わたしも街道をゆく/1991年/東北へ
わたしも街道をゆく 1991年 東北へ


1991年8月4日 大鰐から小泊へ 本日の走行距離142Km

岩木山さん私のカメラ返して

 今日の天気はどうなんだろう。青空は広がりつつあるけど油断は禁物だ。だってほら、走り出した広域農道アップルロードはりんご畑の中を走る道で、花の咲いてる頃だったらどんなにきれいだろうと思うけど、目を上げると岩木山、山頂あたりからどっぷり雲が覆ってる。あーあ。そこ以外の空は青く、今日行く予定の津軽半島方面も晴れている。けどとにかく寒い

 山裾の岩木山神社をお参り。ここで私はコンパクトカメラを落としてしまったらしい。荷物の上に置いたまま忘れて走りだしてしまったようだ。なんてばかなんだろう。中に入ってるフィルムの数枚撮った写真より、丈夫なあいつと別れてしまったのが悲しい。何回落としても壊れない頼もしいヤツだったのに。

 さて岩木山神社は参道を進むと晴れていれば正面にお山が見えるはず。江戸時代の建立だけあって東照宮みたいな派手な権現造り。山頂への登山道が境内からのびている。
 さて私たちはどうしよう。岩木山に登るには急勾配の岩木山スカイラインを行かなくてはならない。その時山頂の雲がどんどん消えて行き、ついに山頂が見えた。もちろんスカイラインに突入である。
 でもヘアピンの連続にぐったり、山頂に近付くにつれて結局出てきた霧の中、リフトに乗ってあと少しで山頂という所まで行く。といっても歩くとなるととっても大変そう。それにすぐに霧で視界が悪くなるし寒い。さっさと下界に下りる

いさり火日本海

 鯵ケ沢街道を鯵ケ沢へ出る。地図では大したことの無い距離なのにいくら走っても町に出ない。ときどき小さい村を通過する。…飽きてきた

 やっと日本海に出るとちょうどジェットスキーの大会中。それを見ながら海辺でお昼を食べ、いよいよ私の大好きな津軽半島である。

 一度見てみたかった亀ケ岡遺跡。県道からずいぶんくねくね入った所に資料館(縄文館という)。有名な遮光型土偶(宇宙人みたいなヤツ)はレプリカしかなかった。しかしこんな遥か遠くの雪深い所にもちゃんと中央と同じ文明が存在したとは。どんな人たちがいたんだろうね。興味をそそられる。

 昨日の雨のせいなのか茶色くて汚い十三湖、湖畔で写真を撮ろうかと思ってたけど、あまりの汚さと風の冷たさにに中止、小泊に急ぐ。

 小泊港に面した、宿への急な階段を登りながらふと後ろをふりかえると、あれは竜飛岬? そうすると向こうに見える陸地は、北海道! ほんのすぐそこ、ポンと行ってしまいたくなる。

 日が沈み灯台に灯が入る。竜飛と北海道(松前あたり?)の灯りが呼応して光る。まるで話をしているみたい。漁り火の明かりさえ見えている。この光景が宿の窓から見えるんだから感動してしまう。日本酒が沁みるねえ、と演歌の花道になっちゃう。散歩に出ればメバル漁から帰ってきた海の男たちが網から魚を外しているところ。かっこいいなあ海の男。生まれ変わったら絶対漁師になるんだ。船酔いするけど。