから同室のSさんとは2時近くまで、話しをしていたのであった。いやぁ楽しい夜だった。
 そうそう、3年前の写真もちゃんと見た。…なんだか今とちっとも変わっていない。なんて成長のないヤツなんだろうか。