わたしも街道をゆく/1993年/北海道へ
わたしも街道をゆく 1993年 北海道へ


1993年7月5日 日高から札幌へ 本日の走行距離171Km

川を渡る馬たち

 今朝も早起き、4時40分起床である。ユースの玄関でご夫婦と合流、Hさんと一緒に車に乗せてもらって馬の「川渡り」を見に行くのである。新冠にはその左右にたくさんの競争馬の牧場が並び、サラブレッド銀座と呼ばれている道路がある。それらの牧場のひとつ、八木牧場の馬たちは新冠川を渡った放牧場に早朝、川を渡って移動し、夕方になると戻ってくるのだ。馬というのは元来、水が嫌いなのでこれはとても珍しいものだという。

 駐車場に車を停め、柵の中の馬たちに挨拶しながら新冠川の土手へ。
 うっすらと霧が立ちこめている。対岸には昨日も来ていたという老夫婦の姿がぼんやりと見え、その向こうには既に渡ったのか、馬たちも見えている。人が追って渡らせるのではなく、馬が自主的に渡る。人はただ決まった時間に柵を開けるだけである。あとは馬の気分次第、渡る時間が決まっている訳ではない。対岸の馬たちがどうも気になる。もう終っちゃったのかも…。
 しばらくすると、牧場の方から馬たちが姿を表した。何頭くらいいるのだろう、草を食べたりフンをしたりしながら、ゆっくりゆっくり進んで来る。のんびりしている中から1匹が土手の坂を下り、川に足を踏み入れる。彼(か彼女かは知らないが)がこの集団のリーダー、リーダーが入ると皆ゆっくりと川に向かって進み始める。5時半くらいだったろうか。川に入っても水を飲んでみたりと、ゆっくりペースである。川は案外深い。馬の足がほとんど見えなくなるほどだ。

川渡り1 川渡り2
 10頭ほどの第1陣が向こう岸に渡り終わる頃、第2陣も動き始める。こちらは8頭くらい。川に入ってからなかなか前進しない。先頭の馬が後ろを振り返り、何かを気にしている様子。自分の子供が来るのを待っているのだ。
 そして子馬を3頭含む第2陣も、霧の彼方から射す薄い朝の光の中を川の向こうに消えていった。
 霧のおかげで神秘的にさえ見えた川渡りだったが、観光としてやっているのではないので、駐車場の注意書きをよく読んで見学しなくてはいけないのだ。

 YHに戻り、朝食まで寝よう。

ザ・サラブレッド銀座

銀座
 食事の後、荷物をYHに置かせてもらい、Hさんとサラブレッド銀座に行く。ただし彼女は自転車、私はバイクである。ミーハーな私の一番のお目当ては、オグリキャップ。彼は優駿スタリオン・ステーションにいる。お土産屋さんに喫茶室、オグリの柵の前には見物用の台…と、整えられているのには驚いてしまう。お土産屋の中も当然オグリグッズばかり。引退してからも儲けてるなぁ…と思いながらもキーホルダー(ちょうど使ってたのが壊れたの)とライター(煙草吸わないんだけどなんとなく)を買ってしまう。キャラクターデザインされたオグリ、ムーミンみたいでかわいいのだ。
 もなかアイスを食べながら、本物のオグリを見る。
オグリ 遠くにいるのでよく見えないが、霜降りグレーだし、説明板にそう書いてあるからそうなのだろう。Hさんもだが、私も競馬はやらないのでオグリに泣かされた事も笑った事もない、まぁ最後の競馬には感動したけど。だが見物している他の人々、特にひとりで見ている数人の女性たちはすごい。オグリへ向ける熱い視線がこちらにも感じられてしまうほど。カメラも向けず、じっと見つめている…馬に恋してしまったのかしら。

 Hさんとはここでお別れ、私はオラシオンの丘なる場所に行ってみることにする。サラブレッド銀座と並行して走っている2本ほど東側の道、とでも言えばよいのだろうか、うねうねと続く丘の間を走る。…で、どこがオラシオンの丘だって? そこここの丘に赤い屋根の牧場があり、馬たちがのんびり草を食む。のんびりした、いい景色。でもオラシオンの丘、ねぇ。悲しいかな感受性の乏しい私にはそんな名前を付ける程には思えなかったのである。期待が外れるのはけっこう悲しい。

 国道に戻る途中で道がわからなくなったので、走ってきた軽トラックの前に立ちはだかって止め、道を尋ねる。親切に教えてもらえてよかった。街に戻り駅のそばの郵便局で資金調達、YHへ戻るとHさんがいた。それじゃまたねぇとYHを出発したのは11時過ぎ。(私がすっかり出不精になってしまった今でもHさんは国内外いろいろ旅する女性。そのたび絵はがきをくれる。うれしいよね)

 昨日霧で見えずに悲しい思いをしたR235だったけれど、サラブレッド銀座を見てしまうとまぁわざわざバイクを停めてまで見なくてもいいやとなってしまい、ちらちらと横目で見つつ、走り抜ける。今日の目的地は札幌、私には初めての街だ。ここから100kmもないし宿も決めてあるので気が楽。

こんなところでシマリス公園

 苫小牧からR36を北上する。ウトナイ湖を過ぎてすぐにこんな看板が眼に入った。「とまこまいシマリス公園」シマリスと聞いて放っておく訳にはいかない。うちでシマリスを飼っているのだ。ペンキの剥げ掛けた看板に沿って右折してすぐである。だが…。
 駐車場の片隅にジンギスカン屋がある。案の定お客は誰も入っていない。公園は工事中のようでトラックが停まり資材が散乱している。池らしきものもあるが水が入っていない。こういう「ハズしてしまった」所って観光地にはありがちだ。でも私はシマリスがいればいいのだ。見回すと林の中に大きなケージがあり、そこにシマリスが5〜6匹入っている。

リス1 リス2
リス3 リス4
リス5 ケージにぴったりとくっついてなにやらぶつぶつ言っているっていうのも端から見るとちょっと変かもしれない。人懐っこいヤツらで、金網をよじ登って寄ってくる。お腹をつんつんつついても平気。向こう側のを撮ろうとカメラを金網に付けていると、その金網をよじ登ってきたヤツが突然どアップでファインダーに表れる。いつまでいても飽きない…私だけだろうなあ。
(なおシマリスさんたちの写真は、もうちょっとなんとか加工して、どうぶつ部屋に載せる予定である)

 千歳、恵庭と過ぎ、札幌に入る。さすが北海道一の大都市、大きなビルが立ち並び、きれいなおねえさんたちがたくさん歩いている。こんなに暑いのに冬用のジャケット汚いバイク、排気ガス付いたキッタナイ顔にぼさぼさの三つ編み…どう考えても私は今、札幌で一番キタナイ女である。だがそんなことにめげていたらツーリングは出来ないのだ。駅前のワシントンホテルへチェックイン。
 部屋に入るとベッドが大きい。あれ、私はシングルで取ったはず。これはどう見てもセミダブル…どうりで料金が高いと思った。ま、いいか。

ふたりでオフラインミーティング

 まだ3時前だ。実は今日は札幌で友人と会う約束をしている。友人といっても会うのは今日が始めてだ。そうパソコン通信で知り合った女性なのである。夕方ここに電話をしてもらう事になっているのでそれまでゆっくりしようっと。
 シャワーを浴びて汗を流せばその後は勿論、ビール。ふぅ、おいしい。飲みながら絵はがきを書いたりしていたら眠くなってきた。大きなベッドに横になって、ちょっぴりおやすみなさい…

 7時頃、電話が鳴る。ホテルの前に停めたバイクの所で待っていてもらう。初対面、ちょっぴりドキドキだ。でも不思議なものでしゃべりだすともう、前からよく知っている人のような気がしてしまう。タクシーに乗って、いざ念願のサッポロビール園へ。ちなみに彼女は、飲めないそうだ。
 煉瓦造りの大きな建物。ずいぶんたくさん人がいるなぁ。え? 待つの? 15分くらいだったろうか、中庭で待ち、席へ案内される。彼女は小ジョッキ、私は中ジョッキで生ビール、いくつかのおつまみを注文する。来たビールを見てびっくりした、これで中? 大ジョッキにしか見えない。だがおしゃべりしながら飲み干し、おかわり(今度は小である)までしてしまった。その間彼女は小ジョッキを数センチ…いやはや申し訳ない。

期待はずれのラーメン横町

 さてとこの際だからラーメン横町にも行きたくなってきた。彼女も行った事がないというのでタクシーですすきのへ。北海道にこの時間にこんなに明るい場所があるなんて失礼ながら信じられない。まるで歌舞伎町に来たみたいだ。すご〜い、とネオンきらめくビルを見上げておのぼりさん状態
 で、ラーメン横町っていうのはどこ? ディスコの券を配っていたおにいちゃんに教えてもらう。当たり前だがTVで見るのと同じラーメン横町がすぐそこにあった。たくさんのお店の中からどこに入ろうかと1往復、行列もできて一番混んでいる、入り口近くの店にした。
 12人やっと座れる狭いカウンター席のひとつに座り、中で働いている人たちを観察する。狭い中に男4人女1人、この若い女の子が一番の働き者のようだ。出来たラーメンをカウンター越しに客に渡す時には「熱いですよぉ」とニコニコ顔で渡してくれる。そして彼女の仕事である麺をゆでる大きな釜に視線が戻ると、きりりと厳しい表情になる。ゆで加減を確認している時など、同性ながら、かっこいい、と思ってしまう。
 だが肝心のラーメンは、と言うと、こってりしすぎててあまりおいしくない。まぁ名物なんてこんなものなのだろう。ちなみに醤油ラーメン、700円。

 すすきの駅から地下鉄に乗る。さんざん付き合ってもらった彼女は一つ目の大通り駅で下り、私は札幌まで。飲んで食べて、楽しい札幌の夜だったのだ。