朝の魚市場
朝、お散歩でもしてこようかなあと宿を出たところで、宿のご主人にばったり。今なら漁協で魚の水揚げをしていると聞き、行ってみる。
船底から太いホースで魚を吸い上げている。なにやら機械を通って出て来た魚たちをみんなで仕分けする。箱に詰めて氷を乗せて、それをトラックの荷台に積むのはオバサンたちだ。オジサンもオバサンも、働く姿はきびきびと凛々しい。カメラを持ってうろちょろしている私は、完全に違和感がある。じゃまですか?
足元を見ると、はじき出されちゃった小さな魚たちが踏んづけられてしまってる。なんだかかわいそうな気もするなあ。
近所の民宿の人たちなんだろうか、一般家庭の人もいるのか、バケツを持って魚をもらいにきている。ある台の上に広げられた魚たちは、出荷しないものなのだろうか。どんどん自分のバケツに入れている。お金を払ってる様子はない。皆の恵み、ということなのかしら。
面白くてしばらく見とれている。魚臭いのは全然気にならない。いいなあ、港って。
舟屋で朝ご飯
朝食は、まさしく舟屋にて。船をしまう場所の半分にテーブルが置いてあるのだ。手を伸ばせばそこが海。魚が泳いでるのも見える。こんなシアワセな朝ご飯なんて、嬉しくなっちゃうなあ。
今度は寒ブリの季節に来ようと思いつつ出発。伊根湾一周遊覧船に乗ろうとしたら、お客は今の所私だけ。一人じゃ出せないという。次のお客が来るのをしばらく待っていたがいつ来るかもわからない。今度の楽しみに取っておくことにして、今日はあきらめた。
天の橋立を横目で見て、R178を行く。海がきれい。すぐに内陸に入っちゃうから、今回のツーリングでは海は見納めかな。うーんと海の匂いを吸い込んだ。
舞鶴の町に入る。数年前、コケてお世話になったガソリンスタンドはどこだっけ。寄らないまでも心の中でお礼を言いたかったのだが見当らなかった。残念。
丹後街道、R27はよそ見しないで一所懸命走る。R303、367に入ると、木々の緑が前後左右から私を囲む。道幅がそんなに広くないから本当に緑の中にいる実感がする。目にもおいしいや。
鯖街道を走ってみる
朽木という村がある。かつて(といっても奈良時代にまで遡るのだが)ここで育った木々は安曇川、琵琶湖を経て遠く東大寺の建築用に運ばれ、また近世には若狭と京都を結ぶ「鯖街道」として賑わいを見せた。室町末期の将軍が二代にわたって逃げ延びて来たこともあったという。今はひっそりとたたずんでいる。
町の中に入ってみる。しみじみとした、静かでいい所だった。
R367、ここも合歓の木が花盛りだ。どこにいっても咲いているねえ。だからこう毎日眠くなるんだなきっと。有料の途中トンネルを抜けると京都。大原三千院、寂光院はまた今度ねと通り過ぎ、川端通りを鴨川沿いにどんどん下る。ああどんどん京の都が遠くなる。
なんでこんなに先を急いでいるかというと、またまた奈良に行くのだ。目指すは写真美術館。R24をひたすら走り、3度目の正直、写真美術館に到着。
念願の写真美術館へ
展示室は2つあり、ひとつは入江泰吉さんのお馴染みの大和路。雑誌などで見たことのあるものも多く、奈良の復習って感じだ。写真が大きいので迫力がある。
来た甲斐があったなあと感じられたのは、もう一つの展示室でやっていた、工藤利三郎さんという、明治大正に活躍なさった写真家の作品。仏像や社寺の写真は、なんだか生々しく迫ってくる。古いのだから今の写真よりももちろんきれいな仕上がりではないのに、どうしてなんだろう。近代の技術で修理される前の仏像たちは、記録としても貴重なもの。阿修羅像の明治時代のちょっとむごいお姿にはびっくりもしたし、痛々しいとも思う。右の腕が肘までしかないのだ。今、阿修羅像を見てもそれとは気が付かない。仏像修復の技術というのもすごいなあ。
館内の喫茶室で休憩して、来てよかったなあと思いながら建物を出たところで、2日前にもここで会ったオニイチャンにまた会った。これから見るんだったら割引券あげる、だって。ああもうちょっと早く会いたかったわよ。
最後の晩ご飯はマクド
さて、大津までどうやって行こう。また同じR24でもつまらないのでちょっと東寄りの県道を選んで走る。気が付くと、いるはずのない宇治市役所前にいたりもする。宇治川に沿って、琵琶湖に出た。
湖岸道路は夕方の渋滞中。夕ご飯をどこかで食べなくちゃいけない。どこにしようと思っているうちに宿の(ユースである)すぐ近くまで来ているみたい。えーいここでいいやと入ったのはマクドナルド。ああツーリング最後の夜なのに、悲しいなあ。
そのうちすっかり暗くなり、さんざん迷ってやっと着いたとほっとしたのも束の間、夏休みの行事なんだろう、ガキ…いえお子さまたちがわんさか。キャンプファイヤーの歓声の中、最後の夜は更けてゆく。
それにしても今日はよく走ったなあ。久しぶりに300km以上、通った府県は、京都福井滋賀京都奈良京都そして滋賀となんとのべ7府県。疲れるはずだねえ。